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    96noScull

    @96noScull
    まいたけメイン武受けスキーですがかっこいいみっちも好きなのでたけまいになることもあります

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    96noScull

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    はち武?9巻の柄の悪い黒龍組に平和軸のはっかいたちが入ったら?という話。でも夢オチ。かもしれないしそうじゃないかもしれない。うっすらメリバ風味。

    泡沫のきみへ「報告は以上です」
     顔を上げるといかつい男たちがずらりと並んでいた。
     部屋は趣味がよろしくなく、高級なものばかりがごてごてと飾られている。
     どこのヤクザの事務所なんだココ。
     怯えて知った顔がいないか見まわすと、同じく動揺している二人組を発見した。
    「イヌピー!」
     しかし彼の片割れがいち早く動き、黙っていろと目で牽制された。
    「もういい、お前たちはさがれ」
     ココが顎をしゃくると男たちはぞろぞろと部屋の外へ出て行った。
    「さて、これはどういうことなんだ若」
     そんなことは自分が聞きたい。
     たかちゃあん、と泣き声を上げる八戒に、二人は頭を抱えた。

    「確認するが、お前の職業は?」
     ココはスマホを操作しながら二人に尋ねる。すん、と鼻をすする八戒が、
    「モデル…」
    呟くも、今の彼は似つかわしくない風体だ。年齢は二十代のはずだろうにどこか品の悪い、やくざ映画から出てきたようないでたちをしている。
    「オレはバイク屋だ」
    こちらはこちらで短く刈り込んだ白金の髪と精悍な顔立ちが近寄りがたさをかもしていた。
    「ここはなんなんだ? スマホの情報見てもヤバそうなもんしかでてこねぇ」
    見た目の変化はメッシュだけであるものの、身にまとう長袍風の服のせいか胡散臭い占い師に見えるココ。
    「タケミっち…
    タケミっちに連絡入れてみようよ!」
    「お、オレのスマホに連絡先あるぜ」
    「オレのにはない」
    イヌピーが機嫌を損ねている。この時点で気づくべきだったのかもしれない。
    この世界が自分たちの知る世界でないのなら、武道とて同じということに。

    タケミっちに会うならファミレス!と言って聞かない八戒にしぶしぶ従い、事務所から近いファミレスに武道を呼び出した。
    「どうしたんです?
    わざわざこんなところに呼び出して」
    姿を現した武道はボディーガードなのか、人相の悪い眼鏡の青年を伴い黒いパーカー姿で頭をオールバックになでつけていた。
    それでも顔立ちが変わらない。三人が三人ともそれにほっとしていた。
    「ねぇ、なんでも頼んでいいよ!
    今オレお金持ちみたいだしさ」
    へりくだっていた武道の目が剣呑になる。
    「そりゃ資金力じゃあんたらは東卍傘下じゃダントツだし、オレなんか足元にも及ばねぇ。
    だけどこっちだって古参の意地ってもんがあんだよ。
    いい年こいてファミレスなんかに呼び出しやがって…馬鹿にするのも大概にしやがれよ!!」
    足で椅子を蹴倒すと、武道は乱暴に店を出て行った。
    店中の注目を集めてしまい、ココは金を払って店を出ようと立ち上がる、が。
    「うええええダゲミっちにぎらわれだあああああ」
    「泣いてる場合か! イヌピー!
    イヌピーまで静かに涙を流してるだと!?」
    「ココ…あれは本当に花垣なのか…?」
     ココとてあの武道を自分たちの知る武道とは受け止めかねていた。
     吸い込まれそうな青い目はドブのように澱み、全身から立ち上るイライラした空気。口元は引きつり、元の呑気な性格を微塵も感じられない。
     顔がそっくりの双子。そうとしか思えなかった。

     その日のうちに集会があることはあらかじめ知らされていた。
     状況を整理すると、武道を含め自分たちは反社の幹部であること。面子はほぼほぼ東卍であること。黒龍組。自分たちはそう呼ばれている。
    何より。
    「オレ…大寿を殺した…?」
     実の兄を殺し、その地位を奪った外道。東卍の中でも八戒は疎まれているようだった。
    「ゔっえぇ…」
     頭が追いつかず、食事会前だというのに戻してしまった。涙目でげぇげぇ吐く八戒に心配そうな視線を投げつつ、「どうする、ココ」と判断を委ねるイヌピー。
    「全員との顔合わせなら出たほうがいいだろう。のちのちにボロが出る方がヤバいと思う。
    情報収集が必要だ」
     結論から言えば、その日の集会は最初から最後までギスギスしていた。売り言葉に買い言葉で煽ったのはイヌピーとココだったが、顔色の悪い八戒は上の空で目の前のチャーハンをつついていただけだった。
    そうこうしていると食事会は終わり、稀咲に武道たちが引き留められる。
    今の武道はひとりではなく千冬が寄り添っていた。
    武道一人の時より話が通しやすいのではないか。
    そう踏んだココは、稀咲の用事を探る。すると、
    「稀咲さんはユダがあの二人だと踏んでいる。
    恐らく見せしめのためにも今日殺されるだろう」
    いくらか握らせ気を良くした見張りがぺらぺらとしゃべってくれた。
    助けないと。
    八戒は茫然と呟くと、弱弱しさをかなぐり捨てて強面のガードマンたちの静止も聞かずにずんずん進んでいく。だめだ計画を立てないと、と止めるココだったがイヌピーが乗り気である。こうなっては止められない。なるべくフォローに回るしかないだろう。
    懐の銃のグリップを握る。使わずに済むといいが。
    「稀咲ゴラァ!!
    オレのダチに手ぇだすんじゃねー!!」
    バン!と扉を開ければぐったりして椅子に縛り付けられている二人が目に入る。
    眠っている武道と違い、千冬は手ひどく殴られていた。ココは出口を確保し、イヌピーは八戒の後ろを守りながら武道に意識を集中させていた。
    稀咲は驚いていたものの、すぐに皮肉気に笑った。
    「これはこれは。
    一体どういう風の吹きまわしだ? お前とこいつらは関わりがないだろう」
     だから今から、この二人を殺そうがお前たちには関係ない。
     そう言っているのだろう。八戒はここにきて怒髪天を突いた。
    「黒龍は東卍傘下から離脱!!
    下克上じゃゴルァ!!」
     稀咲の顔面を殴りつけ、大音声で宣言したのである。

    「――い、八戒起きろって」
     頭がガンガンする。カーテンの開けられた部屋は酒の匂いが充満していて、尚且つ男臭い。
     酔っ払いのガタイのいい男たちが雑魚寝しているのだ。
     東卍幹部会なんて銘打って、月に一度飲みに行く。今回はドラケンとマイキーの妹エマの結婚発表もあり、佐野家での飲み会になったのだ。
     やっとか!と茶化す面々とうるせー!と照れるドラケン。それを見ながら離れたところで機嫌よさそうに飲むマイキーと、寄り添う武道を見たのは覚えている。
    「タケミっちぃ!!」
     困ったような優しい顔に、思わず抱きつく。
    「おい、どうしたんだよいきなり。
    オレは三ツ谷君じゃねーぞ」
     夢を見た。聖夜決戦で大寿を殺した後の世界。
     自分は黒龍のボスになっていて、イヌピーとココは腹心。だけど今ほど仲いいわけじゃなくて、利用して利用される関係。
     あの世界で、自分は楽しいと思っていたのだろうか。
     ぶるりと身震いする。
     あの未来を変えてくれた、武道はここにいない。
    「もーお前変だぞ?
    ドラケン君と三ツ谷君は仕事に支障があるからって帰っちゃったし。
    オレ仕事午後からだけど酒臭いまんま行くわけにはいかねーからな。
    お前も酔いがさめたら家帰れよ?」
    「うん…ありがとタケミっち」

    『オレが消えた後のオレと仲よくしてやって。
    きっとお前らのこと、大好きになるからさ』
    そう言って消えた未来の武道。しかし消えた世界の記憶は生々しい夢という形で蘇る。
    その記憶を今の武道に話しても、『知らない』のだ。
    未来の武道はあまたの世界線とともに消えた。
    「会いたいよ、ヒーロー」
    誰もがそう、呟くのだ。



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    96noScull

    DONE最近こちらに投稿してなかったなぁと思って。表向きビデオ屋裏でころしややってる記憶なしみっちとそんなみっちを愛しく思うまいきの話が読みたい…とついったでぼやいて悶々考えた末に出来た産物。まちるだ、せいへきゆがむよね…
    マチルダは微笑む「花垣く~ん?
    またDVDの中身が違うと苦情が来たんですが洋画のコーナーは君担当でしたよねぇ~?」
    答えなくてもわかっていると言わんばかりに年下の店長がねっとりした口調で責め立てる。
    愛想笑いしながらすみません、と頭を下げれば「はいまた口だけぇ~」とあてこすられる。
    謝る以外に道がないが、謝らなければ謝らないで「どうしたんですかぁ~その口は飾りですかぁ~考える脳みそないんですかぁ~」と嫌味が倍増すること請け合いである。
    なんでこんなところにいるんだろ。バイトならいくらでもあるのに。
    でもなぜだかここから離れられない。若い店長は使えない年上のバイトなんかさっさとクビにしたいみたいだが。
    いつも店に最後まで残るのは武道だ。DVDの中身のチェックを終えると一番最後に見るものがある。お気に入りの洋画。腕利きの殺し屋がアパートの隣人の少女を汚職警官から庇い、共に過ごしていくうちに絆が芽生えるストーリー。端的に言えばハッピーエンドではない。殺し屋なんて生業である以上、主人公は幸せになるべきではないんだろう。少女に金を遺し、自分は少女の家族の仇を道連れに死ぬ。
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