ゴースト・ライト とある海の端。
母なる海はゆっくりと波打ち、終わることのない呼吸を続ける。その上を滑るように進むオーロ・ジャクソン号の行先を阻むものは周囲に何も存在しない。地底から浮かび上がり消えてゆく泡も、境界線の白む先も、その存在を拒まず、船がそこに或ることに否を示すことはない。
数刻前。
史上初、海に出た誰もが望んだ[[rb:記録指針> ログポース]]の最終地点へロジャー海賊団はようやくたどり着いたはずだった。
しかし、蓋を開けてみればどうか、嬉々として上陸した[[rb:水先星> ロードスター]]島は一味の望んだ最後の島ではなく、まだこの海には先があるという。
夢見た場所が雲を掴むように逃げていってしまったことに対しては、残念に思う気持ちも確かに存在した。
それでも、それ以上に、夢の続きはまだ存在するという歓喜が胸を焼き、身体中を駆け巡る。
まだ、夢は覚めぬのだと。まだ、この世界には自分の知り得ないなどが眠っているのだと。
自分たちの掲げるジョリーロジャーにはまだ、まだ、まだ。与えるべき栄光がものがあるのだと!
残念に思ったのはものの数分。思い立ったロジャーの動きはそこからが早かった。
回収する謎はさっさと回収し、狂い踊る記録指針もかくやというほどに島中の土を踏み鳴らす。
時間にしてみれば半日。
ロジャー海賊団にしてみれば一瞬の間にわらわらと船へと戻った。
シン、と静まり返る中、誰かが「フ、フフ、」と声を漏らす。くすくす、なんて上品な笑いではなく、酒で声が枯れた老夫のようにも空腹に喘ぐ海王類のようにも聞こえる音が船の上を埋めてゆく。
そうして、声が伝染して一周。
「野郎ども!! 宴だァ!!!」
快活な子供のようなロジャーの音頭に合わせて船は一気に祭りのように賑わい始めた。
この日、勝利の美酒になるはずだった数々の酒樽は一変してこの先の航海への希望として、水のように男たちの腹に流し込まれる。あるものは歌い、あるものは踊り、楽器の音色と乱雑な笑い声が海へ響き、そうして海の中へと消えてゆく。やれ嬉しや。やれ楽しや。冒険はこれからも続いてゆくのだ。
水先星島は海の果て、最終地点ではなかった。
しかし、その出来事を嘆くものはおらず、オーロ・ジャクソン号は海を進む。
どんちゃん騒ぎを始め、数時間。船員の七割が打ち上げられた海馬のように床に転がっている中で、酒で意識が鈍る中ロジャーはふと顔をあげた。
いつもの船、いつもの宴後。甲板に起きているものはおらず、あるのはぼてぼてと落っこちている男どもだけだ。ギャバンやレイリーは船内でしっぽりと飲み直している頃合いだろう。
それは、いつもと変わらない。なんてことのない日常のはずだった。
ただ、霧が濃いだけのいつもの甲板。
重く纏わり付くような濃霧を、オーロ・ジャクソン号が進んでいる。宴をした後なのに、船が危険海域を進んでいる? いかに歴戦の海賊とはいえど、いや、歴戦の海賊だからこそ、ロジャー海賊団は海の無慈悲さを知っている人間の集まりだ。
「なんだァ?」
だからこそ、この状況はおかしい。
進路にはしばらく島があるなんて事前の共有はなく、もちろん冬島も夏島も近くにあるなんて話はなかったはず。
突発的に島ができた可能性は否定しきれないが、それにしたって船内にいる男たちが移流霧だろうが、蒸発霧だろうが酔っ払いどもを転がしたままにすることはない。酔っ払って海に落ちる馬鹿がいてはひとたまりもないのだ。
ロジャーが頭を振るのと同時に慣れ親しんだ気配が背を訪ねた。
「ロジャー」
「カルバンはなんだって?」
「慌てて進路の計算をしてるさ。なんせ予定進路にはこんな海域はなかったはずだからな」
音もなくワイン片手に現れたレイリーに振り向くでもなく、尋ねる。レイリーの手からするりと奪い取ったワインは暖かく、口をつければ冷えた体の内側を通っていく感覚がした。相棒なりの優しさか、それとも顔に似合わず大男どもがキッチンで身を寄せ合って作ったものか。どちらにせよ、それ自体がロジャーにはむず痒く、笑いがこぼれるのもそのままにレイリーの持つ樽ジョッキを打ち付けた。
「冒険の醍醐味だ!」
「ハハ、違いない。しかし流石に甲板の馬鹿どももこのままにしておくわけにもいかないだろう」
「起きねえ奴はギャバンあたりに投げさせときゃそのへんに刺さッ! ブべェッ?! なんだ!?」
「……木か? なんでまた。海のど真ん中のはずだぞ」
レイリーはロジャーの顔を強打した枝を手折ろうとして、その手を止める。代わりに茂る葉を弾いてみれば、鉛を弾いたような感覚だけが跳ね返った。美味かろうが不味かろうが、その島に生い茂る草になんてこれっぽっちも興味がないレイリーに分かることと言えば、これが植物かどうかすら分からないと言うことだけだ。なにぶん、積極的に覚えていることなんて女の名前ぐらいなもので。
背丈が二百七十四センチある大男の顔面を強打してもビクともしない枝葉なら、五年前に立ち寄った武器屋のドワーフが喜んで武器にしようとするだろう。まだ冒険は続くのだから、どうにか持ち寄れないだろうか。
未だ痛みから回復せず床に這いつくばっているロジャーを横目にレイリーがううむ、と首を捻っているとロジャー海賊団の航海士___カルバンが乱雑に扉を開けてズンズンと甲板に押し入った。ギィコ、ギギィ、と扉が揺れるがそんな事をわざわざ注意する繊細な感性を持ち合わせた男はないない。覇気も使っていないのに[[rb:世界一の大工> トム]]のつくった船が壊れてたまるものか。そういうことだ。
「おいおいロジャー船長よォ! どうなっちまってんだこいつはまた!!」
「カァールバン! そりゃお前がわかんなかったら、おれにはなんもわかんねぇよ!」
ダハハ、とも、ガハハ、とも取れる海の男にしてはシンプルな笑い声が甲板に揺れる。そもそも[[rb:錨を下ろしていた> ・・・・・・・・]]はずの船がこうして揺られているのだからもう何もお手上げだ。いっそ何かが船を引き寄せているとしか思えない。
「陸か?」
「いんや! シャボンディのマングローブに近いものだろう。水先星島の次はこれたァ、持ってんだかなんだか」
レイリーの問にカルバンは答える。
コツン、と葉を叩くもやはり跳ね返るのは硬質な音ばかり。
「ギャバン、とりあえず何かあってもいいようにゼノとヒョウドウは起こしてとけ。その辺に転がってるはずだ」
「灯りは?」
「もちろん、いいとも」
もちろん、こんな状況で灯りを着けて蜂の巣になる名誉を賜りたいのなら好きにすれば、いいとも。そういう類の意を含む仕草は実にハリウッド・カンパニー島のスタァに匹敵するだろう。
「そりゃいいな」ギャバンはお気に入りの丸いサングラスに映り込むレイリーを外すと特に海戦の得意な男たちに冷水を食らわせるべく、特殊な金属が練り込まれたゴムソールのコンバットブーツで甲板を叩きながらふらりとマスト下へ足を進めた。
訳もわからない海域に髪を掻き毟って怒り散らかしながら船内に戻ってゆくカルバンと身体を左右に揺らしながら歩いてゆくギャバンの背を見送って、レイリーは再びロジャーへと意識を戻した。
甲板を包む霧は変わらず深く、重苦しいが嫌なものは感じない。三歩先も霞む船の上、ロジャーの気配は船の後方にあった。
「ロジャー?」
ここではないどこかを見ている。
漠然と、レイリーはロジャーを映し思った。
この海の先、あるかもしれない未来。星すらも予見しないであろう、そう遠くないどこかを見ている。海賊王に最も近く、海の上で最も自由な男。オーロ・ジャクソン号の主人で、ロジャー海賊団の船長。ゴール・D・ロジャー。
夢に燃ゆる瞳には何が映っているのだろう。息が止まってしまいそうなほど、ロジャーの姿は遠く、瞬きなどするのがもったいないほどに、その横顔は、焦がれる夢そのものだった。
ゆるり、ロジャーはレイリーの方を向き、夜を塗り込めた瞳にレイリーを映す。濃霧の中、不思議と通る声がガラス玉のように転がった。
「なァ、レイリー。呼ばれてる」
森林のようなしっとりとした空気の中、海上のはずなのに、ゆく道を教えるように木々が生い茂っていている。船の最後方にいるはずなのに、オーロ・ジャクソン号なぜかロジャーがいる方が先頭であり、進むべき方向であると疑わず、後方へと進む。
レイリーには[[rb:ソレ> ・・]]が聞こえない。しかし、[[rb:何か> ・・]]がロジャーを引き寄せているのはレイリーの目からしても確かだった。
時間にしてみれば数秒だったか、数分だったか。じぃ、とロジャーが見つめる先。
オーロ・ジャクソン号は歩みを止める。
木々に沿って進むうちにいつの間にか島に入っていたのだろうか。行き止まりには大樹が頭を垂れるようにひとつ、赤い果実が実っていた。
やけに目を引くそれは、心臓のような色をしている。赤く、燃える命のような、尽きるのを待つ、何か大きな力を持ったもの。
「そうか」
ロジャーは、ゆうるりと腕をのばし、その赤の輪郭を撫ぜる。
「おれと来てくれるか」
おれと来てくれるか。おれと来てくれるか? その言葉はどちらのニュアンスだったのだろう。はくり、とレイリー動いたレイリーの声は空気を震わせることは許されなかった。
[[rb:ソレ> ・・]]が、ロジャーの手の中に落ちる。
星の濁流の中、運命を纏うものを、確かにレイリーは目撃したのだ。
:
「ガーーッッ! なんだったんだ結局! 三百六十度見渡す限り島は皆無! おまけに霧も晴れてきやがって、進路も元通りで有難いこったチクショー!! バーーーカ!!!!」
「カルバンさん荒れてるなあ」
ロジャーとレイリーが不思議体験をしているころ。マストから先はうっすらと霧が薄くなり、転がった海馬たちが人の気配に釣られて起き初めていた。幸い、天気は快晴で波の揺れも穏やかなもので残った酒をリバースするものはいない。
新世界のふしぎ発見(未解明)に怒り狂うカルバンも、それを見て「またか」「寝てる間に何かあったのか」と笑い追いかけ回される羽目になったクルーも含め、概ね平常運行だ。
起こされてからモノの十数分の変化に首を傾げながらも念には念をということで探索ため、海に降りたゼノとヒョウドウの黒々とした影はあっという間もなく完全に海に溶け込む。それを見届けたギャバンは、甲板の追いかけっこをBGMに、うろうろと歩き回るロジャーを見に止めた。否、目に止まったのはロジャー本人ではなく、やたらと目を引く赤だったかも知れないが。
「あン? ロジャー、なんだそりゃ」
「さァ、知らね。落ちてきたんだ」
りんごのような大きさに、熟れた柘榴のような赤。ワックスがけをしたようなツヤツヤとした表面には、ぐるりと波紋が踊っている。食べ物と言うには随分と仰々しいそれを、大切な人形でも持ち歩くこどものようにほぼ包み込むような形になりつつ両手でしっかりと持つロジャーの姿はあまりに奇妙さを醸し出していた。
そんな姿を見てか、片眉を上げからかうような声色でギャバンはひとつ、注意をなげかける。
「へえ。こんな海でか? 鳥の落とし物かなんかかね。無用意に食うなよ、レイリーにどやされんぞ」
「ン、美味ェなコイツ」
帰ってくると踏んでいた軽口は、カシュ、という軽い音の後にシンプルなロジャーの感想に変わった。
あろうことか、ロジャーはギャバンのセリフなど耳に入れず、興味の赴くままに目の前にある赤い果実に勢いよく齧りついたのだ。
瞬間、口の中に広がったのは酸味だった。程よい酸味のある汁が口いっぱいに広がると共に、果汁独特の甘さが広がっていく。噛めば噛むほど溢れるそれはまるで滴る蜜のようだった。
ひとくち、ふたくち、みくち。驚きのあまりあんぐりと口を開けたままのギャバンを気にすることなく軽快な音とともに食べ進めたところで、ようやくロジャーのなかに「悪魔のみだったら困ったな」という意識が浮上する。
しかしそんな意識もまた、「でも、まあ、[[rb:コレ> ・・]]がおれに害をなすものではないことなど、わかり切っているのだから問題ねえか」そんな言葉とともに再び意識の底へと沈められるのだが。
好みの味だったな、と食べかけの果実をしげしげと見つめるロジャーの横で、ギャバンのサングラスがずり落ちた。海王類が覇気に当てられて痙攣すると、きっと今のギャバンのようになるだろう。
「「…………」」
「は? 食った? 食ったのかアンタ!?!?」
「イデデデ!!! 締まっ! 締まってる!!」
「おいおい冗談じゃねえぞ! この海で冒険してる奴がんな訳のわかんねえ果実口にするか?! ガキかお前は!」
「ギブ! 覇気! ギブ!」
「レイリー! レイリー!! ロジャーが訳わかんねえ実食ってる!!」
ゆら、ゆらり。海から這い上がった化け物のような足取りで、おおよそ二歩と半分。二回、コンバットブーツが打ち付けられる。そして三歩めが地面に届く前に、ギャバンは万力にも匹敵しそうな勢いでロジャーの首に力一杯手を添えて前後左右に揺さぶり始める。
ロジャーのかぶっていた帽子が地面に落ちようが、自分の髪もともに揺れようが、サングラスがずり落ちそうになろうがこの際そんなことはどうだっていいのだ。この海の中、一番自由に近い男が拾い食いでどうにかなるなんてあってたまるものか。もしそんなことがあるのなら、クルー全員を引き連れてインペルダウンにハイキングにでも行ってやろうという勢いで、グワングワンとロジャーを揺らす。鞭打ち状態の首でも、武装色の覇気を纏った手が食い込んでいるのもどうだっていいのである。
幼児のおもちゃの取り合いのような告げ口により突風よりも速くレイリーが参加し、いよいよ船が揺れ始める。今この空間に知恵などかけらもありはしないが、大男三人がよれば姦しくもなるし船だって揺れるのだ。レイリーとギャバンに詰め寄られるロジャーはさながら虐められるペンギンのようにも見えた。
「バッッッカ!! さっきのやつか!? 悪魔の実だったらどうすんだ! 吐け! 飲み込むな今すぐ吐け!!!」
「なんだよ! 美味えから大丈夫だって!」
間髪入れず怒鳴りつけるレイリーの顔は怒り半分焦り半分だ。しかし、そんな表情を浮かべたところでもう遅い。
ひとしきり怒られ、最後に呆れ果てたように深いため息をつかれたところで、ロジャーはようやく解放される。ぜえぜえと肩で息をする二人に反しロジャーはというと、まるで何事もなかったかのように笑い始めた。もちろん、その態度には反省の色は一切見られない。むしろこの状況を楽しんでいるようだった。
[[rb:ロジャー> この男]]には結局何を言っても無駄なのだ。そして、大抵ことは結果としてなんとかなってしまうのだから運命というのもたちが悪い。
それを知ってか知らずか、毎度けろりとした様子のロジャーにレイリーはまた何度目かもわからない大きな溜息をつくしかなかった。
「あーあーあーあー! 元気だっつうの! なんだ、アレだ! もーーー寝る!!」
「ガキか」
「わかっちゃいるがちっとも言う事聞かねえ」
「育児疲れってこういうことかもしれん」
その後、レイリーはバタバタと自室に消えたロジャーを気にせず海から上がったゼノとヒョウドウから報告を受ける。曰く、特に異変もないし、霧の原因になるような生物がいた気配もなかったらしい。強いていうならうまそうな海王類が数キロ先にいるくらい。
結局何だったのかはわからずじまい、新世界ってやべえ、を結論に普段通り過ごしはじめる。
そして、太陽がいちばん高いところからちょっと降りた頃、そういえばいつまでたってもロジャーが起きてこないことに疑問をもったレイリーが、「あの食べた実のせいでやはりなにかあったのか?!」と慌てて船長室の扉を開いたらいつもどうり寝てて、胸を撫で下ろす。
な〜んだ……ロジャーと赤子か……て………。ロジャーと赤子が気持ちよさそうに寝てて……え?!?!!てなる。
しりきれと〜〜んぼ!
以下設定、時系列、最下部に短編一個
・アウールム
ロードスター島から出発し宴の後になせがロジャーと一緒に寝ていた拾い(?)子。「おれが育てる!!!!」てロジャーが言うもんだからなんだかんだロジャー海賊団みんなで育てられた。
船に乗ったのはシャンクスの1年前なので1〜2歳年上になるが、何故か身体の成長は遅く27年前のロジャーと白ひげが激突したときの姿は5歳程度の容姿のままになっている。クルーもおかしいことには気がついてるけど、やれ美人に育つ、やれかわいい時期を何年も味わえてうれしい、やれ去年より500g増えたと気にせず可愛がってる。
シャンクスもバギーも小さなお姉ちゃんをあっという間にぬかしちゃったけど関係は概ね良好。
たまたまかちあった白ひげとの殺し合いを鳴き声で止めた伝説があるとかないとか。
シャンクス(13)132cm
バギー (13) 130cm
アウルム (14) 90cm
Twitterで呟くのはたぶん〜ロジャー死刑くらいまで。ロジャー海賊団のわちゃわちゃ………
______
・リリウム・アウルム
レイリーとセンゴクの取り引きでセンゴクの養女として引き取られ、ゼファーと遊びという名の鍛錬をしたりおかきを食べたりお掃除したりする。たぶん。
22年前、エースが誕生するのと共に成長が再開。入隊後、着実に成果を伸ばし偶にバギーやシャンクスに会いに行きつつ軍務をこなし10年前に元帥付き少将へ着任。(監視鎮圧を兼ねてこれ以上の役職に着くことはない)
頂上決戦にてロジャーとの約束、ゴール・D・ロジャーの「望遠鏡」としての役割を果たす。
詳細は私が文字を書けばでるけど書かなきゃでないのでそこになければないですね……救済とかでは無いし原作の展開にはほぼ関わらないのは確か。
アウールム(ロジャー海賊団の姿)
愛称:ルム
リリウム・アウルム(海軍本部少将の姿)
愛称:アーヴ、アウィ
本名はリリウム・アウールム。ロジャーが付けてくれて、ロジャー海賊団が慈しんでくれた名前を名乗るのは彼らの前だけ。故に海軍内ではアウルムを名乗る。リリウム性はレイリーが決めた。
性格
マイペースであまり細かいことは気にしないタイプ。船にいた貴族出身の男に教養は教わっているので所作は綺麗。ただし、海賊船で15年生活していたこともあって変なとこで大雑把。
ロジャーの「自由」とセンゴクの「規律」をまぜこぜにしたら規律の隙間を突いて自由にやる元気な問題児が出来上がった。
能力
ロジャー直伝の覇気使い。海賊時代は大太刀「嘴喰」(140cm程度)がメインだったが、海軍時代は近接戦闘もする。
容姿
・海賊時代
身長は〜90cmで最成長期でも容姿の年齢は5歳程度。
・海軍時代
入隊時でだいたい130cm、10歳程度。見た目は16歳前後で止まっており身長は163cm。
実年齢39歳
便宜上28歳
見た目16歳
存在自体がトンチキのため海軍内で実年齢を正しく把握しているのはセンゴク、つる、ガープあたりのみ。
リリウム・アウルムさんの記録
(実年齢) / 世間が認識してる年齢
39年前 : (1) / 歳
・水先星島付近でロジャーと出会う
38年前: (2) / 歳
・ゴットバレー事件 / シャンクス
30年前: (10) / 5歳前後の姿、成長ストップ①
・バレット加入
28年前: (12) / 歳
・ロジャー不治の病に罹る / クロッカス加入
27年前: (13) / 歳
・バギーバラバラの実の能力者になる
・ロジャー海賊団と金獅子海賊団との「エッド・ウォー海戦」が勃発
・バレットがロジャー海賊団から独立
26年前: (14) / 歳
・ロジャー海賊団と白ひげ海賊団が激突し、3日3晩に渡る戦いを繰り広げる
・おでん、トキ、イヌアラシとネコマムシがロジャー海賊団に移籍
25年前: (15) / 歳
・「偉大なる航路」を制覇/ロジャー海賊団解散
24年前 : (16) / 5歳 (見た目の再成長)
・センゴクの養女として引き取られる
・センゴク執務室にて、映像でんでん虫からロジャーの処刑を見る
19年前: (21) / 10歳
・リリウム・アウルム海軍へ入隊
→つるの推薦により1年の将校訓練過程を経て本部センゴク部隊少尉として着任
(現場で流血騒ぎの一悶着)
15年前: (25) / 14歳
・サカズキの元へ移動
・准将就任
12年前: (28) / 16歳 (見た目ストップ②)
・シャボンディでの休暇中にロジャー海賊団を揶揄する海賊団と遭遇。億超首を3人捕縛、海賊団壊滅の功績
・センゴク部隊へ引き戻され直属へ
10年前: (30) / 18歳
・就任式をバックレたのち元帥付き少将へ着任
2年前: (38) / 28歳
・頂上戦争へ参戦
_______
タイトル『ゴースト・ライト』
公演が終わったときに舞台を照らすひとつのランプのこと。次の公演を待っている状態としての意。
また、ゴール・D・ロジャーのゴースト・ライターとして。
また、運命を見届けるために彷徨う幽霊のような光として。
_______
アウールム ラテン語で金、または未来
アウルム(金) + フトゥールム(未来)
きんの
望遠鏡
〇リリウム・アウールム
黒髪に金色の目の女の子
ロジャーの娘でロジャー海賊団の娘。
ロジャー海賊団の古株で元貴族出身のシャネルに色々教わっているので佇まいは良いところのご令嬢。でもまあ海賊の娘なのでふつうに殴るし蹴るし強い女の子。
交喙の嘴 いすかのはし
物事が食い違って思いどおりにならないことのたとえ。
嘴喰 はしばみ
ハシバミの花言葉は 真実 もふくまれる
大太刀「嘴喰 」
身長よりも大きな太刀が愛刀
海軍での二つ名は「遠雷」
かむさりの覇気がばりばりーってなってるやつのイメージ
ロジャー海賊団にいた頃の二つ名は「鴉」
見た目の年齢と時期が違うからバレてはないみたいなせって〜 そういうのだいすき
【愉快なロジャー海賊団】
・カルバン:航海士、古株。
身長2mくらいの筋肉ムキムキの強そうな航海士。お酒が入ると昔話をずっっっとする。
・シャネル:元貴族、古株
父親に銃ぶっぱなして家を飛び出た。ルムの先生。何時でも身なりが整ってる。
・ケイト:船大工、ルムの5年前に船員になった。
年中半袖腕捲りの比較的若手な兄ちゃん。ルム船に乗った時に22歳とかそんなん。
・ゼノ:魚人
・ヒョウドウ:魚人
______
昔から、海賊の事は嫌いではなかった。
彼らの存在を肯定する訳ではないが、おれの村はとある海賊の名を持ってまもられていたから。彼らは数年に一度村に滞在することもあれば、数週間村を拠点にすることもあるらしい。
そんな話、昔は子どもを脅すための常套句だと思っていた。海の化け物カデュラとか、夜中に外を出歩く子どもを攫うチュルルールとか。しかし、それが脅してはないと知ったのは新聞を読めるようになったときのこと。
そして村を守る名前をもつ人、ゴールド・ロジャーを見たのは、おれ十五歳を迎えた夏の日だった。
その日はたしか、夏島の中でも最も太陽が長く出ている日だっただろうか。前日が雨だったにも関わらず、湿気が残るわけでもなく洗濯物がよく乾くと母が喜んでいた。それと、たしか。そう、年齢のせいか久しく見かけていなかった村長が珍しく港の海を見渡せるベンチに座っていた。今思えば、あれはきっとロジャー海賊団が来る知らせをでんでん虫で受け取っていたのだろう。
大きな海の化物みたいな影が遠くで揺らりと揺れたあと、数十分もしない間に船は港に着いていた。
村長は船から降りてきた船員たちになぜだか親しげに声をかけていて、村の子どもたちは遠巻きにその様子を見ていた。
その時、みたロジャーは頂点に最も近い男と呼ばれるようになって少しした頃だったはずだ。黒い髪に赤い外套をはためかせ、いかにも海の男といった風貌だった。遠巻きに見るのでもわかる快活な笑顔。それがなんだか嫌に格好よく見えて、海賊というのは皆こういう笑い方なのだろうかと思った記憶がある。
それと、自分と同じくらいの男の子がふたり、そしてちいさな女の子がひとりいたのをよく覚えている。この村で漁師は男の仕事だ。だから、海賊も当然男しかいないと思っていた。それでも、その子は当然のように海賊に紛れていた。白い服に、綺麗な髪。それで、とても目を惹く金色のひとみ。
おれからその姿が見えたのは一瞬で、すぐ別の人影に隠されてしまったが、彼女はゾッとするほど美しかった。海賊はあんなに恐ろしい物を好むのかと畏怖の念を抱くほどに。
しかしまあ、非日常というのはあっというまに過ぎるもので、ロジャー海賊団は数日滞在したのち、去っていった。村長は「また気が向いたら来るそうだ」なんて言っていたが、彼らがもう村を訪れることはなかった。
それから数年。ロジャー海賊団が「偉大なる航路」を制覇する。そして、海賊王の処刑され大海賊時代が幕をあけ、海賊たちの縄張り争いがそこかしこで繰り広げられるようになった。もちろん、海賊王の加護下にあったおれの村も例外ではない。
争いさえ終わってしまえばまた静かな日常に戻れるかもしれないと漠然とした希望を微かに抱き怯える日々。いつか。きっと、誰かが。ロジャー海賊団だった誰かが助けに来てくれるかもしれない。今は恐ろしくてたまらないけれど、争いさえ終わってしまえば。終わりさえすれば、きっと。
終わっても、否、終わったかこそ。そこからは、ただ地獄だった。
海賊は嫌いだ。奴らは全てを奪っていく。ありがとうも、さようならも、またねも、全てを奪っていく。おれにはもう、それを言える家族はいない。
大海賊の名前は海に沈めば藻屑と消える。他はどうだか知らないが、おれにはそういうものだった。むしのいい話かもしれないが、おれは、そう思うことでしか意識を保つ事が出来なかったのだ。
朽ちた名前じゃおれたちはすくわれなかった。海賊王とその一味。輝かしくも思える名を冠した海賊たちはおれたちを助けるどころか、次を狙う海賊たちの格好の獲物としてたたき売りをするための値札に姿を変えた。
おれたちを守っていたのは海賊だった。
村のみんなを殺したのは海賊だった。
おれを救ってくれたのは、海軍だった。
頭の真上にある太陽が真新しい制服に身を包んだおれたちを照りつける。同胞たちはみな、希望に満ちた顔の裏に何か重く苦しい物を背負っているのだろう。この中から活躍するのは極わずか。実践に赴けば何を残すことなく死んでいく物もいるはず。おれだってそうだ。
それでも。だから、おれはここにいる。誰かの明日を救うために。傷つく人が減るように。
「新兵諸君。自ら志願してくれたことに、心から敬意を評し、歓迎します」
そう言って若い烏羽の髪を靡かせる上官は随分と若く見えた。しかし、肩に掛けられた正義は白く、いっそ白々しいまでに気高さが感じられる。
「ようこそ、海軍へ」
ああ、でも。その瞳はずっとむかし、どこかで見たことがあるような。話もしたことがないその人は、なんだかとても恐ろしく、遠い空に浮かぶ月のように見えた。