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    bumilesson

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    まみやさんの小説【ファインダーの向こう側】に登場するAV監督エクボと恋人の大学生新隆さんの番外編3次創作です。これ単体でも読めます
    脚本を取りに新横浜からバトルアクスを引きずってやってくるマツオさんが登場します。勝手にキャラを増やしてしまいました…

    【マツオさんが来る!】「エクボ~今度のAVの企画何?」
     エクボの大量の蔵書が詰まっている本棚から霊幻は過去のエクボの脚本を取り出していた。小説と違って脚本は読み物として読むにはあまり面白いものとは言えないところがあるが、それでもエクボのものは一味違う。AV作品でありながらエンタメ作品としての要素が詰まっている。霊幻は素直に面白いと過去の作品の感想を述べる。
    「ああ…それがな…俺様持ち込み企画じゃなくてな、とあるプロモーターさんからの依頼作品なんだが…」
     エクボの視線は何も打ち込まれていないワードパッドに向かっている。いや、書かれてはいたがそこには延々と『ああああああああああああああああああああああああああああああ』という文字が連なっていた。とりあえず喘ぎ声だけでも書こうとしているのかもしれないが、どう見てもホラー作品の出だしである。
    「え、エクボの自主作品じゃないの?」
    「それがな、今売り出し中のⅤTuberを脱がせて初AVに出させることに決めたからそいつを主役にする脚本を書けと」
     脚本から先で男優などを当てるのではなく、今回は男優を単体パケで売る為の脚本を書けという事である。こういう依頼は業界では元アイドルや女優が脱ぐと言った話題性重視の場合に使われる事が多く、イメージビデオの延長のような作品が多い事から脚本はそれほど凝ったものにはならない。ところが、今回は話が別だった。VTuberは一般人には認知度は低いがコア的な人気が強い。その上女性ⅤTuberではなく男性ⅤTuberという事もあり、脚本家を指名してきたのだ。それが問題である。
    「俺様ⅤTuberの人気も知らんし、正直何が人気か分からん…」
     男優を当て書きする脚本は注文が多い。本人のイメージを損ねないようにしつつ、初AVという話題性も保つ必要がある。しかも向こうはいくら発信先がYoutubeがメインとはいえ、映像に関わっている人間である。生半可なものは作れない。
    「エクボでもそんな苦労するの?」
    「俺様ゲイビは霊幻の顔じゃないと燃えないみてえだ…。ぶっちゃけタイプじゃねえ…」
     今回の男優の資料があるが今時の若者系の顔立ちにピンクの髪。これは確かにエクボのタイプではないだろうと霊幻も察する。
    「タイトルが破壊的にダセぇ…。『僕のはじめて生配信!みんな僕の股間に投げ銭よろしく』だぞ…死にてえ…」
     霊幻も同情する壊滅的なセンスのなさだ。これをタイトルにしようと言った奴は多分頭が残念だと思われる。
    「書けねええ…」
     しまいにパソコンの前に突っ伏していたエクボであったが机のスマホが突然鳴り始める。条件反射で取ったが、次の瞬間見る見るうちに顔色が悪くなった。二日酔いで潰れて玄関前で転がっているより最悪の顔色である。
    「ま、まっつおさん、あの、原稿は」
    「あらマシュマロちゃん。きょおが締め切りだった、わよね?あなたまさか忘れてなあい?」
     スマホの向こうから聞こえてくる甘さの漂うねっとりとした声。だが声質は男性のものである。聞いていると耳元がぞわぞわするような声だ。エクボの事をマシュマロちゃんと言うのは一体なんだと霊幻は聞き耳を立てる。
    「わ、忘れてませえええん、き、きょおじゅう、に、は、その、」
    「そぅお、忘れてないのねえ。じゃ、取りに伺うわ」
    「あ、あの、今、取り込中で!」
    「あらあ、何の取り込中かしらぁ?」
     語尾を伸ばし抑揚のついた声が楽し気に響くが裏腹にエクボの顔色はどんどん土気色に変わってゆく。これはあれだ、全財産をドブに落とした人間の顔をしている。
    「えええと、あ!今霊幻とヤりながら!プレイをもっと激しくしようとアイディア出してて!!」
    「あらたかちゃんとぉ?セックスの最中?」
    「聞いてください!ほら!」

    「「「ああ~エクボぉ~気持ちいい~もっとぉ❤欲しいぃぃ…」」」

     とエクボはスマホの中の音声ファイルを大音量で流し出した。突然始まった実況中継だが相手は全く動じていない。
    「そうなの。いい作品作りには恋人とのセックスが欠かせないわけね。あら余裕あるじゃなぁい?」
    「今いいもの書いてますんで!今日中には!」
    「そう。じゃ、楽しみに待ってるわ💛」
     という宣告を受けたところで通話は切れた。しかし巻き込まれて自分の喘ぎ声を大音量で流されるという羞恥プレイに霊幻がブチ切れる。
    「エクボ!!!!何でおれを巻き込むんだよ!!」
    「マツオさんはなあ!!怖いんだよ!!あの人締め切り破ると鉄の斧ぶん回すんだから!」
    「それただのヤバい人なんじゃ…」
    「マツオさんはヤバい人なんだよ!俺様何度もあの人の斧で裸にひん剥かれててな、次締め切り破ったら新横浜に連れて行かれて鉄の処女に入れられて脚本書くまで出られないか、俺様がネコになってモブ集団に犯されまくるAV撮るかの二択なんだよ!」
    「その二択一体何」
    「ああああ、俺様はとにかく逃げる!あの人の会社、新横浜だからここまでまだ時間あるはずだ!」
     ノーパソを小脇に抱え霊幻を振り切り玄関のドアを開けようとした時。
    「…エクボ。外から何か重い音が」
    「何かを引きずるような」
     ズリリリリリリrィ…と重いものを引きずる音がする。この団地は取り壊しが決まっているためこの階の住人はエクボと霊幻だけである。
    「エクボ、あれ、もしかして」
    「俺様はいねぇぇ――――!!」
     俺様キャラのエクボをここまで震え上がらせるマツオとは一体何者か。エクボはここが三階である事も忘れているのか窓から脱出しようとする。しかし、次の瞬間。
    「お邪魔するわよぉ❤マシュマロちゃん、どこに行くのかしら?」
     黒いスーツに身を包み、黒ぶちメガネを掛けた男が玄関を開けてリビングに立っていた。唇は紅を指したように赤く、端正な顔立ちに赤さび色の傷跡が特徴的な男である。いや問題は容姿ではない。その手に握られているものが、映画の中でしか見た事がないような巨大な斧だった事であった。本物だ。これはヤバい。
    「ままままままっつおさん」
    「マリトッツオみたいに言ってもダメよ。原稿は出来てるのかしら?あーら、この喘ぎ声の羅列から始まる脚本って斬新ね。で、原稿は?」
     巨大な斧を間近に突きつけられてエクボが涙目で震えながら答える。
    「できてましぇん…」
    「そう。はい、わかったわ。じゃ次の作品は『カメラは止めないで❤モブ男10人VS俺様はタチだ!エクボ監督ハメ殺し!初めてのネコちゃんに絶頂が止まらない』よ」
    「絶対嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――――――――――――!!!!!!」
     エクボの絶叫虚しく華奢に見える男が巨大な斧と180を超える男を連行していく。
     あとに残された霊幻は。
    「エクボ、俺お前がネコなのはなあ…。頑張ってねー」
     結局霊幻にまで裏切られた形となったエクボは新横浜のマツオのオフィスにまで引きずられ、その日のうちにVTuber某氏の脚本を書きあげていた。これを機にエクボがAVを卒業し、映像作品を発表する事になってもマツオプロモーターは脚本の原稿の催促に現れ、エクボの尻の貞操を賭ける羽目になったのであった。
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