書きかけ「カイン、誕生日おめでとう」
アダムがそう言って微笑み、ワインの栓を開けた。
上質らしい白ワインをグラスに注いでカインの目の前に滑らせる。
「……ワタシ、まだ18だから……」
「何言ってるの、ここはロシアだよ。誰も咎めたりなんてしないよ」
「なら、えっと……一杯だけ貰おうかな」
グラスを受け取ってそっと合わせる。キンとガラスのぶつかる軽い音がした。華やかな香りを醸すワインを一口含むと、微かな苦味と共にフルーツのような甘味が広がった。
「ああ、美味しいね」
「そう?良かった」
「これどうしたんだい?買いに行ったの?」
「……ううん、家まで取り寄せたの」
アダムが少し気まずそうに目を伏せる。引きこもりがちだった彼は、ここ数ヶ月になってやっと近場への外出ができるようになった。まだ他人の視線が怖いらしくフード付きの服やサングラスが手放せないようだが、玄関を出ることすら出来ないと泣いて拒否していた時期と比べれば随分進歩しただろう。
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