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    bar928_kuzuha

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    bar928_kuzuha

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    書き下ろし展示小説です。
    キスブラWebオンリー開催おめでとうございます!!

    お迎えコールを今夜も鳴らして








    PCのモニターに向かいながら、横に置いた携帯にちらりと目を向ける。携帯端末の画面は真っ暗で部屋の内装を反射で写すのみだ。
    先程から何度この仕草を繰り返しただろうか。
    はぁ、とため息を吐いてPCをシャットダウンする。
    こんな状態では仕事は捗らないし注意力散漫では非効率的だ。
    自分でも何故こんなにも携帯をきにしているのか、理由は明白だ。

    キースからのお迎えコールが無いからだ。

    昼間、上機嫌なキースから「今夜飲みに行くぞ」と聞いた際にてっきり誘われるかと思ったがそのまま別れを告げられ拍子抜けした事と、期待していた自分に驚いた。
    キースにはキースのコミュニティがあるのもわかるし、誘われたとしても実際仕事が残っていたため行けなかったのだが、それはそれとして、だ。
    ならばきっとお迎えコールが鳴るだろうとおおよそ普段鳴る時間になっても携帯が騒ぐことがなく、静かな時間がより心を波立たせた。

    はぁ。

    らしくない、と思うが再度ため息をつく。
    そう、らしくない。
    なにも電話がかかってくるのを待つ必要はない。
    どうせ仕事が進まないのであれば気分を変えてしまうのも効率化の為だ。酔い潰れた酔っ払いを回収するよりもほろ酔いの酔っ払いを回収する方がラクだし、キースの酔い加減によってはタワーに戻ってからなら1杯くらいは付き合ってもいい。
    考えとらしくない言い訳をまとめたところで携帯を手にしたタイミングで画面にはキースからの着信が光った。
    「…なんだ」
    『あれ?機嫌わりぃの?』
    「…仕事中だっただけだ」
    『ふ〜ん?終わった?つーか終わりにしろよ

    な?な?、と上機嫌な酔っ払いはこちらの気も知らずに呑気に名前を連呼する。
    今日何度目かも知れないため息をつく。
    「…まったく、今どこに居る」
    『ん〜?BARエリオス』
    「…屋上?」
    あまりに予想外の場所に思考が止まる。
    『そ。だから早く…今から来いよ。待ってるからな〜』
    こちらの返事を待たずにプツッと通話は切れた。
    せっかく覚悟を決めたのに向こうのペースに乗せられたのは少し癪だが、ここで意地を張っても仕方がない。
    PCのシャットダウンを確認してまだ肌寒いだろうと上着を2つ持って部屋を後にした。




    屋上に着くと、あまりの絶景に思わず足が止まった。
    「お、来たな〜」
    キースが近くまで迎えに来て、手を取り歩き出す。その間も景色に目を奪われてキースに促されるまま歩く。
    屋上には、満開の桜の木が1本咲いていた。
    「これは…」
    元々屋上には桜の木はなかったはず。
    「実はウィルに頼んだ」
    「ウィルに?」
    「桜の枝をベースに、能力で一夜だけ。ウィルもブラッドを花で癒せるならって喜んでたぞ」
    はらはらと舞い落ちる桜の花弁が屋上のライトアップの中で踊る。それも、一夜限りの桜。
    「日本なら今頃が桜の見頃なんだろ?せっかくなら花見酒を飲みたいと思ってさ」
    「…ならちゃんと誘え」
    「ウィルが失敗したら申し訳ないから、ってな。まぁルーキー共も成長してるからオレは大丈夫だと思ったけどな」
    「そうか…ウィルにも礼を伝えておこう」
    「おー。そんでもって、オレにもお礼、よろしくな」
    なにを、と口を開く前に目の前に重箱が出された。
    傍にあるベンチに腰を掛けて重箱を開くと、色とりどりの和食が詰められていた。キースが横に座り、上機嫌に日本酒やビールも取り出す。
    「BARエリオス一夜限りの花見酒、始めようぜ〜」
    「…今日はお誘いコールだったか」
    「ん?なに?」
    「いや、こっちの話だ」
    先程までのため息はどこへやら、気分が上がるのを感じる。
    「キース、ありがとう」
    「どういたしまして」
    片やビール、片や日本酒とそれぞれ好きな飲み物を手に持ち、軽く合わせる。

    鳴らないお迎えコールも、悪くない。



    「「乾杯」」
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