L.アグレッション 先日、興味本位で読んだ本にこんなことが書いてあった。
吸血鬼は伝承において、死人が蘇り、生命である血液を啜ることで不死として存在できる怪物である。蘇った人間の心臓は動かず、身体を動かすにもまた血液が必要なのだ。吸血鬼とは、すなわち命を吸い取る存在である、と。
「いや、命が欲しいんじゃない。血が欲しいだけさ。人間の血液は、他の動物と比べて栄養があるからねえ。死んだ身体をうまいこと動かすためには、栄養が必要ってことなのさ」
もっとも、人間の血の方が栄養があるというのは、あくまで吸血鬼にとってはという話だけれどもね。彼はそう言って、私が読んだ本を否定した。
もっとも、血を吸うのはただの生命維持ってだけじゃないときがあるけども。男はそう付け加えてから、そっとチューブを見やる。吊るされた輸血パックのなかに溜まった赤い血。皮膚に刺さる針から自分の赤い血が、チューブを辿って密封パックに入っていくのが見えた。
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