竹鉢:おくうのあい 三郎は濡縁の柱に寄りかかり、じっと地面を睨めつけて、しかめっ面のまま考え耽っている。南側のこの場所には暖かい陽射しが降り注ぎ、穏やかな風が三郎の頬を撫でた。疲労が色濃く残るこの身には柔らかい陽射しが快い。八左ヱ門からここで待っているようにと請われて諾と返してしまったから待っているが、一向に戻ってこない。いっそのこと眠ってしまおうか。けれどどうにも、胸がむかむかとして眠れる気はしない。
脳裏では昨夜の出来事を反芻している。閨でのことだ。行為そのものにも、閨での役割にも不満はない。この身の奥まで八左ヱ門が触れることを許したのは三郎だ。いつもは優しいばかりの八左ヱ門の手が熱を帯びて、三郎の体を開いていく。慈しみを浮かべる瞳が、ぎらぎらと食らいつくような色に染まる。三郎は昨夜の熱を思い出した体を抑えて、首を手の甲で擦る。違う、そうじゃない、ともかくふたりの間にある関係性になんの不満もない。不満があるのは閨をともに過ごした翌日、つまりは今のことだった。
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