Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    緒々葉

    @aojiso_up
    過去絵とか供養とか

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💙 💜 👏 😊
    POIPOI 47

    緒々葉

    ☆quiet follow

    無配片想いペーパーのトキヤside一部を載せておきます。
    自家通販に残部を置いておくつもりですので、参考までにどうぞ!

     私は、聖川さんに好意を抱いている。それも、歴とした恋愛対象として、だ。
     始まり、きっかけなんてものは、ないに等しい。自覚もなかった頃を含めれば、もう遠い記憶の彼方だ。
     元より趣味や空気感が合うということもあり、グループの中でも私たちは良く話をする方だった。彼の持つ穏やかで生真面目な人柄は一緒に過ごしていて気分が安らぎ、友として語らう時間はいつも心地好かった。
     しかしながら年月が経つにつれ、いつしか聖川さんと現場で顔を合わせる瞬間をやけに嬉しく感じることに気がついた。気心知れた声音で名を呼ばれ、優しさを向けてもらうたび、胸の奥がわけもなく脈打つ。ああ、これは特別な情だ。友愛とは違う。そう腑に落ちたと同時に、悲哀で満ちるこころ。
     よりによって、何故? 相手は同アイドルグループのメンバー、更には同性だ。初めから、進展を望むことすら無意味。脳内でいくら訴えようと、生まれてしまった恋の熱は消えるどころか煌々と灯るばかりだった。こんな感情は、誰の得にもならない。私の内にだけこっそりとしまい込んでおくのなら赦されるだろうかと、邪念の置き場を探った。
     そんな中でも、相変わらず聖川さんとは予定を合わせて出掛けていた。美術館や古書店街、情緒ある食事処。話題が尽きず、和やかに笑みを交わすこのひとときが永遠に続けば良いのに。腹の奥底では、そんな短絡的な願望を飼い続けていた。私と二人きりで談笑する時の彼は、普段見ている彼よりも少しだけ表情豊かで、気を許されているように思えて勝手に自惚れてしまう。ああ、私はこの人とずっと共に居たいと、甘い切なさに染まる。
     性懲りもなく浅はかな錯覚に浸る私を、そのたびにもうひとりの私が戒めにかかる。彼の思いやりに、友人以上の情愛を含むことは決してない。天地がひっくり返っても、彼と恋を成就させる未来など得られないのだからと。聖川さんとて、同性との恋愛など想定しているはずがない。この利己的な恋慕を相手にまで求めて、みだりに困惑させて遠ざかってしまうことが、怖い。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works