八杉7そういう気分になるけどお誘いが出来なくて疼くお腹をどうにか抑えようとする杉くん。
という診断にくっつけた文。
きっと、お願いすれば「いいよ」って言ってくれるんだと思う。八神さんは意地悪する人じゃないから。
でも、その一言を口にするのは今の僕には難しい。
だってなんの前触れもなくしたくなるなんて、恥ずかしくて。
いやらしい奴だと、八神さんに思われたくない。
今日はみんなで飲んだ帰りに、八神さんに部屋に泊まってもらうことになっただけ。
明日は朝早くから調査に出るから、ただ寝床を貸すだけって、お互いにそのつもりだったのに。
「……っ、どうしよう」
八神さんがシャワーを浴びてるうちにどうにか抑えられないかと思うのに、テレビを流してもその辺にある雑誌を読んでも、頭の中は八神さんのことでいっぱいになっていく。
心臓の音がうるさくて、顔が熱くなる。
どうしよう、なんで、うそでしょ、って頭の中が混乱する。
「杉浦?」
シャワーの音が消えていたことに気づくのが遅れて、部屋に入ってきた八神さんの声に僕は過剰にびくついた。
意味もなく腰かけていたベッドから立ち上がる。
「あ、お、お帰りなさい……」
何の心構えもできないまま八神さんに向けた笑顔はきっと不自然だと思う。
泣きそう。なんで僕、こんなふうになってんの。
じわっと浮かぶ涙を誤魔化すことにも考えが及ばなくて立ち尽くした。
フローリングが軋んで、八神さんが近付いてくる。
いっそのこと「抱いて」と言ってしまおう。そう思って目を瞑った。
けれど、次の瞬間にはあたたかな腕に抱き寄せられて、言葉を奪われる。
「んん、ぁ、やがみ、さん」
ちゅ、と優しい音をたてて唇を啄まれて、さっきから疼いているお腹がどんどん熱くなっていく。
どうして?
パニックになりながらも八神さんのキスの気持ち良さに頭が蕩けた。
「ふ、は……」
たくさん口の中を舐められて舌を吸われて、支えられないと立てなくなった僕を優しくベッドに押し倒した八神さんが杉浦、と僕を呼ぶ。
はふはふと息をしながら見上げると、八神さんは優しく微笑んで、
「抱きたいんだけど、いい?」
そう、お願いしてきた。
我慢できないんだ、と甘く囁いて。
うそ。──ううん、ちがう。抱きたい、に嘘はない。
でも、八神さんは優しい人だから、僕の気持ちに気付いて先回りしてくれたんだ。
それなら、僕だってちゃんと言わなきゃ。
「あのね、」
「うん?」
だから、僕は八神さんの頬を両手で包んだ。
「ぼくも、すごくしたい」