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    oio_oi3

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    ⚠️なんでも許せる方向け
    ☑︎平和世界線
    ☑︎先天性女体化夫婦曦澄♀
    ☑︎捏造子有

    投稿ずみのお話のおじさま視点です。

    #曦澄
    #先天性女体化
    congenitalFeminization
    #先天性女体化曦澄
    #江澄
    lakeshore
    #女体化
    feminization

    I was born (忘れえぬ女:藍啓仁視点)「藍先生」
     高く踏み鳴らす足音と走っている気配にまた座学のひよこ達かと注意しようかと思えば角から顔を出したのは甥の妻である江晩吟だった。
     今朝挨拶に来た時は複雑に結い上げられていた髪は解かれ風に揺れ襟元も乱れている。甥の妻として、人妻として端的に言えば外聞が悪い状態で茫然自失な彼女を自室へ招き入れた。
    「……何があった?」
     縋るように呼ばれた時の姿を思い出す。まるで寄る辺のない子供のような顔。親兄弟も友人もいないかのような…昔からそうだった。
     毎日のように素行が悪い魏無羨に怒鳴っていれば隣で真面目な江晩吟が可愛くなるのも当たり前だ。勤勉な様に関心していつだか褒めたことがある。その時の生まれて初めてそうされて驚きながらも喜びを堪える顔は年相応というよりも幼さが勝っていた。
     甥2人は優秀で非凡、親に似たのだろう。兄についぞ勝てたことのない己を天才ではないと認めていたからこそ天才の横で真摯に努力を続けられる江晩吟を好ましく思ったのかもしれない。
     甥達になかった褒められて素直に喜ぶ様に彼女の幼さと健気さを感じて目をかけるようになっていった。曦臣は孟瑶と親しくしていた。彼らと違い平凡な己を受け止めて江晩吟はひたむきに学に取り組む。
     軽薄でも不真面目でもない彼女だからこそ跡継ぎやらそもそも次期宗主同士の婚姻など問題は数あれど甥の妻に不足なしと思っていた。
     だがどうやら不足があったのは己の甥の方らしい、とやっと気付いて溜息を吐いた。
    「……身嗜みを整えなさい」
     乱れた姿ににやっと気付いたようで慌ただしく衣を調えるのを見てしまってから後ろを向く。
     随分と時間が経ってからもう大丈夫ですと告げられて振り向けば結紐を無くした髪は所在なさげに垂らされていたが乱れてはいなかった。胸元も裾も直されている。化粧も完璧に直されているのに驚いて手鏡や道具を常に持ち歩いているのかと気付いた。
     目の前にいる完璧な女人にこれが男物の校服を脱いだ彼女の虚飾なのだと理解する。そしてその虚飾を擲って雲深不知処の廊下を走り夫の叔父に今にも泣き出しそうな顔で助けを求めるとはどのようなことかと考えてまた溜息が出そうになる。
    「沢蕪君と離縁させていただきます」
     どうか、と頭を床に擦り付けんばかりにしてまで願った妻に何をしたのかと甥を叱り飛ばしたくなった。
    「私はもうあの人の子を孕むことに耐えられません」


     雲夢江氏主催の清談会。案内の文を眺めながらまだ30にもならない藍啓仁は困り果てた。
     母親を亡くしてまだ一年も経たず兄弟の兄はともかく忘機は頑なでまだ月に一度戸の前で座っているような有り様。曦臣も意固地な弟になんやかやと気を逸らそうとしていたが結局折れて隣で黙って座って、兎も角2人がもういない者の部屋で戸が開けられるのを待っているのを見るのは忍びなかった。そんな兄弟を置いていくのは心配だ。
     彼らを積極的に害そうとする者はいない。しかし多大な期待をかけられそれに不足なくそれ以上に応えてみせる曦臣が勉強の進み具合などを聞かれる度に貼り付けたような笑みを浮かべるのが気の毒だった。
     どうしたものかと考えを巡らしていると雲夢江氏の宗主である江楓眠から文が来た。特別親しくしてるわけでもないのですわ清談会についてか、それともなにか他に火急の相談事かと紐解けば
    『同じ年頃の子がおりますので藍の若公子様達をお連れくださいませんか。次代を担う子達が誼を結ぶ良い機会となるでしょう。まだ幼い我が家の二の姫に礼儀を示してくださると考え音に聞く俊英な藍の公子様達にお目にかけたく思います』
     穏やかで人好きのする江宗主らしいと思った。深い事情を知らなくとも兄の妻が亡くなった際にも暖かい言葉を送ってきた男だ。甥達への慰めにと蓮の実を貰い普段甘味など口にしない彼らにやれば存外気に入ったようだった。
     雲夢への旅は母を亡くした甥達の良い気分転換になるだろう。少なくとも誰もいない部屋の戸の前で待つことは出来ない。
     曦臣と変わらぬ歳の江家の長姫は金家に嫁入りすることが既に決まっており二の姫は婿取りして宗主になることがわかっている。
     次期宗主との縁が出来るのも悪い事ではなかろうと雲夢へ出立した。
     荷物を家僕に任せ社会勉強だと雲夢の波止場と軒を連ねる店を甥2人を連れて見て回る。人が多いながらも姑蘇にはないものなので幼い子にはいいものだと自分を説得させようとするがこの人混みで彼等を失ってはどうしようかと不安になる。
     両手に子らの手を握りしめて歩いているとやはり賑やかな出店が気になる。
    「欲しいものはないか。買ってやろう」
     忘機は固まって黙り込んでしまう。小さな丸い頬の間の口はむっつりと閉じられて言葉が出てくる気配はない。
    「これにするかい?ね?」
     見兼ねた曦臣が選んだでんでん太鼓を嬉しいのか嬉しくないのかわからない顔で受け取りながら謝辞を述べた顔も嬉しいのか嬉しくないのかわからない顔だったが
    「良かったね」
     と兄が微笑みかけた言葉にこくりと頷いてみせたのでそういうことなのだろう。
     ずっと手に持っていたそのでんでん太鼓はいつだかまた旅に連れて行った時に失くして帰ってきた。どうしたのだか言わないのだから困った。
     新しく欲しいとも言わなければその時には玩具を欲しがる歳でもないのだから新しく買う必要もなかろうと思ったのだった。
     でんでん太鼓を弟に買ってやったので兄に何もないのでは気の毒だろうと何かと言ったのだが曦臣は首を横に振って
    「欲しいものを見つけたら言います」
     と断った。それならいいかと当初の目的である蓮花塢に向かった。



    「叔父上、欲しいものがあります」
     清談会後の宴。見聞を広めよと忘機は姉と、曦臣は妹と未来の跡取り同士として好きにさせていたのだ。宴席で隣に座った甥の視線の先には江家の二の姫がいた。
    「私は彼女を妻にします」
     曦臣の瞳に映っているのは子供の戯れで済まされるような無邪気な恋心ではなかった。
     20で一目惚れし咎人と成り果てた女を娶った兄と同じ瞳だった。それを憎悪した。
     沸々と湧いてくる憎しみ。心の底からお前もかと、手をかけて育ててやった恩義を忘れお前もそうやって父のように人の道を外れるのかと怒鳴りたくなる。
     しかし藍渙は未だ十にもならぬ子供だった。
     その後雲夢につれていく藍家の家規を叩き込み自制させる。
     次代の姑蘇藍氏宗主として望み育っていくうちにあの時見た燃えるような瞳が自分の幻視だったのではないかと思った。恐れるあまり見た白昼夢だったのだと。
     沢蕪君と讃えられ何事にも心を揺らす事なく誰にも分け隔てなく接する。育て方は正しかったと安心していた。
     座学に江家の三騒、江晩吟、魏無羨、孟瑶が来た時に警戒したがかつての幼い姫は立派に次期宗主として男に混じっても勝り劣らず他家公子の視線をほしいままにしながらも浮つく様子はなく真摯に最前列で勉学に取り組んでいた。
     それよりも軽薄に自慢の弟子に構う魏無羨に気を取られ毎日怒鳴っていることの方が問題で、しかし忘機も満更では無さそうなのがまた頭が痛くなる原因だった。
    「忘機の好きなようにさせましょう」
     と嬉しそうに弟の春に喜んでいる曦臣は孟瑶と話が合うようでしばしば話す姿を見かけた。そこに江晩吟が混ざる事もあったが彼女の視線に全く色気は感じられない。ただ優れた先達に教えを乞うているだけのようだった。
     むしろ曦臣の瞳でちらちらと燻っている焔に恐ろしさを感じた。甥に兄と同じ道を辿らせてなるものかといつかその時がくれば剣を交えてでもと考えながらいざその時に愛し慈しんできた甥を斬れるものかと溜息を吐く。
     その時は江晩吟に犠牲になってもらいたいと思いながら他に跡取りもいない江氏と戦争でもするつもりかとまた最悪の想像をする。
     だが、甥を手にかけるくらいなら赤の他人が犠牲になる方がいい。そう姑息な考えが浮かんだ。
     だが兄のように閉閑されたくもない。
     どうにか道をと考える。
     座学を終え雲夢の三人が帰ってから忘機と魏無羨は仲良く交流を深め数々の問題を……馬鹿げた程の愛の力で乗り越え結婚した。
     仲睦まじい弟夫夫をあたたかな目で横目に見ながら曦臣はのんびりと金光瑶と文のやりとりをしたり姑蘇に招いたりして過ごしている。
     宗主補佐として自分が彼女と顔を合わせていることの方が多い。それとなく聞いても彼女はただ全修士の憧れ沢蕪君くらいにか思っていない。安堵しながらも心の中で煮え切らない想いがあった。呆れながらも
     想いが枯れたのかと見合いをさせようとしても修行中の身だからと断る。そうこうしているうちに閉閑中の兄が病を得てどうにもならなくなった。長老達は次代宗主である曦臣をせっつく。ここが正念場だと藍啓仁も家格が釣り合う汕子の釣り書きを山程用意して結婚を迫った。
     時を逃せば今死にかけている兄と同じ道を辿らせる事になる。手塩に掛けて育てた甥を他人に後ろ指でさされるような事態に置くことはどうしても許せなかった。
     恋は人を馬鹿にする。
     その愚かさは藍家の家規を以てしても抑えられず耐えられず愛する人を苦しめ死においやる。
     若くして死んだ甥達の母親には気の毒としか思わなかった。可愛い教え子であった江晩吟を同じ目に合わせたいとは思えない。
     何より甥に父と同じ破滅の道を選んでほしくない。
     叔父の意図を汲み取って適当な名家の汕子を選ぼうとしていたのに親しくしていた金光瑶に何か吹き込まれたのか、いや、そうなるようになっていたのだろう。甥は結局目の前で抹額をつけた頭を床につけていた。
    「叔父上、私は江晩吟と添い遂げたいのです。彼女が欲しい」
     否やはないとあげた意志の強い瞳にはどうしてまともに会わせたこともないのに兄と同じ昏く激しく燃えるものが見えるのかと不思議だった。
     曦臣は蓮花塢まで御剣で飛び江晩吟の両親に額突いて誓いを立てた。
     跡取りに事欠く江家に産まれた子を優先的にやること。夫といえども江家について口を出さないこと。江晩吟が望めばすぐさま離婚に応じること。江家宗主夫妻に約束し書状に己の血で拇印まで押してきた甥にもう止められないと諦めた。
     そうと決まれば甥が罪人にならぬよう婚儀を整えるしかない。ここで反対すれば曦臣は他家の跡取りを攫って隠すか血の繋がった実の叔父殺しの汚名を着ることになるだろうと思ったからだ。
     宗主代理である自分と次期宗主である江晩吟とは少なからず交流がある。
     加えて座学時代の恩師でもある自分が私的に文を出せばいくら婚姻に乗り気でなくとも頷かざるをえないだろうという卑小な考えもあった。
     彼女と親しい魏無羨や金光瑶が彼らの夫と義兄の為に説得したのもあって婚姻と相成った。
     彼女の姉と違って女性らしさとは縁遠い無骨な男物の校服姿を見慣れていたので花嫁にしては少々華が足りないかと思っていたがそれは全くの杞憂だった。
     兄の喪が明けた一年後、婚姻の儀当日。
     藍家宗主の妻、江家次期宗主としての威信を掛け集めた方々の職人が粋を凝らし一年を費やした瀟酒な赤い衣に身を包んだ江晩吟はこの世のものとは思えぬほどの美しさだった。
    「美しいな」
     思わず口をついて出た言葉に彼女が赤い紗の下で微笑んだのがわかった。
    「ありがとうございます」
     普段は憎まれ口を叩いてばかりだが師である自分には素直な姿を見せるので可愛げがある。嬉しそうな彼女に無理強いした婚姻を推し進めた一人である罪悪感が重くのしかかった。
     ふと、脳裏にこびりついていた亡霊の影がぼんやりと起き上がる。
     腹を痛めて産んだ子には月に一度しか会えず、淋しい離れで一人暮らし、そうして一人死んだ哀れな女を思い出さずにはいられなかった。
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