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    kokutou369

    @kokutou369
    みかんば、壁打ちよう。
    アイコンは禾さんに描いていただいたイラストです。くわしくは、扶養になりたい山姥切国広を読んでね!(ダイマ)

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    kokutou369

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    去年、定期的に書いてたんですが力尽きたものです。
    続きを忘れてしまったんですが、それぞれのお話は可愛かったので供養

    #みかんば
    mandarinPlant

    百夜通い刀剣男士には本丸別個体差と言うものが存在する。元は一振の刀の分霊でも、顕現する審神者により違いが生じてるのだ。それは、その刀を顕現する審神者の『心』やその刀に対する『思い』に左右される。
    例えばこんな事が過去にあったと聞く。その本丸の山姥切国広は『山姥の呪い』にかかりとても醜い姿で顕現したらしい。その原因は顕現した審神者が『山姥切国広こそが山姥を切った刀だ』と思っていたからだ。
    史実はどうあれ、その『思い』を込められ顕現した山姥切国広は『山姥の呪い』にかかった状態で顕現してしまったらしい。

    そんな事がおきるのだから、これは仕方ない事なのかもしれないとこの本丸の山姥切国広は思った。



    その晩、山姥切国広が近侍を務め審神者が鍛刀した刀は三日月宗近である。天下五剣が一振、名刀中の名刀であり、顕現も難いその刀をこの本丸の審神者は待ち焦がれていた。
    待ち焦がれ過ぎたのがいけなかったのか、三日月宗近関連の書物を読んだ審神者は三日月宗近が不殺の刀だという物語を己の中に取り込んでしまったらしい。
    そうして顕現された三日月宗近は



    「だからって、何故俺があいつの相手をしなければならいんだ!?」
    顕現した三日月宗近は問題を抱えている。
    その晩、へし切り長谷部が国広の部屋を訪ねて来ていた。
    季節は春と夏の中間、暖かくなり始めたこの季節、夜になるとジー…と螻蛄が土の中から鳴き声を上げている。
    「三日月はお前が近侍の時に顕現させた刀だろ」
    確かにそうだが、この本丸の近侍にそれ程の意味も責任もない。他の本丸は知らないが、この本丸で近侍は持ち回りで行うものであり、それこそ内番と変わらない。
    「あの時たまたま俺が近侍だった時に、たまたま三日月宗近が顕現しただけだ!俺には関係ない!」
    審神者に忠誠心が無いわけではないが、自分は別に初期刀でもない。長谷部程、何でも言うことを聞くかと言えば「何でも」ではない。
    「これは主命だ」
    と、長谷部に言われたところでそれは横暴過ぎるだろう。だって

    「あんた主命なら男に尻を貸すのか?」

    流石の長谷部も言葉に詰まっていたが震えながら『主命とあらば、尻のひとつやふたつ』と言っている。尻は一つしか無いだろうと国広は冷めた感情で思った。思ったが面倒なので口にはしないでおく。
    それは優しさと言うよりはめんどくささからだ。
    不殺の刀として顕現した三日月宗近は熱を嫌い、肉を嫌い、血を嫌った。
    それではとても戦になど出れはしない。そこで審神者は言ったのだ。
    『一回、誰かと契って熱になれたらいいんじゃない?誰か三日月の筆下ろししてあげてよ』
    そして、白羽の矢が立ったのが国広だった。
    ふざけてる。
    ふざけすぎている。
    (俺に人権は無いのか…いや、人では無いから無いのか?)
    だからってこんな理不尽な提案に乗れるはずがない。いくら主命でもだ。
    「ただそう言う行為をするだけなら万屋街の外れに花街があるだろう」
    万屋街の外れにある花街には遊女の櫛や簪、着物や帯などの付喪神が遊女としてそこで働いているのだ。自分が相手をするより余程慣れているだろう。そもそもなぜ、

    「俺はそなたが良いのだ!山姥切国広!」

    スパーン!と勢いよく部屋の障子が開く。
    「なっ!?あ!?えぇっ!?」
    必死の形相で、その刀は其処にいた。
    「俺が触れられる温もりは、山姥切国広!そなたしかおらぬ!」
    急展開についていけずに混乱している国広の様子を気にする事もなく、そう言い放つと、それは大股で足早に国広に近づき、
    「ひぁぁ??!!」
    ぎゅゅっと国広を抱きしめたのだった。
    「頼む!山姥切国広!」
    一体何が起こっているのか、今、自分を抱きしめているのは
    天下五剣でその中で一番美しいとされていて、名刀中の名刀

    「三日月宗近……?」





    三日月宗近が自分しか触れられないと言うならいよいよ国広に拒否権など無くなってしまう。だって、自分のせいで名刀をなまくらにする訳にはいかない。だったらさっさと済ませてしまうに限る。確かに、この肉体は審神者に与えられた仮初の器でしか無い。貞操なんてものを大切にしても仕方ないし、これも仕事だと思えば
    (割り切れないが)
    割り切れ無いが、割り切るしかないだろう。
    しかし直ぐに「でははじめよう」とは行かず、昨晩はその役割を承知して帰ってもらい出直してくれるように頼んだ。
    そして、今日一日、国広は書物で閨事を調べ、風呂に入って身体を清め、今、この場にいるのだ。
    普段は汚れているぐらいが丁度いいと言っている自分が、いつも被っている襤褸布さえ身に付けずにいる。

    (何をやっているんだろう)

    布団を敷いて、寝間着の浴衣姿で国広は三日月が訪ねてくるのを待っている。
    昨日は螻蛄が鳴いていた気がするが、今日は聞こえない。何故ならさっきから自分の心臓の音の方が大きく聞こえてしまっているからだ。
    許されるなら逃げ出してしまいたい。この肉体は仮初の器に過ぎない。貞操なんて大切にする意味なんてない。そう自分に言い聞かせてはいるものの、正直怖かった。
    国広だって、そんな行為はした事がないのだ。花街があるのは知っていたが、別に性的な事に興味なんて無い。だからこれから行う事は未知の行為。分からない事、知らない事をするのはやはり怖い。
    逃げてしまおうか?なんて考えが一瞬過ぎった時だった。

    「忍んで参った」

    部屋の外、廊下に続く障子を挟んでそう声がした。
    国広の喉は緊張でカラカラに乾いている。
    「入れ」
    なんとか唾液を飲み込んで、それだけいうのが精一杯だった。
    国広の返事を聞いてから、障子は滑らかに滑って開けられる。そして、約束通りそこには三日月宗近がいた。

    「失礼する」

    綺麗な所作で三日月は国広の部屋に入る。その姿は戦装束のままだ。

    「あんた、その格好できたのか?」

    青い狩衣、おそらく絹だろう美しい光沢のあるその布、脱がせたらシワにならないようにしないといけないなんて国広は頭の片隅で考えたのは、現実逃避かもしれない。
    「やはり正装でなければなるまい。それは通うものの礼儀であろう?」
    そういうものだろうか
    「何でもいい。さっさと済ませてしまおう」
    ふたりきりの空間が耐え難かった。国広は何でもないふりを精一杯して、三日月に背を向けると己の帯にてをかけて解く。そして肩からするりと、寝間着を脱ごうとした瞬間だ

    「その事なのだが!」

    背後から、まるで国広の動きを静止するかのように声をかけられた。
    「俺達はまだ、互いの事を何も知らん。何も知らん相手を俺は抱く事は出来ないし、そなたも嫌であろう?」
    何をこの刀は言っているのか
    「俺は、別に」
    意図がわからないけれど、国広は完結に答える。別にどうにも思ってない。別に何ともない。それは三日月に言った言葉の筈なのに、自分自身にも言い聞かせていた。
    「百夜、俺はそなたの元を通う。その百夜の間に互いの事を知り合おう……一先ず今夜は」
    途切れた言葉の先が気になり、振り返ると、三日月の右手が国広に盃を差し出している。
    左手には一升瓶。
    「酒でも酌み交わそうではないか」
    美しい顔がへらりと笑う。千年超えの爺を自称する癖に、その顔は少し幼くさえ見えた。
    思わず肩の力が抜けてしまう。さっきまで緊張していた反動か、なんだか妙に面白くなってしまって国広は思わず声を出して笑っていた。





    「成る程、流石に平安に産まれた御仁は考え方が風流だ」
    と関心したのはその日、国広と厨当番に入った歌仙兼定だった。
    歌仙はこの本丸の初期刀で主に最も信頼されている刀である。その刀に「三日月宗近の事はどうなったんだい?」と聞かれたら正直に答えるしかないだろう。
    「そもそも僕はそんな品の無い事をさせるのは反対していたんだけどね。百夜通いを三日月宗近から提案してきたなら良かったじゃないか。もしかしたら、百夜行く前に三日月宗近も変わるかもしれないし」
    歌仙は夕食の煮物を手早く作りながら上機嫌だった。国広に尋ねて来た時は眉間にシワを寄せて難しい顔をしていたのに。
    「ももよかよい…と言うのか?」
    国広は白米を研ぎながらふと歌仙の言葉の中に聞き慣れない言葉があった事に気がつく。
    「そうだよ。小野小町の伝説のひとつさ……創作たけどね」
    小野小町に熱心に求愛する深草少将に小町があきらめさせようと「私のもとへ百夜通ったなら、あなたの意のままになろう」と告げ、それを間に受けた男は九九夜、小町の元へ足を運ぶも百夜目の雪の夜に絶命してしまうと言うものらしい。
    それを聞いて国広はゾッとした。
    「お、俺は小野小町ではないし、三日月も深草少将ではない!」
    だから、そんな
    「分かっているよ。君は君だし三日月宗近は三日月宗近だ。ついでに今から百日目は雪が降る季節でも無いから安心するといい」
    歌仙にそう言われて、自分が一体何に恐怖していたのか自覚する。
    単なる作り話だと言うのに、自分達がそれを体現しているのかもしれないと思うと怖くて仕方なくなくなった。


    その日の夜、昨夜のように正装して三日月は再び国広の部屋を訪れる。三日月が正装なら、こちらもそうしなければと、国広も戦装束で三日月を迎え入れた。
    最も、美しい三日月の戦装束とは違い、国広の戦装束は汚れたり穴が空いたりしているが、あとは内番着ぐらいしか持っていないから仕方ない。
    三日月はやはり酒と盃を持参していて、今夜も飲むのだろうかと国広も簡単な酒のつまみを用意しておいた。
    「無駄にならなくて良かった」
    そう言って部屋に用意した膳を見せると三日月な驚いた顔をした後に嬉しそうに笑う。
    膳を挟みふたりで酒を酌み交わす。
    つまみには歌仙の漬物と夕食の煮物の残りにほうれん草の胡麻和え、これだけは国広が部屋に来る前に作った。
    「百夜通いの話を歌仙に聞いたんだが深草少将は百夜通えずに息絶えたと」
    国広はずっと気になっていた事を思い切って聞いてみる事にする。
    「なんだ、俺の心配してくれるのか?」
    二日目にして分かった事だが、三日月宗近は良く笑う。子供のように無邪気な時もあれば、さっきみたいに嬉しそうな笑顔は見ている此方も嬉しくなる。今は口の端を吊り上げて、悪戯っぽい笑みを浮かべている。
    「別に、心配なんて」
    おそらく国広がどんな反応をするか面白がっているのだ。
    少し悔しくなって国広は一気に酒を煽り喉に流し込む。極上な酒だろう口当たりよく甘口で飲みやすいそれをそんな風に味わう事なく飲み込んでしまった事に少し罪悪感を覚える。胃に落ちた酒はそんな国広を責めるように喉で、腹で熱を放っているようだった。
    「小町は通う事は許しても会う事は許してはくれなかった。深草少将が来ても顔も見れなければ声もかけられぬ。それに比べて俺はどうだ?そなたとこうして酒を飲めている。俺は果報者だな」
    また三日月が笑う。細めた瞳の奥、美しい三日月が輝いて見えている。酒のせいかその頬は少し赤みがさしていて、
    (そんな顔をされると勘違いしてしまいそうだ)
    まるで愛しいものでも見るかのような笑みだと思った。
    三日月の百夜通いは『必要』だからするに過ぎない。そうしなければ自分が刀剣男士として使い物にならないからするのだ。
    百夜目に国広を抱く事は三日月にとって手段であり目的ではない。
    「あかつきの 榻の端書き 百夜書き」
    ぽつりと溢された言葉は和歌だろうか。国広は訳が分からず小首を傾げていると三日月はクスクスと笑い出して酒を差し出してくる。
    「さぁ、あかつきの君も飲め」
    「だ、誰があかつきの君だ!」
    有難く酌はしてもらうが其処は訂正しておかないといけない。
    「おれが『月』ならばその対面にいるのは『太陽』だろう?」
    と言う三日月はまたさっきの悪戯っぽい笑みを浮かべている。

    (三日月宗近はやっぱりよく笑う刀だ)

    なんだそれはと反論しながら、楽しげにする三日月にそんな事を思った。





    身体がふわふわと浮かんでいる感じがするのは酒のせいだろう。いつもより飲みすぎたのか、酔いが全身に回っている気がする。頭が麻痺してぼんやりしていた。
    「あんた、本当に俺に触られるのは平気なんだな」
    言われて初めて、三日月は自分が誰かに触れられている事に気がついた。三日月の髪を優しく梳くように白い指先が動いている。
    (心地いいなあ)
    思わず瞼を閉じる。髪を梳く指先も心地いいが、この暖かく柔らかい枕も中々良い寝心地だった。
    (寝心地?ん?俺は横になっているのか)
    確かに、視界のすぐ下に畳が見える。
    「おい、相当酔ってるな」
    頭の上から聞こえる声に視線だけ上にあげる。
    (白と金、それに翡翠)
    それはその色だけで出来ていた。
    (綺麗だなあ)
    手を伸ばして触れるとそれは苦いものでも食べたかのような顔をしている。
    「綺麗とか、言うな」
    どうやら先程から思った事をそのまま口に出してしまっているようだ。
    「良いでは無いか、そなたは綺麗なうえに強いのだろう?俺などそれしかない。不殺の刀などと思われて戦う事が出来ない刀剣男士など顕現した意味が無い」
    どうせ考えた事が全て漏れ出てしまっているならと、今度は言葉になっている事を意識する。しかし言葉になっている事は意識できても言葉にする内容まで気が回っていないようで、酒とは怖いものだと三日月は思う。気が付けば普段は絶対に口にしないようにしていた弱音がこの時ぺろりと出てしまっていた。
    そもそも、顕現した瞬間から自身の温もりにさえ鳥肌が立った。この肉の器に流れる血潮にさえ吐き気がする。
    『おい!大丈夫か!?』
    気分が悪くなり膝をつきそうになった三日月に駆け寄り支えたのは三日月の顕現に立ち会ったこの刀だった。
    (あたたかい)
    己の体温すら嫌悪しているのに、その指先から伝わる温もりだけは心地よく思えた。
    近侍として顕現に立ち会った事が何かしらの作用をしているのだろうか。ともかく、その後、流石に自分自身の体温に慣れはしたものの相変わらずこの身は温もりを、血の汚れを、肉を嫌った。
    食事は冷めたものしか口に出来ず、勿論、肉や魚も食べられない。我ながら驚いたのは牛乳も駄目だった事だ。食事に出されたほわいとしちゅーなるものを口にした瞬間吐き出してしまい、せっかく作ってくれた燭台切光忠に申し訳なくなった。
    「そうか、食事は温かい方がいいし肉や魚が食えないのは残念だな。燭台切のホワイトシチューは本当に美味いから食べられないのは不憫だ」
    食事の問題だけでは無いのだが、心底同情したような声色に訂正は控える事にする。
    「でも、俺はあんたが不殺の刀なんじゃ無い事を知っているぞ」
    三日月の本体には物打ちより少し下に切り込みが残っているし、刀身にも歪みがある。それらは実践刀であり実際に戦場に赴いていた痕跡らしい。らしいと言うのは、今、三日月が持つ本体は審神者が不殺の刀として顕現させてしまったためにそれらの痕跡は消えてしまっているからだ。
    「そもそもあんた、三日月宗近と呼ばれる前には五阿弥切りと呼ばれていたんだろ?五阿弥が何かは知らないが、確実にその名は何か切ってるじゃないか」
    そうなのだろうか、自分の事なのに他人事みたいに思う。
    「そなたは俺より俺に詳しいな」
    なるほど、この刀の温もりだけを何故自分が受け入れられるかが分かった。
    「そ、それは……主があまりにもあんたを欲しがるから、少しだけ調べたんだ!でも少しだけだからな!」
    そうかそうか、と相槌を打ちながら三日月は身体を反転させて己の腹を下にするような体制になる。するとその刀の身体が目の前に現れる。三日月は腕を回してその身体を抱きしめた。
    「ひゃっ!?」
    それは驚いた声を上げはしたものの、三日月を引き剥がそうとはしない。
    「頭を撫でてくれ、そなたに触れられるのは好きだ」
    ぐりぐりと頭を押し付けると初めは困っていたようだが、ため息を吐き出した後に、優しい指先が三日月の頭に触れた。
    「まるで子供じゃないか、俺より長い時を過ごした刀ではないのか?」
    咎める言葉は言葉の内容とは裏腹に優しく三日月の鼓膜を揺らす。
    「童のようなものさ、俺など……この身を受けたのはそなたより後だ」
    心地よい温もりに意識がとろとろと溶け出している。
    「まったく」
    頭を撫でていたその手は三日月の肩へと滑り、一定の拍子で軽く三日月のそこを叩いた。
    (ああ、これもきもちがいいなあ)
    それを言葉にしていたか、それとも思っていたかだけかなのか、自分でも良く分からない。ただ、瞼を閉じる寸前に少しだけ盗み見たその刀は随分と柔らかい笑みを自分に向けていた。

    (山姥切国広は優しい刀だ)



    小鳥の囀りと温かい日の光。そう言えば自分は、日の光の温かさは平気なんだとしみじみ思いながらゆっくりと意識が浮上していく。朝、なのだろうか?三日月の部屋は西向きで日が差すのは夕方だったが、この、白く強い光は朝日のように感じる。
    ではここは、三日月の部屋ではないのだろうか?
    「俺の部屋ではないだと!!?」
    その考えにたどり着いて三日月は焦り一気に起き上がる。
    「う~…」
    すると、己の傍らにもぞりと動くものがいた。
    (まずい、百夜通うと言っておいてもう手を出してしまった)
    サー…と血の気が引く。混乱しながら三日月は昨夜の事を必死に思い出す。昨夜はいつもより飲み過ぎて、気づいたら横になっていた。
    (今思えば、膝枕と言うものをされていたのではないか!?恋仲でも無い相手に俺は何をさせているのだ!!?)
    おまけに散々弱音を吐いて甘え倒した記憶も残っている。500歳も下の刀にだ。
    (いや、でも待て、それ以降の記憶はないぞ?)
    微かな希望を掴み、三日月は思い切って己が欠けている布団をばさりとめくり上げてみる。
    (は、履いている!)
    この瞬間、三日月は神は居ると思った。
    (いや、そもそも俺が付喪の神なのだが)
    下履も袴ものも身につけたまま三日月は眠っていたのだ。つまり酒の勢いで契ってはいないらしい。
    三日月がほっと胸を撫で下ろした時、
    「う゛~~なんだみかづき、おきたのか」
    呂律が多少危うい声が傍らからして、見れば山姥切国広がそこにいた。
    やはり自分はこの刀を昨夜訪ねてこの部屋に来たまま酔って寝こけてしまったらしい。
    「すまん、山姥切、世話をかけ……」
    言いかけて三日月は目の前に広がる光景に石のように固まった。
    敷布団の上に眠そうにぺたりと座り込んでいる山姥切国広は白いシャツしか身につけておらず、シャツの裾から白く長い足が見えている。
    下履は履いているようだし、己が乱暴な事をした痕跡も見受けられない。ならばきっと寝るのに窮屈で脱いだだけだろう。停止しかけた思考を必死に動かしてそう結論付けるが、動かぬ身体の中心で心臓だけがやたらと元気に鼓動を刻んでいた。
    「朝飯でも食いに行くか」
    山姥切国広はそんな三日月の様子を気にする事なく猫のようにしなやかに身体を大きく伸ばすと、脱ぎ捨ててあった着るものを身につけ始める。
    (袴を履いていて良かった)
    袴は股座にゆとりがあるからきっと気付かれてはいないだろう。互いを知るまでなどと綺麗事を言いながらしっかり反応している己の下半身が憎かった。
    しかし三日月は今夜も此処に来なくてはいけない。そう約束をしたのだ。何より1日の最後、この刀と話をする事が楽しみになっている。己の中にある獣の本性に気がついてしまっても、その楽しみが無くなるのは絶対に嫌だった。
    (しかし、次に酒に酔って襲ってしまわない自信が無い)
    もう酒はやめておこうかなどと思うも、話をする口実に酒以上の丁度良いものがまだ思い浮かばない。
    「そら行くぞ!三日月!」
    目の前に差し出された手は朝日に照らされてより白く
    「ああ、ゆこうか」
    触れられると温かい。
    それが、今の三日月が触れられる唯一の温もりだ。
    (まあ、良い面倒くさい事は後で考えよう)
    その温かさに何もかもどうでも良くなり、とにかく今は朝食をとるために、二人でこの、朝日が差し込む温かい部屋を後にしたのだった。




    その晩は新月だったが月が無いせいか星が綺麗に見えていた。寒さもそれ程でも無く、どうせなら外で飲まないかと三日月は山姥切国広を外に誘い出す。
    縁側に座り二振、空を眺める。
    星座、と言うものがあるらしい。昔の人間は星と星を繋いで物の形をあの星空に描いたらしい。
    そんな話をぽつぽつりとすると山姥切が少し難しそうな顔をして空を見ていた。
    「いかがした?」
    と、聞けば
    「いや、俺も以前、その話を聞いてな…少し調べたんだが」
    山姥切は、杯に人差し指を浸し酒を乗せた盆の上、に二つの点を描いた後、その点と点を結んだ。
    「こんなのが、山犬とか言うんだ」
    成る程これは犬と言うより
    「棒だなあ」
    成る程、星座の話を聞いた時は人とは面白い事をすると思ったが、それでコレが山犬と言われても納得しがたい。
    「では俺が、棒よりもまともな星座を作ってみよう」
    それから三日月は夜空を眺めてみる。
    「よいか、山姥切国広、あの星空と」
    夜空を指差して星と星を繋いでいく。満天の星空だ。好きなものを描く事は別に
    難しい事ではなかった。
    「だんご座だぞ…!」
    そう言って横に座る山姥切国広を見ると不思議そうな顔で目を丸くしていた。
    (これでは駄目か)
    三日月な暫し考えてから再び星と星を指で辿って繋いでいく。
    煎餅。
    かりんとう。
    芋けんぴ
    「ふむ……芋けんぴは棒になってしまったな」
    と、横に座る山姥切国広の肩が小さく揺れていた。
    「ふっ…あはははっ!あんたのせいで夜空が茶菓子だらけじゃないか!」
    山姥切国広は目に涙を浮かべて腹を抱えて笑っている。
    その表情を見た瞬間に三日月の胸がギュッと締め付けられた。
    (な、なんだこれは!?)
    初めての感覚に思わず戸惑い、締め付けられた胸の辺りに手を当てる。
    「どうした?具合悪いのか?」
    すると、三日月の様子を不審に思ったのか山姥切国広が顔を覗き込んできた。
    途端に今度はドキドキと鼓動が早まる。
    (なんだ!?なんなんだ!?)
    呼吸がしにくくて苦しいし、何故か頬も熱い気がした。
    「顔が赤いぞ?もう、酔ったのか?今日は昨日より飲んでいないようだが」
    そうだ。今日は舐める程度しか酒を飲んでいないのに、何故こんな風になっているのだろう。
    「あんた、茶菓子が好きなのか?」
    そう言って、山姥切国広は酒の肴にと用意した冷奴をじっと見つめた。
    「いや!豆腐も好きだぞ!?」
    それはきっと、三日月が食べれるようにと肉や魚以外のものを考え用意してくれたに違いない。その気持ちが何より嬉しい。
    「茶菓子を今度用意しておく。ついでに酒では無く茶を飲もう。あんたは百夜と言ったが、別に互いを知るのに夜会わなくてはいけないなんて決まりは無いだろう?明日は昼間、ここで茶でも飲まないか?」
    そう提案した声が柔らかく優しい。
    (やはり山姥切国広は優しい刀だ)
    そもそも、優しくなくてはこんな体質を持って顕現した三日月など捨ておくだろう。
    三日月宗近の顕現率は低いと言っても零ではない。今、此処にいる使い物にならない自分などさっさと刀解して次に賭けた方が効率が良さそうだとすら思う。
    (この感情は何だろう?)
    相変わらず胸の鼓動は早く、頬は熱い。しかし暖かく、嬉しさが湧き上がってくる。
    「で、では明日、昼間に会ってくれるだろうか?」
    三日月がそう問いかけると山姥切国広は頷く。
    「あんたがあまり夜空に茶菓子を描くから、俺も茶菓子が食べたくなってしまった。美味いだんごがあるんだ。午前中に万屋街で買ってくるから、おやつにでも食べよう」
    明日の約束を取り付けた事に三日月は舞い上がりそうに嬉しくなっていた。
    「楽しみだなあ」
    と思わずことばを零す。
    「あんた、そんなにだんごが好きなのか?」
    三日月の言葉を聞いて山姥切国広が吹き出して笑い出す。
    (いや、違う、俺が好きなのは)
    と、考えて自分の事なのに自分で良く分からなくなった。
    (俺が好きなのは……なんだ?)






    見慣れた自室の天井を眺めながら、国広は今日の出来事を反芻していた。
    (楽しかったな)
    今日は約束通り三日月宗近とふたりで万屋街に出かけたのだ。
    思えばあの三日月宗近は顕現してから本丸から出た事がなかった。そのせいか見るもの全てが珍しいようで、キラキラと目を輝かせてはあちらこちらを見回していて、千年越えのじじいを自称するその刀の無邪気な姿はあまりに可愛らしく、国広は何度笑い出すのを堪えたかわからない。
    (三日月も楽しかったなら良かった)
    途中、国広が好んで通う茶屋で団子を食べて休憩して、近くで丁度やっていた蚤の市も見て回る事になった。市には本丸の不要な物を売る刀剣男士も何振りかおり、その中に自分達と同個体の三日月宗近や山姥切国広もいた。
    『見ろ!山姥切!俺とそなたがおるぞ!』
    そう言えば、三日月は演練にさえ出ていない。同個体を見るのは初めてだったのだろう。興奮気味に他本丸の自分達を指差すものだから少し慌ててしまった。
    『其方の俺は自分を見るのは初めてか』
    国広が咎める前にそう声をかけられる。ギクりとしたが、相手は穏やかな笑みを浮かべていたのでどうやら怒ってはいないらしい。
    『失礼した。この三日月宗近はまだ演練に出たこともなくて』
    国広が詫びれば相手の三日月は相変わらずニコニコと穏やかに笑みを浮かべて『良い良い、気にしておらん』と許してくれた。
    『鏡があるわけでも無いのに、己の姿が見えるとはまこと不思議なものだなあ』
    などと、三日月は関心している。
    『確かに、それでいて自分であり自分では無いと確かに思うのだから』
    三日月の言葉に相手の三日月も同意する。
    『演練に行けばそう珍しくも無くなる。あんた達は顕現率が低いから俺よりは遭遇率は低いかもしれないが』
    相手の三日月の横にいた山姥切国広がそう会話を続ける。
    『演練か……行けるようになるだろうか』
    三日月はそう自嘲した。
    『なるに決まってるだろ!あんたは強い刀だ!あんたはいずれ俺より強くなるんだぞ!?』
    三日月宗近は強い刀だ。天下五剣だからと言うのもあるかもしれないが、何度か演練で戦って思った。おそらく全体的に能力値の数値が高くて釣り合いが取れている。他本丸の刀から三日月宗近が部隊に入ると誉を持っていかれて困るなんて聞いた事もあるぐらいだ。
    まごうことなき名刀なのだ。三日月宗近は、

    (そんな刀が、本当に俺なんかといいのだろうか…?)

    三日月と居るのは楽しい。あの穏やかな性格のせいか、国広はたまに彼が天下五剣で名刀である事を、自分が写しである事を忘れてしまいそうになる。
    (いいのだろうか?)
    再び己に問いかける。名刀の相手が自分のような写しでいいのか、所詮、一晩身体を繋げれば良いだけの関係なのに、こんなに心を傾けていいのか、

    (今日は昼間会ったし多分こないんだろうな)

    三日月と会わない夜は久しぶりな気がする。
    実際は今日で6日目だ。
    長いとは言い難いのに、たった6日で当たり前になってしまっていた事に驚く。
    (!?)
    その時、部屋の外から気配を感じた。
    国広は慌てて布団から飛び起きて襖を開ける。
    「み、みかづき!?何故?」
    そこには三日月宗近がいた。
    いつも通り、国広を訪ねるために正装している。対して、今晩はこないのだろうと思っていたから国広は寝間着の浴衣だ。
    しかも、
    「いや、百夜通うと約束したかなあ……そなたに会えずとも良いから来たのだが、そなたはやはり、会うてくれるのだなぁ」
    嬉しそうに三日月が微笑み、その笑みがあまりに美しくて見惚れてしまう。
    「すまない。今夜は来ないかと思ってこんな格好で」
    「良いさ……昼間出歩いた故、そなたも疲れただろう?今宵は爺の長話に付き合わせる気は無い。そもそも会えるとも思わなんだ」
    国広も思っていなかった。そして、今会えた事に喜んでいる自分がいる。昼間だって散々一緒にいたのに
    「しかし、そなた、大分疲れたのだな。寝間着が裏返しになっておるぞ」
    三日月にそう指摘されて、国広は一気自分の顔が赤くなるのが分かった。
    (って言うか布!)
    布を被り忘れていた事にも気がついて混乱しながら素早く枕元に畳んでおいた襤褸布を引っ掴んで頭から被る。
    「今日はゆっくりおやすみ。また明日」
    小さく三日月が笑い声を上げていたがその顔が見れない。
    「あ、ああ」
    『また明日』とその甘美な響きを国広は胸の中に押し込めて何度も頭の中で繰り返した。
    また、明日、三日月宗近と会える事が嬉しい。

    (いいとせめて恋しき時はむばたまの夜の衣をかへしてぞ着る)

    小野小町の和歌に習い、今夜会えないだろう三日月の夢が見たくて、寝間着を裏返して着たなんて

    (ば、バレてないよな!?)

    三日月に知られるわけにはいかない。






    その日は一日中雨が降っていた。
    そのせいか少し肌寒くさえ感じる。ついこの前まで、少し暑いとさえ思っていたのに、春と夏の間のこの季節は気温がとても不安定らしい。

    と、

    クシュンッ

    と聞こえて国広は音のする方を見た。
    「大丈夫か?少し寒いだろうか?」
    どうやら三日月宗近がくしゃみをしたらしい。
    「いや、むしろ熱いぐらいだ。酒が回っているのかもしれんな」
    三日月は首を横に振ってからへらりと笑う。
    今夜は訪ねて来た三日月とまた酒を飲んでいるが、そういえば三日月は部屋を訪ねて来た時から少し様子がおかしかったかもしれない。
    「あんたもしかして…!」
    嫌な予感がして、国広は己の額を三日月の額にくっ付けてみる。それは以前、脇差の兄弟に教わった事だ。こうすると互いの体温を比べられて異常に気付く事ができるのだ。
    「あんた熱があるじゃないか!」
    三日月の額は自分の額より熱い。つまり三日月宗近は発熱している。
    (最近暑かったり寒かったりしたから体調を崩してしまったのかもしれないな、そもそもこいつは顕現してから一つも練度が上がっていない。免疫力とやらも他の刀より低いのではないか?戦闘は無理でも遠征ぐらいなら行かせるべきかもしれない。明日、主に)
    などと、額をくっ付けたまま国広が考えていると
    「や、山姥切……」
    蚊の鳴くような小さな声で三日月が国広を呼んだ。その顔は先程より更に真っ赤になっているし、熱のせいか瞳も潤んでいる。
    (あっ、うちのけ……)
    そしてその潤んだ瞳の中、欠けた月が浮かんでいた。
    (綺麗だな……)
    思わず見惚れてしまう。
    「あの、すまんが……額を離してくれぬか」
    再び小さな声で言いにくそうにそう言われて国広はハッと我にかえる。
    「す、すまない!」
    慌てて距離をとる。
    心臓が煩い。
    国広はその理由が自分でも分からなくて混乱する。喉元に何かが詰まっていりような気がして息がしにくくて言葉を発する事が出来ない。
    三日月は具合が悪いからか、それとも写しの自分に触られたのを不愉快に思ったのかこちらもやはり黙っている。いや、三日月に限って写しだとか名刀だとかきっと気にはしていないだろう。三日月宗近がそんな刀で無い事はこの七日間でよくわかった。
    穏やかで、マイペースで、確かに年長者特有の余裕もあるが内心、現状に焦りのようなものを抱えている事も、国広は知っている。爺だと自称しながらも、顕現したばかりの自分は童のようなものだと国広に甘えて来た事もあった。
    酒に酔っていたからだろうとは思うが、三日月ほどの刀が自分のような写しに弱音を吐いてくれたのは三日月の特別なものになれたようで嬉しかったのを覚えている。
    「もう、部屋に帰った方がいい」
    国広はようやくそれだけを絞り出すように言葉にした。
    「う、うむ。そうだな、今宵はもう失礼しよう」
    国広の言葉を聞き、三日月は立ち上がる。



    「!?」

    立ち上がる瞬間にふらりとその身体は揺れて、畳にに片膝をつくような格好で三日月が蹲った。
    「大丈夫か!?」
    慌てて駆け寄ると三日月はまたへらりと笑って
    「すまんすまん。少し立ちくらみがしただけだ。朝から頭がなんだか重たくてなぁ」
    と、軽い調子で返してくる。
    「熱があるからだ!もう部屋に帰って暖かくして眠れ!」
    その身体を支えてゆっくりと立ち上がらせてやる。今度はちゃんと立ち上がる事が出来たがなんだかふらふらしているように見える。
    「……あんたの部屋まで送る」
    もしこのまま見送ってしまったら廊下で倒れてしまわないか心配で眠れそうもない。
    「やあ、嬉しいなあ」
    国広に言葉に三日月が蕩けるような笑みをうかべているのは、きっと熱があるからだろう。
    「そなたと離れ難いと思っていたのだ」
    少しでも一緒に居れるのが嬉しいと三日月が言う。

    (勘違いしそうだ)

    と、国広は思って

    (何に?)

    直ぐに浮き上がった思いに自ら疑問を問いかけた。

    「馬鹿な事を」

    己の気持ちが分からないまま、ともかく口先だけでそう三日月を咎めているものの、嬉しくて、胸が痛くて、そして何故か泣きそうなのが自分でもよく分からなかった。



    その夜も変わらず三日月は国広を訪ねて国広の部屋に訪れる。
    「あんた、顔に似合わず頑固だな」
    今夜も来るような気がしていた。
    しかし、発熱した三日月を部屋まで送ったのは昨日の事だ。
    今日は自分など気にしないでゆっくり眠っていて欲しかったのだが、三日月は今日もきっちりと正装して国広の部屋を訪れた。
    しかしやはり顔色はあまり良くないし、国広の言葉に浮かべる笑みも力なかった。
    「薬研に見てもらったが、どうやら風邪というものにかかってしまったらしい」
    言ってから三日月が咳き込む。
    「だから!無理をしてまで来なくていい!」
    咳き込む三日月の背中を摩りながらそう咎めるが
    「俺が、そなたに会いたかったのだ」
    三日月の声は枯れて、弱々しいものだったが、芯が通っていて意志の強さを感じた。
    「まったく……」
    三日月の言動に呆れながらも喜んでいる自分がいる。
    「今夜も来るだろうと思ったから布団を一組とあんた用の寝間着を用意しておいた」
    国広の言葉に三日月は一瞬だけ、慌てたような戸惑った顔をした。
    「迷惑だっただろうか?」
    図に乗り過ぎたのかもしれないと少し後悔する。
    でも、
    「迷惑なものか!俺は!」
    もの凄い勢いで三日月は否定して、けれどすぐにまた激しく咳き込んだ。
    「分かった。分かったから、今夜はもう眠ろう」
    今夜はそれほど寒さを感じないが病人をずっと廊下に立たせていい筈がない。国広は三日月を速やかに自分の部屋に招き入れる。
    それから、三日月の着替えを手伝って寝間着にきがえさせてやった。
    発熱しているせいか三日月はぼぅと惚けたように国広を見ている。
    「あんた熱があるせいか顔が赤いな」
    そう言って触れた頬がだいぶ熱っていて驚く。
    「こ、これは、それだけでは」
    気まずそうにそう言って国広から視線を逸らす三日月の瞳の中はやり熱のせいか潤んでいた。
    (月が溺れているようだ)
    その余の美しさに国広は思わず見惚れてしまう。
    「そんなに見つめられたら穴があいてしまう」
    本気でそう思ってはいないだろうが、居心地が悪そうにそれだけを言うと三日月は少し慌てた様子で布団に潜り込んでしまう。
    (見られるのなんて慣れていそうなのに)
    天下五剣でも、凝視されたら恥ずかしいというのは新発見だった。
    「おやすみ三日月」
    布団に潜り込んで、丸くなる三日月にそう声をかけてから明かりを消す。


    「おやすみ……山姥切国広」

    しばらくして、聞こえたその声があまりに自分の名前を熱っぽく丁寧に呼ぶものだから、胸がどきどきと高鳴ってしまい寝付くのに手間取ってしまった。
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