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    kokutou369

    @kokutou369
    みかんば、壁打ちよう。
    アイコンは禾さんに描いていただいたイラストです。くわしくは、扶養になりたい山姥切国広を読んでね!(ダイマ)

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    kokutou369

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    大侵攻後のうちの二振目の🍊🌱ちゃん(にまだなってない)と、自分なりの解釈と妄想をつめつめこねこねしました。

    #みかんば
    mandarinPlant

    円戯(えんぎ)月が帰ってきた。
    一振り目の月は今、一振り目の極の自分、山姥切国広にしっかり怒られている。
    月食の夜、三日月宗近の本霊から賜った二振り目の月は、今、国広の前にいた。
    「何も、言わぬのか?」
    少し困った顔をして月が訪ねてくる。
    「何を言えと?」
    そう返せば、月は曖昧な笑みを浮かべた。
    彼らが帰城したのは確か、昼を過ぎた頃だったがなんだかんだと慌ただしくて、今は日が暮れ初めている。
    夕暮れが差し込む自分達の部屋はそろそろ明かりを部屋に灯すべきか、まだ早いかと悩むような頃合いだった。
    「あんたも俺に怒られたいのか?」
    そう聞いたものの、自分はこの刀を怒る立場ではない。
    一振り目達のように伴侶というわけでもなく、ただ、二振り目の三日月宗近を本霊から賜った日に鍛刀されたのが国広だっただけだ。
    本来なら自分はそのまま人の形をすることもなく刀解か、誰か他の刀の糧になるべく錬結されていただろう。それが偶々、この三日月宗近を賜った日だったというだけで、顕現された。
    本霊からの意味深な贈り物に、審神者は自分の本丸の三日月宗近に習合することが出来なかったのだ。
    そこに加えて、この本丸では三日月宗近と山姥切国広が恋仲だったためか、賜った日に偶々鍛刀された国広に審神者は何か勘違いしたらしく、顕現させられて二振り目の三日月宗近の世話係をするように言われたのだ。
    顕現したての自分に何を言うのかと思ったが、世話をしろと言うよりは、常に隣にいろという事のようだ。
    だからといって、一振り目達のような仲になどなる筈がないと言うのに。

    (だってコイツは一振り目の三日月宗近とはまるで違うじゃないか)

    一振り目の三日月宗近は一振り目の山姥切国広に全てを委ねているように国広には見えた。
    委ねているーーいや、一振り目の山姥切国広だけがあの三日月宗近の救いなのだと思う。
    一振り目は『何かを知っているらしい』と言っていたのは初期刀の蜂須賀虎徹だ『知っているが言えないようだ』とも、その苦しさを一振り目の山姥切国広が和らげているのだと思う。
    もしかしたら山姥切国広も『何かを知った』のかもしれない。
    極の修行に出てからあの刀はだいぶ変わったようだから。
    けれど、その理由を、国広が知る事はおそらくないだろう。
    二振り目の自分に求められていることはただ、この三日月宗近の傍らにいる事だけなのだ。
    黙ったままただ笑みを浮かべるだけの刀に一つだけ、疑問に思っていた事を聞く。
    「あんたが、一振り目の三日月宗近を連れ出したのか?」
    一振り目よりさらに何を考えてるか分からない、この二振り目の三日月宗近が今回の一件の首謀者のように思えた。
    いや、むしろ、首謀者は本霊の三日月宗近と言うべきか、
    「俺ではないーーが、俺なのかもしれん」
    そう含みを持たせた言葉を選びながら、何故だろう?少しだけ、その顔が泣きそうだと国広は思った。
    相変わらず、目の前の三日月宗近は笑っているのに。
    「そうだな、三日月宗近の本能とでも言おうか」
    それは『歴史を守る』という刀剣男士の本能とは違うのかと聞けば、月は是とも否とも言わないまま話を続けた。
    「三日月宗近の本能、山姥切国広の本能、始まりの刀の本能ーーそういうものが、この世にはあって、俺たちは時たま、顕現してから手に入れた自分という『個』を忘れ、行動してしまう時がある。それは抗い難く、時に自分が自分でなくなる時がある。折れてもいいなどと、一振り目のあれは、おそらく思いはしてないだろう。それでも『本能』がそう思わせた。あれだけではない。他の本丸でもきっと同じ事が起きていただろう」
    それがこの世界の理なのだと言われたら、そう言うものなのかと思うしかない。
    「そうか」
    頷けば、月の笑みが苦くなる。
    「お前、さては信じておらぬな?じじいが朦朧していると思ってるのだろう?」
    朦朧じじいがここまで口が回るとは思えない。それに、別に信じていないわけではなかった。ただ。
    「あんたの言葉が嘘でも真実でも、俺達が生きていかなきゃいけないのはここ以外なくて、どうしたってその理から出れない。だったら起きた事も、これから起きる事も受け入れるしかないだろう」
    国広の言葉に、三日月が驚いた顔をする。

    (月がこぼれ落ちそうだな)

    と、思った瞬間、
    (ーーあっ)
    コロリと何かがその瞳から落ちる。

    それから、三日月宗近の腕が自分に向かって差し出されギュッと抱きしめられる。
    「おい!何をする!?」
    練度はほぼ同じの自分達だが、太刀と打刀だから力では敵わない。ためしに身体を捩ってみてもまったく無意味で、諦めて、仕方なく手持ち無沙汰になった手でその丸まった背中を撫でた。
    それに意味などない。ただ本当になんとなくしたことだった。

    「おかえりと」

    背中のほうでそう声がする。

    「おかえりと、お前に言って欲しい」

    そう強請る声がまるで子供のようで思わず笑いそうになってしまう。
    写しの自分が天下五剣の名刀に思っていい事ではないが、

    (随分、可愛いところもあるじゃないか)

    胸の辺りが暖かいのは抱きしめられているからお互いの熱がこもっているからだろうか?
    くすぐったいのは、この名刀の片方だけ長く伸ばされた髪が当たっているからか、いや、布を被っている国広の肌に三日月の髪は触れていない。
    (不思議だな)
    でも、嫌ではない。
    むしろ気分がいい。
    だから国広は、求められるままにその言葉をその刀に贈ってやることにした。


    「おかえり、三日月宗近」


    「ーーっ、ただ、いま」

    その声は、随分震えていた。
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