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    yukii

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    yukii

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    Stellaの日だそうなので。
    いつか出せたらいいなと思ってるStellaパロの王盗。
    めちゃくちゃ途中なので許せる方のみ。全然帝幻してません😂
    研究者も出てくる予定だけど、まだまだ先のお話😂

    めっちゃ書きかけの王盗 ランタンの薄い灯りが、空洞内の岩肌を柔らかく照らしている。
     まるで若木のような爽やかな温かさを感じる黄土色の壁、炎のゆらめきに人影が映し出されていた。穏やかな間延びした空間で紙を捲る微かな音が、まるで精霊の織りなす木霊のようだ。
     男はどこか夢を見ているかのようなぼんやりする思考で、視線だけを巡らせて辺りを見回すと、影の主に目を留めた。己の一番新しい記憶にある人物、亜麻色の髪の青年だ。岩肌に背を預け、手にした本を真剣な表情で見つめているその人物は、先程月明かりの下で見た時よりも随分と違った印象を受けた。ナイフのように冷たく尖っていた眼差しは、新緑の森の柔らかな木漏れ日を集めたように穏和なエメラルドで、亡霊のように青白く光っていたその肌は、ランタンの赤い光も手伝ってほんのり桃色が宿り健康的に艶めいている。
     不思議と場が安らぐような、柔らかな空気を纏っている青年に思わず見惚れていた男だったが、その強張った身体を起こそうとした時だった。
    「動くな」
     キラリと鈍く光る短剣を、素早く喉元に突きつけられ反射的にピタリと動作を止める。
     男は伺うように翠玉の瞳を真っ直ぐに見据えた。ジリジリと睨み合う眼差しに、先ほど月明かりの下で見た時とは違い、青年の瞳に殺意が籠っていないのを見て取ると、男は腕を上げてナイフを押しのけた。
    「動くなと言っている」
    「身体がこり固まって痛い。解させてくれ」
     刺されたとて、己にはもうどうでもいい。そう思うと、普段ならば緊迫する場面であっても気にならなかった。むしろ、なぜ介抱されているのか不思議なくらいだ。腕を縛るなどもせず、ただ寝かされているだけなのだ。静止しようとしてくる腕を無視して体を起こし、肩を揉んで伸びる。打撲でもしたのだろう、肩の付け根が痛んだ。同時に感じた引き攣れた痛みに自身の右腕を見下ろすと、布が巻かれている。男はふと口角を上げた。いよいよ危害を加えるつもりはないのだろうと思い当たったからだ。それにしても、記憶にないが出血をしているらしい。
     刃物をまるで気にも留めない男の動作に、青年の白い腕が所在なさげに浮遊している。男がそのナイフを鞘にしまうように促すと、彼は舌打ちをしながらも手にした短剣を鞘に収め、胸元に仕舞った。
     綺麗な顔が悔しそうに歪んだのを盗み見て、思わず微笑んでしまった。その緩んだ顔を見られぬよう俯いて息を吐くと、視線を上げて青年を見つめる。そっぽを向いて居たその横顔に問いかける。
    「何故、俺を殺さない?」
    「……殺す方が手間だ」
     チラリと視線を一瞬寄越してボソリと呟いた。
    「ほう。しかし、生かしておいても何の価値もないぞ」
     青年は顔を逸らしたまま答えない。男は挑発するように少しの距離を詰め体を寄せると、彼は驚いたように顔を上げた。
    「ここにも、もう一つ」
     嘲笑いながら胸元のシャツを広げ、革紐に結ばれた宝石を取り出した。コインよりもひとまわり大きなそれは、見事な細工の施されたカメオに、濃い紫色のアメジストが何かの紋章のようにも見える模様に沿って嵌め込まれている。一眼で高価なものだとわかる代物だ。
    「これをやるから、ここについてたものを返してくれないか」
     男はあっさりとそれを首から取り外すと、己の左耳を触りながら片方の手で差し出してきた。
    「は?」
     青年は目を丸くした。
     確かに、男の左耳には飾りがついていた。先ほど拝借したそれは、紺色の髪に混じってイヤリングのように左の耳から垂れ下がっていた。くすんだ黄金色の珠の先にサイコロの宝石、そして先端には彩色鮮やかな羽が重なる飾り。見たことのない奇抜なデザインであった。細かい手仕事ながらも、余り希少価値があるとは思えない印象を受けた。今見せられている胸元の宝石とは違い、その価値が一目瞭然だったからだ。
    「この星のレートが分からないが、俺の星だとこのカメオで五年は食うに困らない価値があったが」
     カメオ越しに睨んでくる青年の瞳が、訝しげに瞬いた。
    「何を考えている」
    「それを言うならお前こそ。俺を生かしてどうしようと言うんだ?」
    「……ただの勘だ。こいつは殺さない方がいいと」
     翠の瞳が、ランタンの灯りを受けて頼りなく揺れた。思い詰めたような表情に憂いが漂っているような気がして、何か抱え、背負うものがあるのだろうかと推測する。その物腰が何故だかとても気にかかる。
    「勘、ね。分からなくもないが……それで良く今まで生きてこれたな。見たところ、生業は盗人か?」
    「……お前に俺の何がわかる」
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