四い:指きり 滝夜叉丸はおのれの足元のあたりに視線を落とした。ここには罠が仕掛けられている。喜八郎の作った罠だ。滝夜叉丸と喜八郎はなんやかやで付き合いが長い。ほおっておけばいつまで経っても穴を掘り続ける喜八郎を迎えに行けば、喜八郎の掘った穴を見る。その穴を見続けてきた滝夜叉丸は、掘った穴の形状で罠を作った者が喜八郎か、そうではないか見分けることができるようになってしまった。
さて問題は足元の罠だ。忍術学園の敷地内に作った罠には印をつける必要がある。その印もまた見続けてきた滝夜叉丸には、印ひとつで喜八郎の機嫌を察することができた。喜八郎の作った罠の印には、罠の近くにはない樹々を用いることが多い。単に同じ場所に続けて罠を仕掛けることはないのだから、と明日の穴掘りのために今日の罠の近くにある枝葉を持ち帰ることが多いからだ。だからこの近くにはない葉が落ちていることに気づいて、滝夜叉丸は肩を落とした。葉が縦に地面へと突き刺さっている。これは喜八郎がとても機嫌を損ねているときの印のつけ方だ。
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