西の辺境の戦場にて・1爆音や悲鳴が響き渡る戦場。辺りは鉄や火薬、血の臭いで溢れ、慣れない者は反吐を吐く。視界は爆発の煙や砂埃で阻まれる。そんな中でもリカルドは至って冷静にライフルを構えている、繁みの中に隠れながら敵に標準を合わせ、不気味なほど正確に当てる。次々と敵は倒れて行く。
不意に、真っ赤な服が視界に入る。敵国の赤い軍服とは違う、戦場には似つかわしくない──血の色を想起させる──真紅のジャケットと、フリルのついた白いブラウス。こんな派手な衣装を着て戦場に立っている人間は一人しかない。
“そいつ”は長大な槍で敵を貫き、屠り、辺り一面に血の花を咲かせている。気の抜けたような動作で、しかし淀みなく抜かりなく、肉を斬り裂いてゆく。そいつの表情が見えた。笑っている。気味の悪いのっぺりとした顔。
そいつの背後に、剣を持った敵兵が斬りかかろうとしていた。リカルドは素早くそれに標準を合わせ、眉間を撃ちぬいた。そいつは背後に目を遣ってから、リカルドの方に顔を向けた。一瞬の無表情の後、にへらと笑いかけてきた。
「ナイスショット」
口元がそう動いていると理解できた。
リカルドは眉を顰めつつ、そいつから視線を逸らした。