《とある手記》後編モノを埋め続けた結果、今度は実践的な事をやらされた。詳細はあまり書かないが、実際に臓器を摘出する仕事をやらされた。そこから医療関係の勉学もやらされて、一応国家資格を取ると仮定すれば首席なら取れるんじゃないか?まぁ今年の問題がどんなのだったか知らないがな。
そこから人の構造や命の灯火を消すのに有効な方法を学んだ。だからそれを実践する為に多くの被験者が必要だった。だから俺は更に賢くなる為にあいつらを殺した。それが俺にとっての初めての殺人だった。
救出外道も、その部下も、捕まれられていた同胞も、何も知らなかった無関係者も、その場所にいた全員を俺が殺した。俺しかいない病院の地下で俺は再びキラキラを見る事が出来た。そのキラキラは後に宝石である事が分かったが、当時の俺には理解できない代物だった。
その部屋で何日も籠ってキラキラを自分に纏ったりした。ルビー、サファイア、エメラルド、アメジスト、ダイヤモンド。ローズクォーツ、ラピスラズリ、ガーネット、アレキサンドライト、オパール、翡翠、真珠。数多くの宝石を見てもっと欲しい。もっともっと美しいモノを見たい、とな。この時で恐らく俺は齢14だったかな?兄と別れたのが齢10の時だったから一応計算は合ってるはずだ。
それから俺は多くの人を残虐に殺した。かの有名なジャック・ザ・リッパーと例えられる程残酷に殺した。殺してその懐から金を盗み、1日を生き残る。それを繰り返した。
だがやはりどの時代でも警察は優秀だ。1年で俺は捕まえられた。しかし、俺が齢15だと分かると奴らは酷く混乱していた。当たり前だよな。全年齢含めて推定70人を殺した殺人鬼と大人の階段を登り始めた子供が同じ年齢なんだ。
結果として俺は刑務所には入れられなかった。代わりに宮廷の高等呪術師が作った呪われた仮面を強制的に取り付けられた。その仮面は##時代の特攻兵器に似ている緑色の仮面だ。それを取り付けられた瞬間、意識が朦朧として考えが上手く纏まらなくなった。そして、深い深い眠りについた。時折意識が覚醒するが、その時はいつも人を殺した後と宝石を眺めている時だけだった。それ以外の意識は仮面に取り憑いている人格が俺の身体を支配しているらしい。まぁ詳しい事はよく分からん。俺も新聞やラジオで聞いただけだからな。
仮面を取り付けられてから、恐らく俺の死に場所であろうメデゥーサ号に乗るまでの間、俺は国の犬となり暗殺や人殺しを楽しんだ。いや、楽しんではいないな。俺は寝ていたんだから。仮面に取り憑いている人格が楽しんでいたと訂正しよう。
これを書いている時期はPKST団が2回目の脱獄を果たし、また収容になるくらいの頃だ。だが俺はそれよりも前に極秘任務としてPKST団の抹殺及びメデゥーサ号の墜落を命じられた。何故PKST団かと問えば奴らは国の不正を暴く危険があるから、だそうだ。仮面の人格がどうやって殺すのかは分からん。だが、お前らはどうせバッカニアの時のように逃げ切るんだろうな。
まぁこのくらいで良いだろう。如何だったかな?こんな物を最後まで見て何を得られたのか俺にはさっぱり分からないが、個人的には全て書ききれて良かったとは思う。
さて、そろそろお別れの時間だ。この手記は1度誰かに読まれたら自動的に消滅する為、事の詳細はその場にいるお前しか知らない。そう、お前だけだ。これを誰かに話そうとしても無駄だ。他の連中には「音」として認識されるからな。だから、さ。泣くなよ8番。別にお前が泣く必要など無い。全て終わった事。そのような感情は不愉快だ。何もお前は関係ない。あーあ。折角のイケメン顔が台無しだぞ。
俺の事をそんなにも憐れむなら一つだけ頼みがある。勿論、実行しなくてもいい。俺がこのようになってしまった元凶、鉱山の秘密を暴いてほしい。俺の記憶と俺が調べ上げた情報だけは手元に残るようにしてある。それをやるのか、それとも破り捨てるのかはお前次第だ。だが、俺のような奴を2度と生み出さないようにする為にも協力を頼みたい。これが俺からの最初で最期の頼みだ。
俺の意思では無かったが、お前らを殺そうとした事は事実だ。それを水には流さない。俺は自分が犯した罪を受け入れ地獄に堕ちる。だからお前らは長生きして盗賊も辞めて善行を積んで、ステイサムと共に天国で兄とスティーブに会ってくれ。俺だけが居ないその場所で舞台の幕が降りるのが、誰にとっても1番のHappy Endだろ?
P.S
そういえば俺の名前を言っていなかったな。どうせ俺から名乗る事はないだろうから伝えておこう。俺の名前は───だ。しっかり覚えておけよ。
最後まで読み切ると手記は端っこの方からパラパラと崩れ始めた。それと同時に俺の目からも涙が更に溢れてきた。何だよこれ。こんなの見せられたら、俺は。
「ぺいんとさーん。何かありましたか、って!どうしたんですか!」
「しに、がみ…」
「ちょっ、何で泣いてるんですか!?」
涙をボロボロと流しているところにタイミング悪くしにがみ君が入って来た。そんなに泣いてたっけ?溢れすぎて分からないや。
「ちょっと、ね。大丈夫だから。」
「………せめてハンカチぐらい使って下さい。目腫れますよ。」
差し出された薄紫色のハンカチに目を当て、なんとかして涙を抑えようとする。流石にびちゃびちゃにはしないだろうけど。
「うん。ごめん。」
「2人とも、ここにいたの?」
「クロノアさん。」
「って、ぺいんと?」
またまたタイミング悪くクロノアさんもひょっこり扉から顔を出して来た。今日はあんまりついてないな。
「あ、大丈夫です。後で話すので。」
「、、、そう?道化師の言葉通りの装備とか情報全部車に詰め終わったよ。」
「分かりました。」
「にしても、ぺいんとさんよく気が付きましたよね。全部の日記の裏のページにモールス信号があるって。」
そう、此処は道化師のアジト。3回目の脱獄を果たし、トラゾーにも合流できた後、俺達は懲りずに盗賊をやっていた。流石に月には行ってないけど。いつも通り"悪戯"を終わらせて、暇だったからなんとなく透徹したら『メデゥーサ号の時手に入れた日記全ての裏のページを繋ぎ合わせろ』って出た。今までこんな突拍子もない事出なかったのに。だからこそ気になって、持てる人脈総動員させて調べて此処に来た。こんな事知る事になるなんて思わなかったけどね。
「気まぐれに透徹したら何か出て来た。でも、収穫はあったから。」
「まぁでもこれで更に活動がやりやすくなりましたね!」
「とりあえず、ぺいんとの話を聞く為にも早く戻ろうか。」
「そうですね。」
「皆んなまだー?もしかして何かあった?」
遠くからトラゾーの声が聞こえる。そうだ。帰らないと。俺達のアジトに。俺は手元に残った、はじっこまで目一杯書かれた1枚の紙を丁寧に折り、懐に仕舞い込んだ。
1ヶ月後
『続報です。近年世間を騒がせるPKST団が××領の〇〇山付近にある△△美術館にあるローズクォーツで作成された【真実の薔薇】を盗んだ事件にあらたな進展がありました。元々△△美術館と〇〇山には違法奴隷の疑惑があり、今回の事件で本格的に調査が入った模様ですが、先日未明、違法奴隷売買の容疑で□□会社の社長、◇◇氏が逮捕されました。警察関係者によれば長年に渡って売買をしていた証拠があり、警察は更なる調査を行う予定です。』
そう伝えるニュースキャスターを見て隋喜の涙を流し、やっと肩の荷が降りたような気がした。
=Fin=