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    かろん

    @ka_rongbf

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    主にパーエル。ネタの切れはしとか。勢いに任せたものとか。

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    かろん

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    ヴェインちゃんとモートさん(とボスコさん)
    コッレガーレの話。
    妄想かつ捏造大会。

    実りの季節今年もまたこの季節がきた。今ではもう何処にでもある、ありふれた果実であるコッレガーレの実る季節。
    依頼で訪れた街の近くには広い果樹園がありコッレガーレの実があちこちに実っている。もう数ヶ月もしたら甘い香りを放ち収穫を迎えるだろう。

    街の人達がみんなで世話をしているらしいとグランから聞いたエルモートはふらりとその果樹園を訪れていた。

    程よく伸びた枝葉に実る赤い果実。数は多いように思えるが
    (…少し、小せェか?)
    本来リンゴ位の大きさになるはずの果実はふた回り程小さく、どの木を見ても小振りなモノばかりが目についた。
    「おや、どなたかな?」
    果樹園の入口でコッレガーレを見つめているエルモートに麦わら帽子の老人がのんびりと声をかける。
    人の良さそうな老人はこの果樹園を管理している街人の1人らしい。
    「ジイさん、ここのコッレガーレはこういう品種なのか?」
    コッレガーレがありふれた果実になってからそれなりに年数が経っている。島ごとに新しい品種ができていてもおかしくはない。
    「いいえ?原種のまま育てております」
    「それにしちゃ実が小せェ気がすンだが…」
    そう言うエルモートに老人はおや、とわずかに驚きを返す。
    「そうなんですよ。種を頂いてこの土地で栽培を始めたものの、どうしても他の島の物より小振りになってしまってあまりいい値がつかんのです」
    そういう品種ならまだしもただ小さいだけでは市場では不利でしかない。
    「どうしたものかと、皆で相談もしているのですが…」
    あまりいい案も見つかっていない様で麦わら帽子の老人の表情が曇る。肩を落とす老人を一瞥しエルモートは近くの木へと視線を移す。
    「少し見てもイイか?」
    「ええ、構いませんよ」
    にこりと柔和に微笑む老人に簡単に礼を言い、木の枝や葉の育ち具合等を確認していく。
    広い平地に作られた果樹園で日当たりは申し分ない。果樹園を大きく囲うように網を張り、鳥などからも守っている様だった。ふむ、と思い木の根元へとしゃがみ込み土を手に取り感触を確かめる。
    「土が硬ェな」
    「え?」
    座ったままの体制で声を投げると、麦わら帽子の老人は同じ様に屈んでエルモートの手元を覗き込む。
    「土が粘土質だからか硬くて根が張りきれてねェ、少し解してやるか砂かなンか混ぜて柔らかくしてやった方がイイ」
    指でほぐした土を地面に戻し、手に残った土を払いながら立ち上がり枝へと手を伸ばす。
    「あと枝が多すぎンだよ、細かいやつは切っちまった方が残った枝も実もよく育つ。それと…」
    「ちょ、ちょっとお待ち下さい!貴方は一体…」
    少しの力でもぱきりと折れたか細い枝を手に更に続けようとしたところを慌てた様子の老人が遮る。ついつらつらと指南してしまった事に気が付き、はたと口を噤む。
    「アー…、えと、」
    気まずくなって俯き、目と耳を泳がせていると
    「あれ?エルモート?何してるんだこんなトコで」
    偶然通りかかったのか大柄の金髪の青年が名前を呼ぶ声が響き、次いで賑やかな足音が駆け寄ってくる。
    「ヴェイン…」
    見知った人物の登場に気まずい空気が断ち切られ、思わず安堵の息を吐いた。
    「あぁ〜!コッレガーレか!好きだもんなエルモート」
    「あぁ、まァ…」
    ハキハキと告げられこれはこれで少しの恥ずかしさを感じてしまう。
    「…『エルモート』?」
    側にいた果樹園の老人がヴェインが呼んだ名前を反芻するように口にするのをエルーンの耳が拾う。そういえば名乗っていなかったなと今更思い出した。
    「あぁ、ジイさん、名前も言わずに悪かったな俺は…」
    「エルモートさんというのは『あの』エルモートさんですか?!」
    遮るように言った老人はなぜか期待に満ちた顔でエルモートを見る。その勢いに思わず後退るとがしりと力強く手を握られた。
    「すぐ!今すぐ若い者を呼んできます!ぜひご指導ご鞭撻頂きたく!!」
    「ハァ?!」
    最初の穏やかさは何処へやら、捲し立てる様に言った老人はエルモートの手を掴んだままぶんぶんと振り
    「ここで待っていて下さい!!」
    そう言うが早いか止める間もなく老人は街の方へと走り出してしまった。
    「……えっと、何があったんだ?」
    状況を掴めないヴェインは呆気に取られたまま老人の後ろ姿を眺めるエルモートへと声をかける。事の次第を手短に話していると、数人の若者を引き連れた先程の老人が戻って来た。
    「早ェな…」
    逃げ出す間もなく包囲されエルモートの耳がぺたりと下がる、隣りにいたヴェインも勢いに押され、とりあえず成行きを見守る事にしたようだ。

    「アナタがエルモートさんですか?」
    「…アァ」
    老人が連れてきた若者の1人がおずおずと声をかけてくるのに相槌を返せば、なぜかぱぁ、と表情が明るくなる。
    「本当に赤いんだな…」
    奥に居た男がぽつりとこぼす言葉に赤い耳が揺れた。
    「そういやアンタら、なンで俺を知ってるンだ?」
    マナリアに呼ばれた時のように本人の預かり知らない所で噂が独りで歩いて居るのだろうか、グラン率いる騎空団は良くも悪くも顔が広すぎると思う。
    当然浮いた疑問を麦わら帽子の老人に投げれば、これです、と草臥れた手紙を大事そうに取り出してみせる。
    「コレは…」
    「手紙?」
    やり取りを見守っていたヴェインも一緒になって1枚の手紙を覗き込む。そこには控え目だけれど丁寧に書かれた字が並び『もしも育成で困った事があったらエルモートに聞いてみるといいかも知れません。赤い耳の優しいエルーンです』コッレガーレ育成の指南書の説明と幾つかの注意点の後、そう締め括られていた。
    「連絡を取ろうと何度か手紙を出したりもしたのですが、何年も前に亡くなられたと聞きまして…」
    「ボスコ…」
    手紙の最後に添えられたサインを思わず指で撫ぜ、呼ぶともなしに読み上げる。
    のんびりした声がこちらの名前を呼びふわりと笑う顔が浮かぶ、見ていた手紙の文字がわすかに滲んで目の奥が熱を持つ。
    「エルモート?」
    黙ってしまったのを心配したのかヴェインの大きな手がそっと背中に触れる。優しい手の主には大丈夫だと小さく答えてから、ぎゅっと目を閉じ滲む視界を無かった事にして深く息を吸って、吐く。
    「…何から知りたいンだ?」
    代わりになれる程の人の良さはない気がするけれど、ここで会ったのもきっと何かの縁だ。
    老人と若者衆が僅かに歓声をあげて口々に感謝を伝えられたあと、即席のコッレガーレ講習が始まった。

    土壌の改良や枝葉の剪定に始まり他にも細々とした事を街人達に指導するエルモートは、力仕事を手伝うヴェインへと声をかける。
    「付き合わせちまって悪ィな」
    「全然!むしろこういうの好きだから楽しいぜ!」
    にこにこと愛想よく笑う頬に土汚れまでつけて楽しそうに動き回る様は、大きな人懐こい犬のようで微笑ましくすら思える。
    「ありがとな」
    思わずふわりと笑うエルモートにヴェインはいいって、と笑い返しながら心の内でわずかに肝を冷やす。
    (パーさん居なくて良かったぁ〜…)
    今ここに彼がいたら、分かりやすく燃やされた嫉妬で焼かれていただろう。かの炎帝はわりとというかかなり容赦が無い、エルモートに関しては尚更だ。消し炭にはならずに済んだ事に、冷や汗をぬぐってから安堵のため息を吐き作業を再開した。


    果樹園の手伝いを終えたのはちょうど昼時に差し掛かる頃で、麦わら帽子の老人たちからお礼にと昼食用のサンドイッチや果物をたくさん貰ってしまった。何処かで食べようか、というヴェインの提案に乗り、果樹園へと水を引いているという近くの川へと足を運んだ。
    「ずいぶん沢山くれたなぁ〜」
    さらさらと綺麗な水が流れる小さな川の河原でちょうど良い平地を見つけて座り込み、ヴェインが貰った軽食や果物たちを広げる。そのまま食べられそうな物と艇へと持っていった方が良さそうな物とをうきうきと選別し始めた。
    「流石に食べきれないから、残りはお土産にしようか」
    嬉しそうに笑うヴェインにエルモートはそうだな、と頷きを返す。よく育った作物と果樹園の小ぶりなコッレガーレ。来年にはきっと他所の物と大差のない大きさの果実になるであろう事を祈って、赤い実にサクリとナイフを入れる。
    半分に切ったコッレガーレの片方を差し出すと、代わりにサンドウィッチが渡された。
    「いっただきま~す!」
    「…ます」
    声も高らかに大きな掌をパチンと合わせたヴェインに習い小さく呟きエルモートも手を合わせる。
    コッレガーレの瑞々しい切り口を齧り、食べ慣れた果実の甘さを味わう。あの日から幾度となく口にしてはいてもその度に新鮮に記憶が呼び起こされる。
    『僕はね、この果実を沢山の人に味わって貰いたいんだ!』
    キラキラと瞳を輝かせて夢を語る彼の姿。
    『エルモートには自分だけの夢を見つけて欲しい』
    柔らかく笑いながら頭を撫でてくれる大きな手。
    『……ひとりにして、ごめんね』
    小さく零した最後の言葉。
    口いっぱいに広がる甘さとともに噛み砕いて全てを飲み込んだ。

    半分に分けたコッレガーレを食べきり、ふと息を吐くと正面に座るヴェインが声をかける
    「エルモートには、特別な物なんだな」
    これ、と手の中の赤い果実を大きな口で頬張り
    「俺も好きだぜ!甘くって美味しいよなぁ〜!」
    そう続けて太陽みたいに笑った。
    眩しいくらいの笑顔に、エルモートもつられて笑う。
    「アァ、特別に好きなンだ」
    あの日夢を語ってくれた恩人の、叶えた夢と共に生きている。甘い甘い赤い果実はこれからもずっと人々に愛されていくのだろう。
    広く晴れた空に実りの季節の風が吹き抜け、なにも心配はないと言われた気がした。
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