気長に待てない 『気長に待ってる』
そう言ってクリスマスパーティーに戻るように誘導する土浦くん――梁太郎の腕を思わず掴んでしまう。
「土浦くっ……――梁太郎くん!」
「っ!…香穂、お前……」
私が名前を呼んだことに驚いた梁太郎くんはこっちを振り向く。
「言い逃げなんて、ずるいよ…」
「ずるいったってお前……」
「私が同じ気持ちだって何で思わないの…!?」
「同じ気持ちって、香穂…お前」
まさか私がそんなことを言うと思っていなかったのか梁太郎くんは驚いて、瞬きを繰り返す。
「ずっと一緒にやって来て、梁太郎くんのすごいところや素敵なところを見てきて、梁太郎くんが私の事を特別に感じたと同じように私だってそう感じたんだよ!私は梁太郎くんのことが好きなのっ!」
そう叫ぶように言った言葉にかぁっと梁太郎くんは頬を赤く染める。
「香穂、お前……っ」
言ってやったという気持ちで満足感から胸を張ると優しく梁太郎くんはそっと私を抱きしめた。
「…ほんと、お前ってかっこよすぎるな」
「えっ?」
「俺が弱いせいで言えなかったこと、言っちまうんだから」
悲しいような、泣き出しそうな、嬉しそうなそんな顔を梁太郎くんはさせる。
「…好きだ、香穂」
「私も!」
ぱっと笑顔を返せば同じように笑ってくれて、そのまま手を繋いだままクリスマスパーティーへと向かう。恋をするって、好きな人ができるってこんなに幸せな気持ちになれるものなんだと初めて実感した、冬だった。
-Fin-