死がふたりを導くまで 藍思追はその日も年老いた藍忘機の世話をしていた。藍忘機の背中は日々の鍛錬によって背筋は自然とまっすぐ伸び、いかにも藍家の雅正を表した姿そのものだ。
そんな含光君は最近、何かを仕切りに描いている。一見すると、いつもの筆を用いた仕事と変わらないように見えるが今の筆は少々速く動かされ、含光君の顔色を見ると少々焦りを感じているようにも藍思追には感じられた。
ここ最近そんな様子が続いている。ふと何があったのか気になった藍思追は後ろからゆっくり机の上に書かれた中身を見た。
「含光君は絵がお上手ですね」
何気なく藍思追がそう言うと、藍忘機はゆっくりと振り返った。その顔には秘密が知られた子供のような驚きが滲み出ている。
6924