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    銀鳩堂

    ここには草稿をポイポイあげて、溜まったら整えてpixivやカクヨムに移植しています。
    ツイステ二次創作小説の長編案が降りてきたので現在は主にそれを書いてます。
    pixiv⇨https://www.pixiv.net/users/68325823

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    銀鳩堂

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    ヤンクロ第2部第4話
    後のクロウリー学園長=カラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第4話です。
    今回は王妃グリムヒルデと白雪姫の仲睦まじいティータイムにディアヴァルがお邪魔します。こんなにも仲睦まじい二人がなぜあんなことになってしまうのか、それは今後のお楽しみ…。(本文1940文字)

    ※今回の豆知識はWIRED誌から、鳥の「名付け」について。そう、鳥たちも「名前」を持っているのです……!

    #ツイステファンアート
    twistedFanArt
    #クロウリー学園長
    crowleyPrincipal.
    #ディア・クロウリー
    dearCrowley.

    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部四話「小さなお茶会」 華やかな結婚式から数日後。王城の庭園で虫を漁っていたディアヴァルは、新王妃グリムヒルデと小さな女の子がやってくるのに気がついた。女の子は、結婚式でドレスの裳裾もすそを持っていたあの子だ。参列者からは姫と言われていた。年の頃は6歳かそこらだろうか。どうも人間の子どもの年齢はわかりにくい。
     グリムヒルデは、幼い姫の手を引いて庭園の東屋あずまやをめざしているようだ。片手にはバスケットを下げている。
    「東屋についたらおやつを頂きましょうね」と、グリムヒルデは小さな姫に声をかけた。
    「はい、おかあしゃま!」と元気よく姫が答える。
     ディアヴァルには、その声や口調は、見た感じの年齢より少しばかり幼く感じられた。だがその幼さは姫をより愛らしく見せているとも思った。
     二人はディアヴァルが見守っていることには気づかず、咲き乱れる花の間を抜けて瀟洒しょうしゃな東屋へと入っていった。
     東屋の屋根に降りて耳を済ませると、下からははしゃいだ姫の声と、ほがらかなグリムヒルデの声が聞こえてくる。
    「さあ、どれから食べましょう。姫しゃまはどれがお好きですか?」
    「んーと。えーと。これ!」
    「はい、どうぞ」
     グリムヒルデの声には優しさがにじみ出ている。彼女はこの小さな姫君が本当に可愛いのだな。カラスにすらパンを恵んでくれる優しい女性だもの、こんな愛らしい姫君を愛さずにはいられないのだろう、とディアヴァルは思った。
     二人の声を聞いているうちに、ディアヴァルはどうしてもグリムヒルデの姿が見たくなった。今なら彼女以外には、姫君しかいない。ならば……。
     ディアヴァルは思い切って屋根から舞い降りると、東屋を覗き込める通路に降り立った。見上げると、そこにあの麗しのグリムヒルデがいた。隣には姫君がいるのだけれど、もう彼の目にはグリムヒルデしか映らない。
     ただただ見上げて見惚れていると、彼女の美しい声が耳に飛び込んできた。
    「まあ! カラスだわ。もしかしてあなた、私のお友達のあの子なの? こんなところまで探しに来てくれたのかしら……?」
     ディアヴァルは、心臓が跳ね上がって口から飛び出すかと思った。
    (彼女は俺を覚えていてくれた! 彼女は俺を覚えていてくれた! 彼女は俺を覚えていてくれた!)
     その想いだけが、頭の中をぐるぐると駆け巡り、彼はその場に固まってしまった。
    「あら……。驚かせてしまったかしら? ごめんなさい。怖がらなくてもいいのよ。あなたもおやつを食べたいの?」
    (ちがうんです、そうじゃないんです……。でも嬉しい。なんて幸せなんだろう)
     ディアヴァルは夢見心地で歩み寄り、グリムヒルデの手からお菓子をもらって食べた。その菓子はとても甘く、この世で一番美味しいものに思えた。
     その時、「おかあしゃま、カラスさんとお友達なの?」と、忘れていたもうひとりの声がした。ここでやっとディアヴァルは、姫がこちらを覗き込んでいることに気がついた。
    「そうよ、このカラスさんは私のお友達なの。優しくしてあげてね」
    「はい! おかあしゃま!」と答えると、姫はディアヴァルに向き直って挨拶をしてくれた。
    「カラスしゃん、スノーホワイトです。よろしくね」
     可愛らしくお辞儀をして、顔を上げた姫の目は好奇心にキラキラと輝いている。名前通りの抜けるように白い肌に上気した薔薇色の頬、髪の毛は磨き上げた黒檀こくたんのように艷やかな黒。愛らしい姫をみて、ディアヴァルは、この子もいずれ素晴らしい美人に育つのだろうな、と思った。
     彼が逃げないのを見て、小さな姫君はその手にお菓子を持つと、「はい、どうぞ」と差し出してくれた。彼はありがたくその菓子も頂戴したのだった。
     お菓子を食べていると、耳に心地よい小鳥のさえずりが聞こえてきた。目を上げると、東屋の上にナイチンゲールがとまって精一杯さえずっている。ふと見回すと、他にも小鳥やリスが現れて東屋を取り囲んでいた。
     鼻っ柱の強そうなリスが威勢よくしっぽを振り上げて東屋の柱を駆け上り、姫の肩に飛び乗った。
    「あら! まあまあ!!」とグリムヒルデが驚きの声を上げる。
     だが姫は驚くわけでもなく、リスを撫で始めた。
    「おかあしゃま、この子もお友達なの! いつもお庭で遊ぶのよ」
    「まあ、貴方にも小さなお友達がいたのね。紹介してくれてありがとう」
    「一人のときも、お友達がいっぱい来てくれたから、さびしくなかったの……」
     そうつぶやく姫の声は、言っている言葉とは裏腹に、かつての寂しさを思い出しているかのように沈んでいた。グリムヒルデもそれを察したのだろう。ベンチから立ち上がると、姫の隣に座ってその肩を優しく抱きしめた。
     姫がグリムヒルデの顔をを見上げると、グリムヒルデは姫の耳にささやいた。
    「これからは私が一緒ですよ。もう寂しいなんてことはなくなるのです」
     その顔には慈愛が溢れていた。
     なんと美しい母子だろう。血が繋がっていなくても、親子の情は通じるのだ。二人を見ながら、ディアヴァルはそんなことを思うのだった。





    【鳥の豆知識】
    今回は鳥の「名前」の話。前回の「カラスの挨拶」コンタクトコールのお話の続きになります。
    カラスたちがお互いにコンタクトコールと呼ばれる鳴き声で「自己紹介」的に鳴きあっていることは前回書きました。
    言い換えると、カラス一羽一羽が自分自身にタグ付けられた特定の鳴き声を持っている、ということになります。
    では、そのコンタクトコールは、どうやって会得されたものなのか?
    というのが、今回のお話です。

    こちらが今回の紹介記事(WIRED誌より)。
    「インコは一羽ずつ親から「名前」を貰う(動画)」 https://is.gd/99IuiF
    『テリルリハインコ[ルリハインコ属のひとつ]という鳥は、歌声を覚えるより早く、個体認識のための固有の音声を親から教わっている。要するに、親鳥はひなに名前をつけるのだ。』

     凄い話です。この親による「名付け」は、卵を取り替えてしまっても機能しているとのこと。

    『実験の結果、半分のつがいは、よその巣のひなを育て、ひなたちは、養い親から教えられたコンタクトコールを用いた。[対象群として「通常の親に育てられたひな」と比較した結果、コンタクトコールが「遺伝的に決まっている」わけではないことが示された]』

     養子も実子も関係なく、「名前」学習は成立したのです。
     そしてこのコンタクトコール、鳥たちの間でどのように使われているかと言うと、本鳥が「自己紹介」するためだけではなく、お互いを呼び合う時に相手側からの呼びかけでも使われるとのこと。

    『[コンタクトコールは個体固有のさえずりだが、ほかの鳥は意識的にそのさえずりを真似ることでその鳥に「呼びかける」。そういう意味で「名前」的なものといえる]』
    『他の個体の発する音声を模倣し、互いを固有の「名前」で呼びあうことで知られる動物には、ほかにもイルカなどがいる』

     …というわけで、カラスもお互いを固有の「名前」で呼び合っていると思われます。
     野生のカラスにも、親から貰った名前がある。
     なんだか凄い話です。カラス愛が深まりますね。

     おまけの記事紹介。コンタクトコールと同じく、さえずり方も卵の中で学んでいる、という話。
    「胎教だった。ヒナ鳥は孵化する前にすでに親鳥からさえずり方を学んでいることが判明」(オーストラリア研究) : カラパイア https://karapaia.com/archives/52214164.html
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    PROGRESSヤンクロ第2部第8話
    後のクロウリー学園長=カラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第8話です。
    王妃と再会したディアヴァルは、ずっと側にいて欲しいと言われて幸福に酔いしれるのだった。そこへ誰かがドアを開けて入ってきた…。(本文約1630文字/豆知識は今回はお休みです。支部移植字に話数が減る予定なので今回はそれを見込んでの調整です)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部八話「命名」 ディアヴァルが王妃グリムヒルデに背中を撫でられて恍惚こうこつとなっていたその時、部屋のドアがキィっと開く音がした。
     誰か来た?! まさか追い払われたりはしないだろうか。王妃に魔女の疑いがかかってしまったりしたらどうしよう……。
     そんな心配が頭の中を駆け巡る。
     だが、次の瞬間、部屋に飛び込んできたのはスノーホワイト姫だった。
    「おかあしゃま、あのね……」
     そう言いかけた姫の顔はたいそう寂しげで、ディアヴァルはこんな小さな女の子がこんなにも寂しげな顔をするなんて、と胸を痛めた。が、次の瞬間、姫の顔がぱっと輝いた。
    「あっ!! カラスしゃん!! カラスしゃんだ!!」
    「そうよ、カラスさんが遊びに来てくれたのよ」
    1634

    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第二部1.5話「出会い」後編
    構想が固まらず止まっていた二部ですが強引に再起動。試運転的に出会いシーンの続き、王とグリムヒルデ(後の美しき女王)の出会いを書きました。
    アニメ版「白雪姫」には無いシーンで「みんなが知らない白雪姫」の筋立てとも違っていますが書きやすい方向に進んでみます。最後にカラス(鳥類)の豆知識(異種族恋愛事情)付き。豆知識は恒例にしたいです☺(本文1327文字)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部1.5話「王との出会い」(第一話前半はこちら⇨https://poipiku.com/3625622/6059932.html)


     大鴉おおがらすのディアヴァルは、美しい乙女の姿に見惚みほれていた。
     なんと美しい髪の毛。瞳も、顔も、何もかも完璧な美の化身としか思えない。いくらでも眺めていることができる。
     彼のこれまでの生涯で、こんな気持ちになるのは初めてのことだった。
     心臓がドキドキして胸が苦しく身体は熱くなって、クロウタドリの様に歌いたいような、ハヤブサの様に飛翔したくなるような、得も言われぬ心地がする。
     この奇妙な心地は何なのだろう。まるで何か魔法にでも掛かったみたいだ。そう思っているその時、乙女の家の門の前に立派な馬に乗った男が供を何人も連れて通りかかった。
    2445

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