第一章 第四話「平常」今日はいつもと違う事をしたいから僕の一日を書いていこうと思う。まず大体日の出と共に起床。そして紅茶を入れる。今日はアールグレイにしよう。そうして朝のルーティーンを終わらせたら来客が来るまで図書室に入り浸る。ここにある本は読みきれない。だってこの館で死んでいった人間の記憶が本としてここに存在しているから。だから読み終えれない。僕が人を殺し続ける限り、本も棚も図書室の面積も増え続ける。だから僕の知識欲はこれだけで満たされる。ここの本を有効活用して色々な事を知った。
国名、建造物、畜産、農業、漁業、政治、法律。あとは様々な学問、食事、衣料、機械、医療。でもそれは僕には無縁で無価値なもの。僕の興味が惹かれたのは宗教、人身売買、戦争、武器、飢饉、災害、身分格差、強姦及び性行為。そういう汚くて醜くてドロドロしている方が僕の好みだった。その情報を元に二桁程度人間を生かしてデスゲームを開催した。全員殺すけど。男女の割合が非対称だったら館中に人間にしか効果がない媚薬を撒いたりして、欲望に抗えない人間達を観察した。たまに様々な蟲の毒を抽出したり、薬品の化合物を使って遊んだりもした。
今日読んでいる本は魔女狩りに関する本だった。魔女狩りは17世紀頃の西洋に魔女とされた被疑者に対する訴追、裁判、刑罰、或いは法的手続を行わない私刑等の一連の迫害を指す事らしい。昔の西洋の人間はおかしいんだな。この世界で実際に魔法が使える人間は特殊な血族だけなのに。そうやってベッドに横になりながら本を読み、小さなお菓子を片手に獲物が来るのを待つ。
突然ガチャリと扉の開く音がしたけど、これはお客さんが来た合図。さて、どうやって殺そうかな。今日は三人組。男性二人に女性一人。先に男性の方から潰そうかな。後々面倒だし。何にしようかな?刺殺?銃殺?撲殺?絞殺?溺死?それとも自殺させる?あっ心中自殺なんてどうだろう?今日も楽しくなりそうだな!
ふー。二人しか食べれなかったな。えっ?あと一人はって?うーんとね。逃してあげた。なんかその人が妊娠五ヶ月ぐらいでこの人だけでも逃がさせてほしいって。すごく命乞いされた。今日は機嫌が良いから僕が今出来る最大級の魔術+呪いをかけてやった。これで未来永劫あの一族は僕の呪いに苦しむ。獲物を逃すんだ。それぐらい良いでしょ?でも、やっぱり獲物を逃す時の気持ち悪さはとてつもない。だって君達人間も、お腹に入ったご飯を無理矢理出されたら気持ち悪いでしょ?一人でこれだけ気持ち悪いなら複数人逃したらどうなっちゃうんだろ?まぁそんな事しないけど。死体で遊んでいたらもう太陽が隠れて夜が訪れていた。寝る前に安眠用の紅茶を飲んで僕の一日が終わる。明日はどのくらい来るかな?
思えばそんな兆候はあったんだ。両親が本当はこの世にいないって。でも受け入れたくなかった。でも心のどこかでは分かってた。今思えば馬鹿みたい。なんだか前みたいに両親に会いたい気持ちしかない昔の自分を嘲笑ってた。その気持ちしかなかったら永遠と待ち続ければよかったのに。でも、僕の先祖様は道を教えてくれた。空っぽになった僕に欲望をくれた。そんな素敵な道を見て見ぬふりをする事は出来ない。だからそれを歩いて明るい世界を見に行く。だけど本当に願いを叶える華なんて咲くのかな?今まで結構な数の人間の魂と肉を喰らい続けたあの種はいつになったら満足するのかな?分からない。でも諦めなければいつか開花する。そう信じてる。
今日は男性五人。黒髪で七三分けにしている人。金髪でサッカー?の服を来ている人。眼鏡をかけて気怠そうにスーツを着ている人。パーカー?を着て顔が見えない人。背が小さくて顔に「天」って書いてる布を被っている人。何この人間たちを?服の個性強すぎ。でも人数が多いとこっちも楽しめる。そうだな。まず全員入ってきたら気絶させて、客室に移動。服も僕時代の物にチェンジ。久しぶりに使う「偶像」をセット。そうだ!幻覚魔術で爺やを作り出そう!そうしてご飯を与えたり害がないように見せて殺し回らせよう。そして時間になったら敵が増えるよう、「偶像」に時間設定を施して。さて、貴方達はどのくらいまで生き延びるかな?できるだけ長く生き延びて、せいぜい楽しませてね?