【さとあす】策士、策に溺れ【人間界IFイルアズ】 ピンポン、とチャイムが鳴る。予定の時間より三分程早い。
視界の端で、昨日買ってきておいた茶菓子が予定通り、たまたまそこに置いただけに見える位置に収まっており、彼のお気に入りの茶葉が机の上に無造作に出してあり、来客用のティーカップは食器棚ほいつもの場所にきちんと並んでいることを急ぎ確認しながら、インターフォンに応対するためにリビングの反対側の壁へと駆け寄る。その拍子に、ゴミ箱に足を引っかけてひっくり返す。中身は始末済みだったのは不幸中の幸い、慌ただしく起こしてやりながら、片手を伸ばしてインターフォンの応対ボタンを押す。それからやっと体制を整えて、咳払いを一つしてから、大きく息を吸って――「はい」と、精一杯冷静ぶった声で来客へと声を掛けた。
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