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    ekri_relay

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    書いた人→ひづき

    霊とか相談所(34)「ったく、お前さんの誕生日までにはみんな終わらせて帰るぞ」
     苦虫を100匹は噛み潰したような顔で、エクボが不機嫌を隠しもせずにそう言う。そんなエクボからのかなり間接的な愛の言葉だったが、霊幻はしっかりと受け止めてしまい、なんとか平静を装うとする。「誕生日は恋人として過ごしたい」顔が火照るのを無理に誤魔化そうとするので変顔になっているのだが、その事に本人は気付いていない。
    「霊幻、不思議の国のアリスの終わりを知ってるか?」
    「確か、アリスが裁判にかけられるけど途中で体が大きくなって……」
     そこまで霊幻が言うと“悪霊”の名にふさわしい邪悪な笑みをエクボが浮かべる。
    「吉岡をよろしくな」
     そういって、エクボが吉岡の体から抜け出す。こんな状況下だというのに、悪霊の抜けた吉岡は呑気に寝息を立てて眠っている。
    「わけのわからない部屋では後れをとったが、自分たちの不幸を世界のせいにしてイジけてる奴なんかに負けてらんねぇからな」
     エクボの体が、まるで風船を膨らますかのようにみるみると大きくなっていく。普段は霊素の消費を抑える為に省エネモードで生活しているが、これこそが本来のエクボの姿なのだ。霊幻もけして背の低い方では無いが、子供と大人程の身長差に感嘆の声をあげる。
    (やっぱり、エクボってカッコイイ!!)
     などと、場違いな感想を自戒する霊幻。
    「フルパワーで行くぜっ」
     映画ハルクを思わせるような緑の巨体が、森の更に奥にあるであろう城を目指して走って行く。今回に限っては、エクボはエネルギー切れを考慮する必要は無い。なにせ、強力なバックアップが付いているのだから。
    「さすがテル坊。良質な霊素してやがる」

     国の為、世継ぎの為と引き離された女王と帽子屋をくっつける。追う者と退治されるべき追われる者をくっつける。人々の為にと経典を取に旅立った僧とその足を担った馬をくっつける。狸と狐を。ライバルの海賊を。
     時には暴力で、時には説得で、ありとあらゆる手段を使って奮闘した。世界があるべき姿に戻っていくのがわかる。昼でもなお暗い魔の森は、小動物たちの駆け巡る明るい森へと変化したし、別の世界線では退治人と吸血鬼が共存する町が誕生した。
    始まりは、きっと些細なスレ違いだったんだろう、と霊幻は考える。互いが互いの為と思ってとった行動が、ちょっとしたボタンの掛け違いを生み、それを直さずに見て見ぬフリをしたまま時が経過して、いつしか戻れない所まできてしまった。そうでなければ、二人が尽力を注いだからといって、こうも短時間に世界が変わる筈は無い。
    「素直になるって大切なんだな」
     霊幻がポツリと呟いた一言に、エクボは「お前さんは特にそうかもな」と言って笑った。
     もしかしたら、自分たちも同じ道を歩んでいたかもしれないIFの世界。ふと、霊幻は思う。自分たちはまだ良い。きっと二人が付き合う事になったと告げても、驚かれる事はあっても反対する人間など居ないから。しかし、そんな事は絶対にしないと思うが、もしもエクボが悪意を持ってモブに消されてしまったら?いや、善意だっていい。俺の為にと、良かれと思って消してしまったら?俺もやはりそんな世界を呪ってしまったんじゃないだろうか。
     と、突然ガシガシと頭を撫でられる。
    「そんな辛気臭ぇ顔、お前さんには似合わないぜ」
    「……だな」
     笑顔になれば幸せになれる。以前モブから聞いた教祖時代のエクボの言葉を思い出し、霊幻は無理矢理笑みを作った。
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