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    ekri_relay

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    書いた人→ひづき

    ハロウィンとか相談所(31)「良かった。吉岡さんと霊幻さん、無事にくっついたんですね」
     事の詳細を市長問いただそうと二人が市長室を訪れると、何故か市長は泣いて喜んで二人を出迎えてくれた。即座に否定するつもりが、相手の様子にあっけにとられているうちに、あれよあれよと話が進んでいく。
    「ほら、こういう事って外部が口を出すとかえって拗れたりする場合があるじゃないですか。だから、どこまで説明すべきか悩んでいたんですよ。といっても、私も詳細を聞かされて無いんですけどね」
     そう言って市長が取り出したのは、今は無き爪の第七支部の写真だった。防犯カメラの映像を印刷したものなだろうか。荒い画像には、吉岡に憑依したエクボの姿が映っていた。
    「お陰様で、市への問い合わせも激減しました」
     問い合わせというのは、例の魔法陣の事だろう。通常業務に加え、イレギュラーな事態への対応を迫られ、調味市役所はここ数週間蜂の巣を叩いたような騒ぎだったに違いない。
    「ここに映っている男と霊幻さんが結ばれないと世界が崩壊するなんて嘘みたいな話を聞かされた時は、ホント私もどうしょうかと……」
    「それで、お前さん吉岡に霊幻の護衛を頼んだのか」
     エクボの言葉に市長は目を瞬かせる。事情を知らない人間から見たら、写真に映っている人物は確かに吉岡であるし、指紋もDNA鑑定もAIの顔認証システムですら「吉岡」と回答を出す事だろう。市長は口には出さなかったが、その顔にはハッキリと「あなたが吉岡さんですよね?」と書かれている。仮に否定でもしようものなら、即座に首を括りそうな勢いだ。
    「えっと、そのもう少し詳しくお話を聞かせて頂いてもよろしいですか?」
     市長に今にも喰ってかかっていきそうな勢いのエクボを押しのけ、霊幻がいつもの営業スマイルを浮かべる。

    「つまり、いろんな世界でも俺とエクボは知り合いだったってわけだ」
     市役所からの帰り道、相談所までの道すがらに市長から聞いた話を要約する。
    「それも恋仲で、どいつもこいつも結ばれなかった。その怨みで世界を消しちまおうだなんてとてつもない執念だな」
    「えー、執念で現世に残ってる悪霊がそれいっちゃう?」
     霊幻はわざと茶化す。そうでもしないと、エクボを意識し過ぎて顔から火が出そうな程恥ずかしいのだ。
    「ところでお前さん」
    「ん?」
    「告白されるならこの場所が良いってあるか」
    「んんんっ」
     突然のセリフに、なんとか繕っていた仮面はポーンと宇宙の彼方に飛んで行ってしまう。
    「別に世界を救う為じゃねぇ。違う世界線の俺達の為でもねぇ」
     瞳の奥にユラユラと揺れる緑の炎は、ガワは吉岡に違いないのだが、それでも目の前の人物こそがエクボだと主張している。
    「自分自身の為に、ちゃんとしたいんだ」
     それは、霊幻にとっても有難い言葉だった。うやむやのまま倉庫での出来事は無かったことになってしまうんじゃないだろうか。もしくは、ズルズルと泣き崩し的に付き合ってしまうんじゃないだろうか。そんな不安が無かったと言えば嘘になる。
    「俺は……今、ここでも良いよ?」
    「ばぁか!俺様「ちゃんとしたい」って言ったろ。こんな安モンのヨレヨレスーツじゃなくて、ちゃんと着飾って薔薇の花束持ってきてやるから覚悟しやがれ」
    「それは人魂の方で?」
     フヨフヨと浮かぶ緑の人魂が着飾って、花束を抱える姿を想像して霊幻は思わず笑ってしまう。
    「体が無いと、その後お前さんを抱けねぇだろうが」
    「え、それは――」
     どういう意味かと問い返す前に、霊幻の唇がエクボの唇で塞がれる。こんな往来でとか誰かに見られたら……なんて考えは微塵もわいてこなかった。むしろ、このまま時が止まってくれれば良いのにとさえ思った。
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