都合の良い関係って息苦しい、なんて今更気付く。
割り切れないところまで来てしまったことを自覚しながら、明石さんの手が離れていくのをぼんやりと見つめる。彼の目に視線を合わせられない。
「ほら、曲始まった。誰かと踊ってきや、怪しまれてしまうよ?」
「は、はい」
「自分も適当にやっときますから。また後で」
後ろ姿を見つめながら、ダンスホールにごった返す正装の波に飲まれる。誰の手を取っていても、どうしたって視線は彼に向く。あの葡萄酒に青みをひとさじ加えたような色の髪を、どんな人混みの中でもいちばんに見つけてしまう。気もそぞろにしていると相手の足を踏んでしまいかねないので、音楽に合わせて必死に踵の高い靴出足踏む。
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