凄いものが撮れてしまった。
これはレア中のレアだ。
携帯の画面に収まった写真に目を向ける。
そこには、うっすらと口を開けて欠伸をしているブラッドが写っている。
片手には携帯、もう片手にはマグカップを持っている為咄嗟に手で隠せなかったのだろう。そもそもブラッドの欠伸自体が珍しいのでマジでレアだ。タイミングばっちりでベストショットと言ってもいいだろう。
なんとなく、リラックスしながら携帯を見ているブラッドを写真に収めたくなってカメラを向けたら偶然タイミングが合ってしまった。
(でもなぁ…)
画面の中のブラッドをまじまじと見る。顔がいい…ってそうじゃない。
昨日、予定外に連れ込んでしまった為に普段の部屋着ではなく少しヨレたスエットを着ているブラッド。それもタワー内の研修チームの部屋ではなく、ブラッドの趣味とイメージからかけ離れた私室で。
よく見れば分かる、所々にうっすらと見える独占欲の証に、セットされていない髪に完全にオフであるメガネ姿。
テーブルに残されたもう1つのマグカップ。
(これはエリチャンには載せられねぇな)
匂わせなんてレベルじゃない。大炎上だ。
ただ、その一枚の写真を撮る為には限られた条件をクリアしないと撮れないことだと思うと、優越感と満足感に頬が緩む。
カシャッ。
突然のシャッター音に顔をあげれば、ブラッドが携帯のカメラをこちらに向けていた。
「え?なに?」
「人を隠し撮りしてニヤついている姿を収めただけだが?」
「げ。バレてたのかよ…」
「ふふ、ベストショットだな」
ポン、と軽い通知音と共に送られてきた写真には、ニヤつく、というよりは驚くほど穏やかに微笑む自分が写っていた。