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    seki_shinya2ji

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    seki_shinya2ji

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    北組ネタ
    今日は特別暑かったから飯テロになれば……
    因みに今日は白ジャコの酢漬けでした。旨で馬でした。

    【北組】素麺と鯵の南蛮漬け思った以上に夏は、夜になっても寝苦しいくらい暑い。日中雨が降っても湿気の多い日本の夏は夜まで暑く感じる。西日がよく差し込む台所に居たのは治だ。
    治は料理が好きだ。料理人のように料理ができる訳ではないが、北組の中では台所の責任者である。衛生法を気にすることなく、好きな料理が出来るのは自由で楽しいのだ。いうなれば自由業の人間が極める自由が、料理なのだ。
    毎日料理をしている訳では無くても、この時間は直接的に北にも侑にも関われる時間だ。自分が好きな人は侑、そしてその侑は北が好き。好きという高校生同士の恋愛のようなモノではなく、魔獣を飼い殺しているような気持ちだ。治としては出来損ないの哀玩具が感情を持ってしまって魔獣になっているだけ、と理解している。そのため防波堤として料理があるのだと思っている。料理にはたくさん手順があり、没頭しやすい。アレをあ~してこ~して、とアレコレ考えている間に時間は過ぎてモノは完成する。そして完成したモノでみんなハッピー。怠惰を極めた料理で満足感を覚えるくらい、自分は駄目な人間になってしまったんだ、と諦めるのだ。
    侑を愛する事を諦めるつもりは毛頭ない。侑の手で殺されることが悲願であり、最大の復讐だ。熱されて陽炎が沸き立つアスファルトが、夜になっても冷めにくいように。しかし北を恨むことなんてない。何より愛する侑のことを掬ってくれた人間だ。死ぬまでは奉公を続ける。死ぬまでは、だが。しかしあの男、飄々としてヒョロヒョロであるにも関わらず死にそうにもない。マトモで良い人から死んでいく、という迷信は本当らしい。
    「よし」
    治は全ての野菜を洗い終えた。北からのオーダーは簡単だ。「さっぱりしたもの」。夏にバテているらしい。猛烈な暑さに根負けしたらしい彼は、少しシャープになった顎と目の下の隈を晒して生気の無い声でそう一言を残して自室に籠ってしまった。あの部屋は窓が北向きにある。ただそれも気休め程度。先に帰ってきている別邸番の侑が部屋の空気を入れ替えてクーラーをいれて待っている。あの侑も暑さには随分堪えていた様子だった。そんな二人の表情を見ていればメニューは言われなくてもサッパリしたものになる。
    目の前には大量の野菜たち、そしてレモンやら梅やら。そして冷蔵庫には小鯵が腹を割かれて待っている。
    治が気合を入れるのも当然。夏の台所は戦場である。


    まず、素麺はすぐに茹でる事ができる。加えて夏だからといって体を冷やし過ぎてもいけない。だからこれは後回し。まずは冷蔵庫にて出番を待っている鯵に合わせる野菜たちをカットすることにする。
    治が手に取ったのはピーマンと赤色黄色のパプリカ2種、紫玉ねぎ、ニンジン、豆苗。豆苗は根っこからカットして苗部分は水に漬けておく。後日勝手に芽が生えてくるので、出てきた芽をカットして味噌汁に入れる。玉ねぎは薄くスライスして水にさらす。辛味が消えて食べやすくなる。ピーマンはトップ部分を親指で押してヘタとタネをごっそり取る。切り方は細切り。幅は豆苗まではいかなくても細切りにすると、他の野菜と形が揃って食べやすい。だからニンジンも同じく細切りだ。ニンジンに関しては生で食べるため、細くないと馬の気分になってしまう。この料理は野菜をたっぷり使う。たくさん食べても害はないのが野菜だ。加えて体が程よく冷えて丁度いい。そんな気がしている。
    そして次は小鯵。脚の早い魚だから鯵は既に内臓を取られている。だから治が始めたのはセイゴを取ることだ。アレがあると口に残ってしまって食べにくい。ゴリゴリと音を立ててセイゴをとっていく。これが意外と癖になる。全部で9匹購入した鯵は、店のジジイのオマケで12匹になってしまった。だから数匹は作り置きになるだろう。その全ての両面にあるセイゴを取る。魚を両断するための包丁は骨を断ち切れるように出来ているため、間違って指に当たってしまえば最悪絆創膏では済まない。しかも野菜を切るのとは力の使い方が全く違う。加えて魚は素手で触れば触る程痛んでいく。だから慎重に、そしてひと思いに。額から頬にかけて汗が一筋流れたのを感じたので、治は捲し上げた袖で拭いた。
    全部で24個の鯵のセイゴを確保した治はその鯵を軽く水洗いしてキッチンペーパーで水気を拭いた。これはゴシゴシと拭くのではなく、キッチンペーパーの上に魚を乗せて、その身の上に新しいキッチンペーパーを覆いかぶせるようにする。その間に片栗粉の準備をする。鯵に衣を薄く着せるためだ。「薄く」の程度は人それぞれ。治は衣があればあるほど嬉しいため、他人から「厚い」と言われても薄く感じる事がある。だが、今回はさっぱりしたモノを所望されている以上気持ち以上の薄さである必要がある。使用したあと余ってしまうと少しだけ処理が困るという建前も考慮して片栗粉は少しだけ振りかけるようにする。最近は専用ポットに入った片栗粉があり、大変まぶしやすくなっているように思う。しかも袋口が汚れないのは衛生的に良い。パンケーキ症候群というものを風俗嬢から聞いたことがある。

    治は割と人当たりがいいそうで、主観を正しく的確持ち込む性格らしく嬢からの人気がある。「隣歩くだけなら侑、話の席にいてもらうなら治」と言われているらしい。因みにこれには続きがあり、「インスタを映えされるならスナくん、親に紹介するなら銀くん、ペットにするなら理石くん」とある。そして「オールパーフェクトは大耳、間違いない箔をつけるならアラン、買い物に付き合ってもらうなら赤木」とも言われている。北は「口にするだけ怖いのでノーコメント」で落ち着く。そんな治は嬢の意見をしっかり聞くことができる、所謂『聞き上手』らしい。「侑は黙ってついてくるだけでいい。口開かなくていい。スナくんは違う。一緒に被写体になってほしい。侑は違う」という言われ様である。そんな中治はそうでもないらしい。「聞き上手で理性的な反応があるから信頼しとる。でも親には紹介できへん。主夫になりそうやから。せやから親に紹介するなら銀くん。赤木さん?超えれるやろ」と、良くお喋りが好きな嬢が多いのだ。そんな彼女たちは、良く治と料理の話をする。
    嬢になる人間のバックグラウンドは様々ある。単純に金を儲けたいといっても、その背景にあるものは様々だ。学費のため、奨学金のため、借金のため、子供のため、綺麗になるため、誰かに渡すため、生活を豊かにするため。簡単に上げただけでこれだけある。珍しい経験を得たいため、や、愛されたいため、みたいな人もいるが、何にせよ、嬢になること自体が否定されることがあってはならない。彼女たちも普通に生活しているのだから。だからこそ、三大欲求について話をすることが多い。食欲は割と彼女たちの中では話題にあがり易い。「誰々さんと行ったアフター、美味しかった」「昨日何も食べてない」「コレ食べたら肌の調子がいい」みたいな。境遇が似ているのに妙に興味がない分、話が出来るらしい。北組のシマのキャバクラのような場所では愛想が良いキャストが多い。そんな彼女たちは、治を安定した話し相手とする対価として料理の話をし始めたのだ。
    彼女たちも、自分たちの美貌や知識量向上のために、何にでもチャレンジする。夜職といわれる彼女たちでも、料理はする。毎日外食なんてしていたら肌の調子も悪くなってしまう。人一倍見た目を気にするタイプの人間が多い世界だからか、毎日アホみたいに酒を飲み明かす訳にはいかない。その美しいプロポーションのためにサラダだけを食べている訳には行かないのが人間の体だ。そのために、日中家にいる時は料理を作る人間は多い。
    だから治は、料理の話を風俗嬢から聞く。今日のレシピも、嬢から聞いたものだ。「サ~ムく~ん、お素麺好きィ?」から始まった。今回の素麺は彼女からの譲りものだったりする。その時に「こうやったら、お素麺美味しいんやって~」といって話をされた。そこから更に「せや、この南蛮漬けも美味しかったで~ユーアールエル送るな~」と言って、レシピの情報を追加でもらえた。人として終わっているような嬢がいない訳ではないが、捨てたモノでもないのが、この嬢たちだ。

    そんな彼女たちの情報によると「酢キャベツが体にええで」と「小鯵の南蛮漬けは夏バテにええで」と「素麺は放置がいい」ということだ。治は今回は小鯵と素麺を実施する予定だ。
    もう薄く白粉をつけられた鯵の準備は完了している。後は鯵を油の中に入れるだけだ。治はいよいよコンロに火を入れて、油を温める段階に入った。ここから時間が多少かかるので、南蛮漬けに欠かせないタレを作ることにした。
    「お、治やないか」
    背後から声を掛けてきたのは赤木だ。横には理石がいる。台所の暖簾をくぐる様はまるで居酒屋に入る中年男性のようだ。「お疲れ様です!」と大きな理石の挨拶に治の体感温度がますます上がる。油を熱しているだけでも恐ろしく気温が上がっているというのに、いつ見ても元気と言うものも凄いと感じる。
    「これ何すか」
    「鯵やな。油で揚げたら骨ごと食える」
    「へー……」
    「美味そうやな、この野菜全部漬けるんか」
    「ハイ」
    「ほえ~美味そう」
    一通り食材を舐めまわすように見た彼らは冷蔵庫の中を漁り始めた。野菜室には、別邸管理を任されている人間が勝手に飲むことが出来るペットボトル飲料が常備されている。それを二人は貰いにきたようだ。因みに冷凍庫には治が常備しているカット野菜や肉は冷凍庫に入っているが、ここを開ける事が出来るのは北と治だけだ。アイスは入っていないため、侑も開けたがらない。それくらい氷と野菜、肉の山だ。
    ピピッと鳴ったのはSIセンサーコンロだ。ひと昔前のもので、北から新調の打診がある代物。だが、まだ元気にセンサーが反応しているためひとまず保留となっている。
    「油跳ねますんで、ちょっと離れとってくださいね」
    「ほーい。頑張れよ」
    「すんませんお先に失礼致します!」
    赤木はこれから事務所番、理石はここから2日ほど休みだ。後腐れを感じないような挨拶を聞き届けた治は、小鯵を油の中に入れた。
    熱した油に冷たい水分を投入すると激しく爆ぜる。さながら爆弾である。
    台所は戦場だ、と言った有名な料理人の名前は思い出せないが、この光景を見ていると否が応でも感じられる。そしてこの光景を見ていると人倫から逸脱した過去の光景が過ぎるというものだ。しかし過ぎっただけで特に感情は浮かんでこない。考えていることは、ここから南蛮漬けのタレを作ろう、と手順を思い出しているところだ。
    料理は、考えを料理関係の思考回路だけにフォーカスして居続けることができる。この思考の仕方がとても肩の力が抜けるのだ。特に何かを考えている訳でもなく、感覚で調味料を混ぜていく。お酢、醤油、砂糖、水。本来は分量があるのだろうが、野菜の水分を少し考慮した程度の適量をボウルに入れていった。小指にタレを突っ込んでみて味を見る。あとから追加するならお酢と醤油、そして水だろう、と予測した治は、切り刻んで水を切っていた野菜もタレに突っ込んだ。軽く和えて野菜全体にタレが回った頃、油の海を泳ぐ鯵を見た。少しだけ低温の油ではすぐに揚げ色がつくことはない。治はそれを確認して、野菜だけ皿に盛った。揚げた熱い魚はタレにいれるとすぐに味が馴染むが、生野菜は中々味が馴染まない。だから鯵より先にタレに漬け込んでおく必要があったのだ。
    鯵に少し色がついたのを確認すると鯵をひっくり返す。それからおなじ時間くらい油の中を泳がせて。
    ここで治はちょっと思い出した事があった。トリガーワードは「泳がせる」だ。
    今日の昼間、北組のシマにあるキャバクラの店長と話をした。以前から売上金をネコババしている人間がいる気がする、と相談を受けていた。売上金、というか、客から売上金以外の金を店舗で受け取っている、というタレコミだ。シマのキャバクラでは、基本的に店内での個人的な金のやり取りを禁止している。これは様々な理由があるのだが、一番は「公私を混同させないため」である。だらしない金の繋がりは仕事のパフォーマンスやモチベーションを落とす原因になる。まるで子供のお小遣いのように報酬を渡されると金の価値も落ちてしまう。そういう精神面で引き締めを行うために禁止事項としている。
    規則が破られてしまうと他への示しがつかなくなってしまい、足並みが揃わなくなってしまう。現状がタレコミという状態なのがまずいと考えた治と侑が、二人揃って聞き取りを行ったのが今日のお昼頃だ。
    結果としては、そのキャバ嬢が黒服と出来ているのではないか、という前情報を鑑みて、もう少しこの二人を泳がせることにした。加えてこの嬢が他の黒服や客と繋がっている可能性があるため、もう少し「泳がせる」ことになった。これに関して報告をしなければならない、と治は悶々と考え込んでしまった。別に治が悪いことをした訳ではないが、いい話ではない。思わず「金やかただの紙やのにな」と魚に向かって呟いた。
    その時になって、治は小鯵がほんのり狐色になってぷかぷかと浮かんでいた事に気が付いた。治は慌てることなく、その狐のような魚を摘まみ上げて油を切るためにバットにあげた。そのまま軽く油を切ったら野菜とタレが入っているボウルに入れてタレを浸み込ませる。
    この時更に気が付いたことは、夕焼けだ。もうすぐ夜になるはずなのに、夕焼けは温度があって、油作業の暑さに追い打ちをかけていた。暑さを自覚した途端、額からポロ、フツ、と汗が浮かんでくる。鯵はあと二回に分けて油の中を泳がせる。 既に暑さに根負けしそうになっていた。
    三回目の遊泳をし始めた時、ここで治は「あ」と呟いて、忘れ物に気が付いた。そろそろ素麺の準備を始める頃あい。すぐに茹で上がるとしても、大きな鍋で水を沸騰させるのにある程度時間がかかる。油鍋の様子はひとまず放置で良いため、この家で二番目に大きな鍋に水を張った。それをコンロにかける。ますます温度が上がっていく台所。本当に戦場のように暑くなってきた。
    素麺は袋の通りの方法ではなく少しだけ特徴的な茹で方をする。そのために必要なものがある。そしてそれを南蛮漬けにも活用できるのではないか、と思いついた。
    冷蔵庫の扉を開けるとかなり手前に置かれていたそれ。梅干しである。梅干しは素麺を茹でる時に一緒に鍋に入れると素麺のコシが生まれる。つまり旨くなる。そして南蛮漬けにはアクセントとして解して使用しようと考えた。素麺に使うのはひと粒、南蛮漬けに使うのは解したひと粒。パックに残っているのは4粒。明日の朝に食べる量も残っているため2粒使うことにした。
    鯵が油で揚がっている音をBGMに梅を解すニチニチした音が聞こえる。別に何かを想像した訳ではないのに、梅干しの香りだけで涎が零れそうになる。酸っぱい匂いは暑い夏には空腹を刺激してくれるのを身をもって体験する。夏を感じたことで更に気温が上がっていた気温が少しだけ涼んだ気がした。

    三度目の鯵の遊泳の終わりが見え始めた頃、素麺を茹でる鍋が沸騰し始めていた。治はとりあえず鍋が載っているコンロの火を弱めて、南蛮漬けに関する作業を進めることにした。鯵を全て拾って事前に混ぜておいたタレに漬け込む。野菜と一緒に絡めてやってから、解した梅肉を上に載せて冷蔵庫に入れてしまうことにした。ここからは食事をする前まで、タレと野菜の旨味が浸み込むのを待つ時間になる。
    ここから素麺の作業だ。
    素麺を茹でる鍋は既に沸騰しているため、もう素麺を茹でるだけだ。束を7つ解いて鍋の中で揺らした。そしてまた沸騰した鍋を確認した治はキッチンタイマーを5分に設定してコンロの火を止めた。
    よく言われるのが「素麺は、入れて再沸騰したら火を止めて5分放置する」というのが美味さの秘訣ということだ。コシが戻り、時間が経っても麺がくっつきにくくなるのだ。治はこの案を見た時「吹き零れんでええな」だった。そして普通より時間が伸びるから作業が出来る。
    治は鍋を放置して冷蔵庫から生姜とミョウガを取り出した。生姜はすり下ろすために一部を切り落として皮を取る。すり下ろすのは簡単だ。ゴシゴシしたらいいだけ。ミョウガだが、侑は嫌い、治は嫌いではないが大量摂取することはなく楽しむ程度、北はミョウガをそのまま丸かじりする勢いで摂取する。因みにをいうと、侑があの香りを嫌がる顔を見ながら食べるのが一番好きらしい。だから北のためだけにミョウガの千切りを準備するのだ。あとはネギと白ごま。ネギは冷凍ものを取り出して解しておけばすぐに食べられるし、白ゴマは既にすりごまになっているモノを皿に持っておけば必要な人間から取っていく。
    「ヨッと」
    台所の上の棚から大きな木桶を取り出した。思わず声が出たのは、重量が少しあったからだ。治はそこに薄く水を張った。そのタイミングでキッチンタイマーが鳴る。一旦木桶を脇の机に置いてけたたましいキッチンタイマーを止めた。鍋を抱えて流しにセットしていたザルに一度揚げる。鍋にはまだ素麺は残っている。
    治はとりあえず次の素麺のために、それに水を当てて深さがあるガラス皿に乗せた。空いたザルにもう一度。これを三回繰り返して残った素麺を木桶に移した。木桶の分は、今別邸番をしている連中のためのもの、ガラス皿は侑と北、そして治の分だ。

    完成した夜ご飯を北が食べるのはもう少し先。時刻は5:30を少し過ぎたころ。
    まずは別邸番の食事をさせて、北が飯を食べるのはいつも7:00頃。夜はいつもこうだ。

    「お前ら~順番に飯や~」

    治は人が来る前に5つのお椀を用意して、氷とつゆを入れて、足音が近づくのを待った。
    つまり鯵の南蛮漬けは、2人のための特別メニューだ。
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    seki_shinya2ji

    DONE北組ネタ
    今日は特別暑かったから飯テロになれば……
    因みに今日は白ジャコの酢漬けでした。旨で馬でした。
    【北組】素麺と鯵の南蛮漬け思った以上に夏は、夜になっても寝苦しいくらい暑い。日中雨が降っても湿気の多い日本の夏は夜まで暑く感じる。西日がよく差し込む台所に居たのは治だ。
    治は料理が好きだ。料理人のように料理ができる訳ではないが、北組の中では台所の責任者である。衛生法を気にすることなく、好きな料理が出来るのは自由で楽しいのだ。いうなれば自由業の人間が極める自由が、料理なのだ。
    毎日料理をしている訳では無くても、この時間は直接的に北にも侑にも関われる時間だ。自分が好きな人は侑、そしてその侑は北が好き。好きという高校生同士の恋愛のようなモノではなく、魔獣を飼い殺しているような気持ちだ。治としては出来損ないの哀玩具が感情を持ってしまって魔獣になっているだけ、と理解している。そのため防波堤として料理があるのだと思っている。料理にはたくさん手順があり、没頭しやすい。アレをあ~してこ~して、とアレコレ考えている間に時間は過ぎてモノは完成する。そして完成したモノでみんなハッピー。怠惰を極めた料理で満足感を覚えるくらい、自分は駄目な人間になってしまったんだ、と諦めるのだ。
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