魔法少女「またボロボロになってる」
「だからここに来てるんだよ」
週に一度か。いや、魔力消費の増減にもよるが多ければ三日に一度はここに来ていた。——カリムの部屋に。
「分かっちゃいるけどさあ、でもジャミルが毎回ボロボロになってくるの地味に辛いというか」
俺は勝手知ったる部屋の中をツカツカと早足で、カリムが座る椅子の前まで歩いた。今回は爆薬を投げるタイプの怪物だったからコスチュームはところどころ焼け、体にも少しばかり擦り傷と火傷が残ってしまった。ソウルジェムさえ回復すればコスチュームは元通りに戻るし、体の傷は大したことはないので数日もすれば治るだろう。大したことではない。
「もう何度も来てるんだからそれくらい慣れてくれよ。それにこれくらい、すぐ治る」
「うん、それは……わかってる」
こんな傷、大したことではないのだ。
それよりも俺にはこの空間の方が辛い。俺のことをさも愛おしそうに見つめてくるカリムの瞳だとか、そしてそんなカリムにキスをしないと回復できない俺自身だとか。
夕刻を過ぎた部屋は仄暗く、西日の差し込んだ部分だけが強烈に眩ゆい。日常の中の非日常は、俺たちの関係を少しずつ少しずつ密やかに変化させていった。寮生の前ではいつもの寮長と副寮長の姿でいられるが、二人きりになった途端、空気が変わる。甘ったるいような……いや、なんていうのだろう。
「——カリム、目、閉じて」
「おう」
椅子の腰掛けに手をつき、瞼を閉じて顔を上げたカリムの唇に、唇を重ねる。柔らかな唇は合わせているだけでも気持ちがいい。何度も角度を変えて優しく優しく触れていく。その度に可愛らしいリップ音が静かな部屋の中で存在感を表していた。
「ハァ……、カリム」
体も心もボロボロになって、慰めるようなキスをカリムと交わす。それは俺の脳をジリジリと刺激した。疲れ切った体が、カリムから与えられる快楽を敏感に受け取ってしまうのだ。
「ジャミル、口開けて」
「はふ……、ん、わかっ」
薄く開いた隙間からぬるりと入り込んだカリムの舌は、俺の口内を余すところなく舐め上げ、俺の舌と絡める。何度も交わした口付けは、確実に互いのイイトコロを教え合った。
カリムは普段の優しい性格からは想像がつかないくらいがっつくタイプだったし、逆に俺は窒息するくらい食らいつかれるのが好きだった。酸素不足から頭の芯がぼうっとして、鼻から得られる酸素だけでなんとか呼吸を繰り返す、それが嘘みたいに気持ちがいい。口の端から飲み込めない唾液がぼたぼたと溢れていても、どうしようも出来ないくらい興奮する。
「はっ、はっ、ふ」
腰掛けを握る手が震え、縋り付く為に強く力が入る。カリムの掌が俺を逃すまいと背中に回った。どれほど苦しかろうが、俺から唇を離すことはできない。覆い被さっているのは俺なのに、絶対的主導権はカリムにあって、俺はただただ口内を嬲られ続けるだけだ。
腰が細かく揺れる。体の中心部に熱が上がりそうで、必死に頭の中で素数を数えるが、だんだんそれすらも億劫になってくる。カリムとのキスのことだけを考えて、それだけで満足したい。
空いているカリムの掌が今度は俺のスカートとブラウスの間に入り込んで、横腹を摩る。それがゆっくりと後ろに移動して