手大きな手だった。
片手で俺の両手を握っても指が余るくらい大きな手だった。
俺はその手が大好きで、出かける時も寝る時もずっと手を繋いでもらっていた。
でも俺はその手を失った。
幼い俺が抵抗しても無駄で、大好きだった手は俺の手を振り払った。
小さな手だった。
俺が少し力を入れれば潰してしまえそうなくらい、小さな手だった。
俺はその手が愛おしくて、手を繋いでとねだってくるその子が愛おしくてたまらなかった。
でも俺はその子を捨てた。
小さな手で必死に俺にしがみつく手を振り払った。
大きな手は大きなままだった。
小さな手は大きな手になった。
大好きが愛してるに変わった。
愛おしいが恐ろしいに変わった。
振り払う手は上から押さえつけた。
しがみつく手はもう振り払えなかった。