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    detjes_8238

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    八杉 30日CPチャレンジ15

    八杉 30日CPチャレンジ15※数年後の二人(同棲八杉)

    15.いつもと違う服で


    「控えめに言って一億点」
    「それは盛りすぎでしょ」
     ネクタイを整え終えた文也が全身をじっくり眺めたあと、叩き出した点数があまりにも高くて思わず噴いてしまった。
    「ええ〜⁉︎これでもだいぶ控えた方だからね?」
     本当はもっとつけたいところだし、と言いながら丁寧に形作ったチーフをポケットに入れると、
    「はい、これでスーツはオッケーだよ」
     と親指を立てる。
     ほらほら、とクローゼットの扉に嵌め込まれた鏡の前に連れてこられて、目の前に映る姿を見て感心した。俺をここまで見られるように仕上げた文也の手腕に。
    「ほんと、文也がいて助かった」
    「そう?素人の見よう見まねだけど。隆之さんの役に立てたならよかった」
     ひと月前のことだ。
     以前に実母を探して欲しいと依頼してきたクライアントから、結婚式を挙げるけれど友人と呼べる人が少ないから参列してくれませんか、と再度依頼を受けた。
     結婚式の出席代行はすでにビジネスとして確立していて、探せばいくつも業者がある。
     必要であればそちらに依頼されてはどうでしょうかと勧めたけれど、どうしても八神さんに、と懇願され。
     クライアントの事情を知っている海藤さんにも「出てやればいいじゃねぇか」と言われ、不安はあったけれども承諾した。
     これは無理なお願いをしているので感謝の気持ちです、と差し出された封筒は思わず海藤さんと顔を見合わせるくらい分厚くて。
     前払いで支払われた分だけでも相当に高額な依頼料だった。
    「ター坊、しっかりやってくれよ……?」
     ヘマをしないようにと釘を刺されなくとも、依頼料に関わらず、受けた以上は適当にするわけにはいかない。
    「まあ何とかしてみせるよ」
     なんて、海藤さんに言ったまではよかった。
     けれど、これまでに結婚式への参列経験がなく、何をどうすればいいか、から始めるしかない俺は、毎晩帰宅してマナーブックを見ては眉を寄せて唸るばかりで。
     そんな状態を見かねた文也が、スーツや装飾品のチョイスはもちろん、ヘアスタイルを含むトータルコーディネートをすべて請け負ってくれたのだ。
     それだけじゃない。ありがたいことに過去にバイトで何度か結婚式の代理出席をしたことがあるということで、マナーをみっちりと叩き込んでもらい、友人を演じる技術も学ばせてもらった。
     設定を少し間違えても顔がいいから笑顔で誤魔化せるよ、と押された太鼓判は喜んでいいものかどうか。
     そこはともかくとして、本番である今日を乗り切るのみだ。
    「それはそうと、絶対ナンパされるからちゃんと躱してよ」
     隆之さん、無自覚で女の子ホイホイなんだから。
     髪を整えるついでに文也が、ちゅ、と唇を軽く啄みながら言った。
     かわいいことして、と思わず声が漏れる。
     文也は昔から「八神さんはモテる」と言い続けているが、正直なところその意見には未だに賛同出来ないでいた。
     何せ実感することがない。声はかけられるけれど、大抵が歩いていたら理不尽に喧嘩を売られるばかりだからだ。
    「何度も言うけど、思うほどモテもせずのそれだから」
     チンピラ以外から話しかけられることも普段からあるにはある。
     けれど、きっと話しかけやすそうに見えるとかそんな程度だと思う。こいつ暇そうだな、とかそんなものだ。
    「……嘘でしょ。本気で言ってる?」
    「ずっとそう言ってるだろ。やばい、そろそろ行かないと」
    「タクシー呼んでるんだったね」
     余裕を持って準備をしたはずなのに、気付けばタクシーがマンションに到着するまで五分を切っている。
     二人して玄関まで慌ただしく走り、コートを羽織らせてくれた文也を抱き寄せて額に口付けた。
    「ちょっ、」
     いくつになっても不意打ちに弱い文也は、てのひらで額をおさえながら頬を染める。
    「隙あり。行ってきます」
    「っ、行ってらっしゃい!」
     乗り込んだエレベーターが下降するまでぶんぶんと手を振る姿が見えた。待ち合わせの時やこうしてどちらかが出掛ける時に、ああやって昔から大きく手を振る癖が文也にはある。
     いつもそれを見るのが好きだし、かわいくて思わず頰が緩んでしまう。
     式が終わったら何を買って帰ろうか。リクエストをしておいてくれとメッセージを送っておこう。
     今から依頼が始まるというのに、そんなことばかりが頭の中に浮かんでいた。


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