Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    かろん

    @ka_rongbf

    @ka_rongbf
    主にパーエル。ネタの切れはしとか。勢いに任せたものとか。

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 17

    かろん

    ☆quiet follow

    ショウくんとモートさん(とグランくん)。
    季節エピネタバレありです。

    光り溢れる夜団長であるグランを乗せてイルミネーション光る街を駆け抜ける最中、ふと通りかかった路地で向かいから歩いてくる見慣れたエルーンの姿を見つけてスピードをゆるめる。

    黒いフードから赤い耳をのぞかせて、雪も積もる冬の夜だというのに相変わらずの風体。
    「エルモート!」
    後ろに乗っていたグランがぶんぶんと手を振りながら声をかければ、赤い耳がぴこりと跳ねて街を眺めていた視線がこちらを向く。
    「団長サンに、ショウじゃねェか」
    だいぶ機嫌が良いようでいつもは鋭い金色も柔らかく笑み、声も少し明るい気がする。
    「エルモートは買い出し?」
    よいしょ、とケッタギアから降り駆け寄った団長がエルモートの抱いた紙袋に気付く。
    「ン?あぁ、調味料が切れちまってな」
    今日は朝から厨房で忙しなく動いていた彼の姿を思い出す。火を存分に使えるからとこの時期は毎年そうらしい。
    「そっちも随分楽しそうだなァ?」
    単車を押してきたショウに何時もの顔で笑いながら言い、流れるような動作で雪で少し濡れた髪に触れる。急に近づいた距離に驚く頃にはふわりと暖かな手に頭を撫でられていた。
    「?!」
    「寒ィんだから気を付けろよ」
    炎の魔法の気配を感じ、どうやら濡れた髪を乾かしてくれているのだと気づく。ショウの方が背が高いので自然と上目遣いになる目線に何故か息が詰まり、何も言えなくなったショウはされるがままに頭を撫でられる。
    「おし、乾いたな」
    撫でていた動作の最後にぽんぽんと頭を優しく叩き、エルモートは団長へと向き直る。
    「ほら、団長サンも」
    「うん」
    グランはもう慣れたものの様で、言われる前からすでに頭を差し出していてエルモートも迷いなくふわふわと頭を撫でている。

    その様を視線の端で捉えつつ先程の出来事を反芻して咀嚼する。
    (いや、いやいや待て)
    今頃になって心臓がどきどきと鳴り出し、頬が熱を持つ。
    (普通、きっと普通の事なんだ)
    そう言い聞かせてもどうしてか嬉しくて、手のひらを思い出すように自分の前髪に触れる。
    「悪ィな、セット?崩れちまったか?」
    ショウの仕草に気づいたエルモートが団長を撫でながらギザギザの歯を見せて悪戯っぽくニヤリと笑う。
    「…no,problem」
    「ン?」
    「問題ないって」
    小さく溢したからか、いつもの癖で独特な言い回しだったからか聞き返された言葉を団長が伝え直す。
    髪は問題ない。問題はそこじゃない。
    そう思っても伝える言葉も気持ちも出ては来ない。
    「あんまり遅くなるンじゃねェぞ」
    グランの髪を乾かし紙袋を抱え直したエルモートはじゃあな、と2人とは反対の方へと歩き始める。
    「先公」
    居なくなってしまう前にと思わず掛けた声は少し上擦ったような気がする。
    「…Thanks」
    感謝を伝えたショウに簡単な相槌を返してエルモートは今度こそ背を向けて歩いていった。
    その背中が人混みに紛れるまで眺めてから
    「僕らも行こうか」
    グランがにこりと笑顔を見せてショウに声をかける。魔法で乾かされたグランの茶色の短髪はいつもより少しふわふわとしていて、もしかしたら自分の髪もそうなっているのだろうかと思いまたつい髪に手がいく。
    「ラッキーだったね!」
    「?」
    グランがニコニコと笑いながら嬉しそうに言うのに思わず首をかしげる。
    「エルモート、あれあんまりやってくんないんだよ」
    暖かくて気持ちいいよね~、とグランはのんびりと笑う。
    「…そうか」
    団長が居たからか、もしくはほんの少しでも想われているのか…確かな事は本人にしか分からない事だけれど。

    じわじわと暖かくなる胸の辺りを一度ぎゅっと握ってから、団長を後ろに乗せてショウはまたイルミネーション溢れる夜へと疾走り出した。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺🙏💞💞💞💞💞💞💞💞😭😭❤❤❤☺☺☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    sheera_sot

    DOODLE頭が煮えるほどあつい火曜日、閉店間際のスーパーで永遠の向こうにあるものに気がついたことの話をしてください。
    #shindanmaker #さみしいなにかをかく
    https://shindanmaker.com/595943
    こちらで書いたものです。バンユキだけど万理しか出てこない。
    バニラアイスが溶けるまで 見切り品の野菜の棚から少しくたびれた小松菜を手に取る。煮浸しでなら食べられそうだし、野菜しか食べない線の細いあいつには丁度いいおかずになる。自分用に半額シールの貼られた唐揚げもカゴに入れてレジに並ぶ前、冷凍ケースのアイスクリームがいやにおいしそうに見えた。
     スーパーを出れば日も暮れているというのに茹だるような暑さが待っている。部屋まで歩いて十分、少し溶けてしまうかもしれないけれど買って帰ればきっと千も喜ぶし。バニラアイスを一つだけカゴに増やして、列に並ぶ。
     俺の一つ前にはワイシャツの男がいて、エネルギーバーと栄養ドリンクだけを持っていた。カバンも持っていないから、多分中抜けして食べ物だけ調達しにきたという感じだ。お仕事お疲れ様です、なんて思いながらちらりと様子を伺う。限界まで緩められたネクタイに少しくたびれを感じるけれど、その目はなんだか生き生きしていた。こうやって打ち込める仕事をその人はしているのだろう。なんだか、羨ましい。
    642