記録1
探そうと思ったことは正直無かった。前の人生での記憶は鮮明なはずなのに、成長とともにまるく、なんの感慨もない記録になっていく。父を殺した自分も弟を殺した自分も、母を失った自分も今は「あった」ことしかわからない。
そこに何か感情があるかと言えば「無い」のだ。弟はどうだか分からないが、いつぞや「俺がお前を殺したのを覚えてるか」と聞いた事がある。(今にして思えば、この頃から自分には前世の魂の一片も残っていなかったのだろう。)弟は「覚えてる」とだけ答えた。「でもありゃあ、俺が悪いな」とも。(なんとも他人事に語るので俺も笑ってしまったものだ。)
そうして愛してるぜ、ロシー。そう伝えると俺も愛してるよ、ドフィと当たり前に返ってくる。
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