まどろみの君船を漕ぐ様に、鳥が緩やかに羽ばたく様に、赤い大きな耳が視界の端でゆらゆらと揺れている。更に言えば肩に預けたその耳の元、柔らかな赤髪の頭も時折かくりと落ちかけては戻りを繰り返している。
長い前髪の間の金色はだいぶ前に瞼の裏に隠れたきり姿を見ていない。
「横になったらどうだ?」
「…ンー」
夜の散歩と称した見廻りから戻るなり渋い顔をしてパーシヴァルの隣に無言で座り、気がつけばこの有様。どう見ても睡魔の方が優勢なのに、エルモートは頑なに其処を動こうとしない。
「アンタも、寝るならねる…」
もぞもぞと告げる語尾も若干怪しい主張は、今夜何度も聞いたもの。
「もうすぐ終わると言っているだろう?」
手元の書類を示しこれも何度目かの言葉を返す。
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