都会の都は寒波で雪が降る中、広い庭では冬支度を完璧にしているちびっ子のトランクスは、外で遊んでいた。
そばには青髪の背の高い青年が見守っている。
少しして、友達が3人は来たようで雪だるまを作り始めた。
少しだけ積もった雪に芝生の草や土が混ざりながら、4人で作り終える頃には雪が、雨に変わる。
そうなると、家の中に入りおやつタイムがはじまった。
青年も家の中までは見守ることがないため、雨の中傘を差して出かける。
雨は嫌な思い出しかない。
大切な人を失ったあの時は、雨の中だった。
「雨か•••」
傘に叩く音も激しさを増してきている、少し足早に歩いて、喫茶店に着く、傘をたたんで空を見上げるも雨が大粒で落ちてくる、少し付いた雫を払って店内に入る、カランとドアに取り付けてある鈴が鳴る。
外見とは違った古い洋風の店、そこでいつもの場所に座る。
髪の長いエプロン姿の女性が水と手を拭くタオルを持ってくる。
「おはよう、マイ。」
「おはよう、トランクス。」
「いつもの?」
「うん。」
バイトをしている青年トランクスの恋人マイ、雨の日は落ち込んでいる姿をいつも支えていた。
元は、あの未来で悟飯が死んでしまったことからであるが、歴史は変わらないと、トランクスには記憶としてしっかりあるので、時々夢にうなされるくらいに、未来の記憶は思い出したくもないのだった。
ただ、雨に。
真っ暗な雨の日のあの時の思い出は、悲しみも怒りも、希望だと託された心も、絶望に支配されてしまいそうになり、金色の戦士になったものの、心が閉ざされるようになりながら必死に戦いをしてきた。
そんな時にマイと出会い、絶望の闇に堕ちそうな時はマイが支えてくれたおかげで希望の道にたどり着く事ができたのだ。
オレは、マイを愛しているから。
しっかりとした告白なんてしていないものの、互いに互いが気遣って寄り添っていた。
未来の別の場所に行く予定だったが2人でここに落ち着いたのは、誰かが使ったであろうドラゴンボールのおかげなのかもしれない。
時々、トランクスは考えながらマイが運んできたケーキセットを受け取る。
「別に働かなくても•••」
「トランクスだって、居候なんだからしっかりと働かなきゃ。」
「耳が痛いな〜」
「でも、ブルマさんのお手伝いしてるんでしょ?」
「ほぼ、実験•••だけど。今日のケーキ美味しそう。」
「今日も、おいしいよ。」
他のお客に呼ばれて注文を取りに行くマイを見ながら、ケーキをひとくち、甘すぎるチーズケーキに苦笑い。
「甘すぎるよ。」
マイが作っているチーズケーキはトランクスには、甘すぎて飲み物と共に飲み込んでいた。
雨のためか席は埋まり、すぐに満員になる。
いつもならのんびりとするトランクスも、会計をして外に出る。
マイとはバイト終わりに来ればいいから。
傘を差して、歩き出すもまだ家に帰るには早い時間。
少し駅の方へ足を運ぼうと歩く、
マイがいるから、今があるんだ。
自然と口元が上がる。
雨の日でもマイのことを考えると心が落ち着く日々が続いていた。
「ん?」
見知った服でツンツン髪が特徴の男の子が抱っこされたようにしている。
「ん?悟天くん?に似てるような•••」
誰かに抱っこされている?その歩く後をついていく、少し人がいなくなった道に入ると相手の傘が前に落ちたのが見えるも、一瞬に後ろを取られていた。
「俺に何かようか?」
殺される!
首元に手が付けられている、
傘を落として両手を挙げる、この気配を感じないくらいの俊敏性、瞬間移動って思うくらいの気の気配もない。
と、トランクスは唾を飲み込みながら
「その子が、悟天くんが、オレの、知り合いだったから。知らない人にって。」
「悟天が?」
手が引いたあと、トランクスはゆっくりと振り向くことができた。
左の顔に傷の•••未来にいた悟飯さんに似た男なのか、左腕は、ある。
観察していくうちに悟天だったとも確認できる。
「ふあぁ〜。おおきいにいちゃん、冷たい••••」
「ごめん、悟天。」
「悟天くん」
「ん?あれ、トランクスさん。こんにちわぁ。」
眠い目をこすりながら悟天はトランクスに言う。
悟天くんがにいちゃんと呼ぶということは、悟飯さんなのか?死んでいない、生きている無事な悟飯さんに会えた。
「悟飯さん?」
「トランクス•••髪の毛どうしたんだ?色も背も伸びてるし、気配も、なんか違うような。」
意外な言葉に、トランクスは笑いが出る。
「何か変なこと言ったかな?」
「悟飯さん、なんか面白いですよ、ごめんなさい、本当はお会いできてうれしいんです。」
「トランクスの世界で俺は、もういないからかな。」
「そうなんです。オレの世界はなくなってしまって、この世界にいるんですけど。悟飯さんの世界でも何かあったんですね。」
「くしゅん。」
悟天のくしゃみに二人は気づく、雨に濡れてしまったから身体は冷えてきている、
また雪にでもなるのかとトランクスは二人を家に誘う、二人で空に舞い上がり、着いた先はトランクスが使っている部屋のベランダ。
部屋に入って直ぐに悟天の服を脱がし、裸のままトランクスはシャワー室に入れる。
「ありがとうございます、トランクスさん。」
「いや、いいんだ。オレが濡らせてしまったんだから。悟天くん、ゆっくり温まるんだよ。」
「うん。」
シャワー室を出ると直ぐにトランクスは裸の悟飯を見る、その左腕の状態も。
「俺も、借りる。」
「その腕は、ピッコロさん、ですか?」
「ナメック星の人の、腕。普段は服とかでで隠すから、この色のことは誰にも言わないでほしい。」
「はい•••」
シャワー室に入っていく。
何処かで、そんな未来もあったのかもしれない、オレの存在しない世界、さみしい気持ちもある、オレが看取られた側になる世界、悟飯さんがピッコロさんと一緒にいた世界。
「でも、ここに悟飯さんもいるじゃないか。」
光が見えてくる、未来悟飯に会えた事によってトランクスは今までの事から荷がおりたようだった。
着替えを準備する、使ってない下着なんかはあっただろうか?悟天くんのは小トラに借りてくるとして、何か左腕に着けられるような隠せるようなものがあれば、
「母さん、何か作ってたな」
トランクスは大判のタオル、ドライヤーなど普段使うものを用意して、部屋を出て行く。
小トラの部屋から悟天用の服を、ブルマがいない研究室からは隠せるものを、下着は買ってくることにした。
部屋に戻ってくるとドライヤーで乾かしているところで、2人ともバスタオルを包んでいる。
「トランクス、もしかして買いに行ってた?」
「悟飯さんの下着と悟天くんの下着。服は•••悟飯さんオレの、着てくれるとうれしいんです。」
「ぼくのは、トランクスくんの服だ〜」
着替えをする、
「ちょっとおおきい。」
「伸びる素材のは大丈夫だけど、トランクス細身だから、この服だけでズボンは•••こっちので。」
「ご、悟飯さん。」
ナイスな服装です。
トランクスの趣味の服であるが。
「これは?」
「左腕から指までしっかりカバーしてますね。で、こうしてと。」
「そういうことか。」
「半袖でも活動できると思います。取り外しはこうで、洗える。もともとは義手や義肢用に一般と変わらない生活を(その部分を隠して)するために作ったみたいなんです。それが今は、隠すことがなくなったのであまり必要としてないみたいで。母さんもいいの作ったのに、宝の持ち腐れに•••あ、悟飯さんがいいならなんですが。」
「早速付けていくよ、そうなると、この服じゃなくてもいいよな」
悟飯さんに喜んでもらえてよかった。
「今日は、どうして都に?」
「あ、」
「大きい兄ちゃん、忘れてた•••にいちゃん怒るかな。」
「悟飯さんが怒る?」
「今日は、発表会があるので悟天を連れてきてほしいって言われていたんだ。何時だろう?」
「まだ間に合うかも?」
「だから歩いていたんですか?」
「人が多い場所だから。」
「オレ、車で送りますよ。そのほうが速いし濡れない。」
「わるいな、トランクス。」
「大丈夫です。」
送って手を振って別れて。
あの時の悟飯さんの面影はなかったけど、悟飯さんに会えてよかった。
「オレもマイを迎えに行こうかな。」