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    bar928_kuzuha

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    bar928_kuzuha

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    キスブラでエイプリルフール。

    今日は珍しくブラッドが昼食に時間が取れるとのことで、屋上で花見でもしながら何か食べれる物を、とオフの日にも関わらずタワー内でキッチンに立っている。
    たまには息抜きも出来るようにと昼食の用意を申し出たら、目に見えて分かるくらいブラッドが喜んでいたものだからつい気合いを入れてエプロンを巻いたりなんかした。
    花見を想定して作るものとなると、サンドイッチも悩んだが割と手軽な和食、オニギリにした。凝った具材は用意できなかった為、日本でも人気らしい色とりどりなふりかけ状のおにぎりの元を混ぜて握った。
    玉子を巻くように焼いて、彩りにソーセージと、最近好評だった唐揚げを容器に詰めていく。
    ブラッドの分だけ作るのも妙な雰囲気だから、パトロールにむかうディノとジュニアの分と、同じくオフだが昨夜帰りが遅くまだ惰眠を貪ってるフェイスの分も一緒に作ることにした。
    ディノとジュニアの分は、ディノが今にも振り回しそうな勢いで喜んで持って行った。フェイスの分も雰囲気だけでもと容器に詰めて共有スペースにメモと共に置いてきた。
    ブラッドとオレの分は、特別にスープジャーに味噌スープを入れて持ち出す。
    さて屋上に向かうかと廊下を歩いていると、ブラッドからの着信に携帯が震えた。
    「おー、いま向かってるぞ〜」
    『…すまない、少し遅れる』
    「ん?別にオレはいーけど、なんかあった?」
    『…先程回収したサブスタンスの攻撃を受けた為、検査を』
    「はァ!?」
    『落ち着け。検査をしていて、いま結果が出た。検査結果を持参して屋上で話した方が効率的だ。5分ほどの遅れで着く』
    ブツッ。
    言いたいことを一方的に言って切れた携帯画面に文句を言ったところでどうにもならない。逆にこの暴君っぷりはいつものことだから、きっと大したことはないのだろう。そう言い聞かせながら足早に屋上へと足を動かす。



    オレが屋上に到着するのと、ブラッドが屋上に到着するのは意外にもほぼ同時だった。
    少し先にベンチに座っていたオレに向かって、ブラッドが神妙な顔で歩いてくる。歩いている姿を見る限りは怪我もないようでひとまず安心する。
    「おいブラッ…」
    早速検査結果とやらを聞こうと身を乗り出すと、ブラッドは手で制止してゆっくりと横に座った。
    「まずは聞いてくれキース」
    少し躊躇うような素振りに、見た目では分からないような怪我やサブスタンスの影響があるのかと身構える。
    「実は…」
    ゆっくりと口を開いているのか、そう感じているのか、やけに時間がゆっくり流れているように感じた中で、ブラッドが発した言葉に完全に時間が止まった。

    「妊娠した」

    鳥のさえずりの音。
    風に葉が擦れる音。
    ひらひらと舞う花びらがやけにゆっくりで。
    一瞬全ての時が止まったように感じた。
    ブラッドはどこかスッキリした表情でオレの顔を確認する。
    「……………………………………え?」
    自分でも間抜けな声が出たと思う。
    妊娠?
    いやいや確かにヤることヤってるけど、男同士だぞ?
    いやでもサブスタンスの影響を受ければ可能性がゼロってことはないのか?
    そもそもなんでコイツは平然と弁当に手を伸ばして
    「弁当食うタイミングか!?」
    思わずツッコんだ。
    ブラッドは自身の能力で鉄製の箸を生成して頷いている。
    ん?オレ箸忘れたっけ?いや、ちゃんと弁当を入れてきた袋に入っている。
    「これが、サブスタンスの影響だった」
    ブラッドから手渡された書類を受け取り目を向ける。そこには簡素に検査結果と説明が書かれていた。未だ事態を飲み込めていないオレには気にもとめず、ブラッドは弁当を開けて目を輝かせている。

    [検査結果]
    身体異常なし。
    インペリアルジャッジ抑制化。
    [解除方法]
    他人に嘘をつき、心底驚かせる。

    「………はぁ?」
    書類から顔を上げれば、ブラッドは呑気におにぎりを堪能していた。
    味噌スープで一息ついたブラッドが口を開く。
    「検査に立ち会った者では心底驚かせることは不可能だし、事前に説明しては意味がない。他の者では嘘の加減が分からないから、キース、お前がタイミングも人選も最適だった」
    能力で箸を生成できた事から解除は成功だ、と得意気に笑みを浮かべて、卵焼きを口に運ぶ。コイツはやっぱり暴君だ。
    一瞬、ほんの一瞬、ありえるかもと信じたオレの純情を弄びやがって。
    文句の一つ二つ、今回はこっちに分があるだろうと口を開きかけて、やめた。
    花を見ながらオレの作った弁当を上機嫌で頬張るブラッドを見て、当初の目的を思い出す。ブラッドに怪我もなくサブスタンスの影響もない。それでいいか。
    安堵からか、春の陽気もあってか、そんな気持ちになった。
    「…もっと可愛げのある嘘はなかったのかよ」
    「ふっ…お前の作るご飯はいつも不味いな」
    「そりゃどーも。心がこもってないからな」
    「二度と食べたくないくらいだ」
    「かわいくねぇ〜」
    いつもの軽口のテンポで、いつもとは違う、気持ちとは正反対の言葉を交わす。
    そういえば今日は4月1日だったなとブラッドが呟いたが、お互いに嘘のネタばらしは必要ないと、どことなくいつもより軽い春の空気にどちらともなく吹き出して笑い合った。


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