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    ekri_relay

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    書いた人→ひづき

    ハロウィンとか相談所(20) きっと、前の日にトメちゃん達と「終わらないお茶会」の話をしていたからだ。霊幻は、今朝みた夢をそう位置づけた。吸血鬼だって、ハロウィンに向けて事業戦略を練っていたから出てきたのだろう。それがどうしてエクボとのえっちに繋がるのかは不明だが、夢なんてものは、いつも不可思議なものと相場が決まっている。
    「とはいえ、焦るよなぁ」
     霊幻がターニングポイントと位置付けている自らの誕生日は刻一刻と迫ってきている。エクボとの関係をどうにか進めたい。そんな霊幻を味方するように、市長命令でハロウィンが終わるまではエクボと一緒に行動できるようにもなった。
    「一緒に居るとつい『いつも通りにしなきゃ』って思っちゃうんだよなー」
    「さっきからゴチャゴチャうるせぇぞ!口じゃなくて手ぇ動かせ!!」
     その声で霊幻は我にかえる。実は、現在二人は出張除草作業……もとい出張除霊中なのだ。9月も下旬まできたのだから、放っておけばそのうち枯れてしまいそうなものだが、管理人としてはそういう訳にもいかないのだろう。「悪霊のせいで空室がゼロになった試しがない」という管理人に、霊幻は快くアパート周りの除草を引き受けた。
    「いやー、エクボが体付きで来てくれて本当に助かったよー」
    「ったく、こんな時ばっかり調子の良い事言いやがって」
     流石に、今日はトレードマークである黒スーツではない。予め除草作業である事は伝えておいたので、ジャージ姿エクボというレアエクボを見る事ができた。その事は嬉しいのだが、正直な気持ちを言ってもコレである。霊幻が告白した所で言葉の意味を素直に受け取ってもらえるかどうか。思わずため息が漏れる。ブチブチと根を残さないように草を引き抜いていると、突然影が降りて来た。
    「体調悪ぃのか?」
    「んぶっ、エクボ!?」
     霊幻とは離れた場所の草を抜いていた筈のエクボがすぐ真後ろにいて、霊幻は驚きで尻もちをつく。
    「秋っても熱ぃなぁ」
     首筋を流れる汗がエロティックだ……などとボンヤリエクボを見上げると、その視界の先に緑色の陽炎が揺れた気がした。スーツというよりは舞台衣装のような服。緑色のシルクハット。日本人離れした明るい髪色の男は、少し寂しそうに笑っているように見えた。 
    「ちょっと休憩するか」
    「あ、え、そうだな」
     エクボが自宅から持ってきたという水筒には紅茶が入っているという。
    「どうせ、俺が『熱っ』っていうのが見たいんだろ」
    「今日は常温ティーだから安心しろ」
    「常温ティー?」
     常温といってもホットティーが冷めたものではない。アイスティーを作る際に作る「アイスティーベース」を氷を入れないで飲む紅茶の事で、常温ティーは20度前後ぐらいの温度の紅茶を指す言葉だ。夏場でもぬるくて不快になるような温度ではない。冷たい飲み物が苦手な人にオススメの紅茶である。
    「……美味しい」
     氷で薄めていない分、味がしっかりとしているのが常温ティーの特徴でもある。
    「だろ。でもな、常温ティーは茶葉が良く無いと楽しめねぇんだ。今回はディンブラだが、あとはピュアダージリンかアールグレイだな。アイスティーには向かないピュアダージリンも常温ティーなら――」
    「本当に、女王陛下は紅茶がお好きですね」
     エクボのウンチクを聞く霊幻の口からポロリと零れ落ちた言葉だったが、当の本人は「熱いのが飲めない俺の為に……こういう優しさに惚れたんだよなぁ」と自分が何を言ったのか全く気にしていなかったし、エクボはエクボで常温ティーの利点を聞かせる事に夢中で霊幻の呟きなど、その耳に入っていなかった。
     ただ一人、遠く木の陰に佇む半透明な男のみが、二人のやりとりを微笑ましい気持ちで眺めていた。
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