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    A_garnetMK2

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    前に呟きながらまとめていたサイバーパンク原神な鍾ウェンの書きかけ。
    最後の方にどんなイメージか的なのもまとめとく。

    #鍾ウェン
    ZhongWen
    #サイバーパンクパロ
    cyberpunkParody

    ニューロンの向こう側で会いましょう「ボクたちの持ち物は一体どれほどあるのだろうね」

    目の前の少年がグラスの中身を見つめながら呟いた。牧歌の城の国で造られる酒はこの大陸では珍しい天然素材を使用しており、璃月を始めとした他の国のように生成プラントで育てられた原材料から造られる酒とは一線を画した味わいがある。自由を謳歌する彼らは0と1の世界の恩恵をひと齧りだけして、あとは自由気ままな彼らの神同様にのんびりと暮らしている。
    神によって管理された世界で、誰も統治をしない国。統治者を置かず、神すらも冠を戴くことを良しとしなかった国は、恐らくこのテイワット大陸の中でも随一に変わり者な国であろう。
    そんな酒の国の匂いを漂わせた少年の呟きを鼓膜を模した集音器で拾い上げた青年は、手の中の陶器に注がれた酒を一口飲み下し喉を潤してから、口を開いた。

    「さあな。少なくとも七神に据えられた時分には棺桶に入れられないものは全て精算してしまった」
    「今はどうなの?凡人の鍾離先生」
    「俺一人の持ち物は変わらず少ないままだが…そうだな、俺を俺足らしめるために必要なものは思っていたよりもずっと多い。他人と違う顔、声、日々生活をするための住処、鍾離として生きる上で避けては通れない他人との関わり合い、いつの頃からか湧き出る『こだわり』を満たしたいという欲望。芝居を観る時は一番人気の役者のものを、鳥を愛でるならばより高いガビチョウを飼う。過去の人間たちが己の叡智と技術を磨き生み出した珠玉の逸品を見付ければ、それをどうしても手元に置いて鑑賞したいと願い、実際に手に入れてみせる衝動と行動は俺が俺であるために必要なものだ。ならばこれらは俺の持ち物と言えるのではないだろうか。とうの昔にこの世界に元素として溶け込み凡人の世界より高次元へと移された岩神モラクスの持ち物は確かに存在しないだろう。だがただの鍾離にはそれがある」

    同様に、と鍾離と呼ばれた青年は続ける。
    風の国で生きる吟遊詩人にも、それなりに持ち物はあるのではないか、と。

    「残念ながら吟遊詩人は風の向くまま漂う根無し草だからね、荷物は元々少ないものだよ。曲を奏でる竪琴とその日のお酒代だけがボクの持ち物さ。どこか遠い場所で野垂れ死んだとしても誰もボクをボクだと判別出来ない。何処にでもいて何処にもいない。ふふ、でも哀しくないよ」
    「哀しくないのか」
    「哀しくないさ。君たちと違ってボクは元々自我すら持たない電気信号のひとつだったんだから、こうして世界を見て、感じて、それを他者に伝えられるだけでもうずっと幸福なんだよ。これ以上を望めばバチが当たる」
    「そのバチは誰が当てるのか」
    「さあ?神様ってやつかな。星海からボク目掛けて落ちてくるんじゃない?」
    「或いはそれこそが天理が定める摩耗の正体なのかもしれないな。人は俺達を不老不死だと羨むけれど、その実我々は人がいなければ存在を続けることが出来ないのだから」

    鍾離は少しだけ笑い、手元の杯に口をつける。石から掘り出したような質感を覚える薄い唇から溢れることなく杯の中身は彼の口内へと流れ込み、嚥下と同時に喉仏が上下した。
    誰が見ても生身の人間と同じ動きをする彼の身体は、しかし凡人のそれとは異なり全てが作り物であった。
    杯の中で揺らめく水面を眺める琥珀色の両目は焦点を合わせる為に絶え間なく瞳孔が開閉しており、よくよく耳をすませるときゅるり、と駆動音が眉間の辺りから聞こえてくる。そうした彼の目の前に座り酒瓶を幾つも空にしている少年──ウェンティの腹からも、体内プラントがアルコールを急速分解する音が小さく鳴っている。どちらも人の鼓膜では拾えず、人よりもずっと集音性能の高いマイクを備えたお互いの耳でしか拾えない音だった。
    ウェンティはほんのりと赤らんだ頬を空の酒瓶に押し付けにんまりと笑う。鍾離はその赤みをピントを合わせると、僅かに眉間へ皺を寄せた。

    「何だ」
    「君は自分を自分足らしめるために必要なものは思っていたよりもずっと多いと言ったね。他人と違う顔、声、日々生活をするための住処、君が鍾離という凡人として生きる上で避けては通れない他人との関わり合い、いつの頃からか湧き出る『こだわり』を満たしたいという欲望…。それらは本当に君の持ち物だろうか。君がかつて岩王帝君と呼ばれた存在に作られた疑似人格である可能性は?全てをインプットされ、過去の体験すら持って今まさにこの瞬間に生まれたプログラムである可能性を誰も否定出来ない。もしくは、君と全く同じ人格、同じ顔、同じ声、同じ名前の存在が複数体存在しているかもしれない。それでも君の持ち物は君だけのものかな。何を根拠に君は君になるのか。生身の身体を既に失ったボク達が自身の存在を主張するために必要なものは、本当にそんなもので良いのかしら」
    「確かにお前の言う通り、自身の証明を内面のみに求める事は実に不安定だ。俺達の身体は既にこの世に存在せず、脳だけが取り出され広大なネットワークを管理する為に使われている。鍾離以前に岩王帝君と名乗る岩の魔神ですら、天理が七神を据えようと決めた時点で仮初の記憶を植え付けられて生み出された模擬人格かもしれない。自分の脳を己の目で見た者は存在しないし、周囲の反応で俺らしきものがあると判断されているだけだ。だがな、バルバトス。俺はそれでも、今俺が把握している持ち物は自分のものだと自信を持って言えるんだ」

    なぜ、とウェンティは瞬きもせずに問い掛ける。翡翠の瞳に淡く笑んだ鍾離の顔が反射した。

    「俺は今、少し酔っている」
    「そうなの?」
    「酒の楽しみ方を知っているからな」
    「……それを教えたのはボクだった筈だけど」
    「そうだ。その気になれば血中のアルコールなどすぐに分解出来ると言った俺に、酷く酩酊しながらこれが酒の楽しみだとお前が言った」
    「そんな事もあったね」
    「その時の俺と今の俺が別の個体だったとしても、お前との会話を覚えていて実践している俺は間違いなく俺だと言える」

    つまりはそういう事だ。
    鍾離は三度、酒を口に運ぶ。ウェンティは微睡むような瞳でその顔を見上げ、そうして満足そうに笑った。


    ***


    以下設定的なの。
    テイワット大陸と呼ばれる七つの国を有した大陸は、地脈と呼ばれる情報ネットワークが張り巡らされ、そこから元素エネルギーを介して神が人を管理している。
    七神はかつてこの大陸にいた魔神と呼ばれる元素(=ネットワーク)に直接通信できる存在が戦い合い生き残ったもので、今は世界の中枢で電脳化した脳と脊椎だけを残して割り当てられた国を管理している。

    神の目は人がネットワークに直接繋がるための外付け器官(=電脳化?)。
    七神はリモート義体を使って俗世に降りて人と交流してる的な感じ。


    上手く無理のないところで折り合いが付けられたら良いんだけど、サイバーパンクの中でも義体化とかじゃなくて管理体制とに対するパンクかなーって思ってる。どうなんだろうな、これ…。
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