宝石パロサン武(ボツ)しあわせが壊れる音は酷く高くて単調なのだと、目の前の宝石は語った。
「三途」
「ハイ」
日光を照り返してプリズムを放つ頭を見ながら、三途は姿勢を整えた。
「お前、博物誌に興味ある?」
「はくぶつし」
はた、と問われた言葉をそのまま鸚鵡返しにすると、自分より僅か低い位置でにっこり笑うその石が「ウン」と頷いた。
「ちょうど、探してたんだよ。席が一個空いたから……」
「席、というのは」
「こないだ、あったろ、新型の月人の初観測日……」
そこまで聞かされて、ああ、と三途は数日前のことを思い返した。
確かにあった、そんなようなことが。
あの日は、ひとり、連れていかれたやつが──。
「つまり、穴埋め?」
「せっかく言い方選んだのに」
「はァ、でも俺、やりたかないですよ、ンなこと。観察日記でしょう、要は。硬度が低レベルの奴がやるような。」
8530