束の間の休息定期的に開放される古戦場。
今回も強敵を相手取り連戦に次ぐ連戦を繰り広げる…はずだった。
「あれ?閉まってる…」
とある島の古戦場へと続く入り口の扉は固く閉ざされ、何かが書かれた小さな板が下げられている。
「…メンテナンス中、だってよ」
ビィが文字を確認し読み上げた。
「ありゃ、トラブルでもあったのかな」
色々と準備はしていたものの、閉鎖されているのではどうしようもない。ポリポリと頭をかきつつ、まぁしょうがないか、と団長であるグランはくるりと踵を返しグランサイファーが待つ港へと一旦戻ることにした。
「せっかく戻ってきて貰ったのにごめんね」
グランが炎を模した紅い刀身の剣を携えた騎士、パーシヴァルへと声をかける。少し前に国政を手伝うためにウェールズへと帰っていた彼は、古戦場の主力の一人として招集されていたのだ。
「別に構わない」
むしろ、と視線はちらりと隣を歩くエルーンへと向けられる。
「ゆっくり出来て、こちらとしては有難いぐらいだな」
2人の会話を捉えた黒いフードから覗く赤い大きな耳がぴこりと跳ねて揺れ、長い前髪から覗く金色が不服そうに赤い騎士を睨む。
「アンタが暴れすぎたんじゃねェの?」
ここに来るまでの道中、1つ目の魔物や四つ脚の魔物を完膚なきまでに焼き尽くした様を思い出しエルモートはため息と共に呟く。
「そんなに褒めるな」
「褒めてねェよ」
くつくつと自信たっぷりに笑いながら紅い手甲に覆われた指が、さり気なくエルモートの長い爪の指を絡めとる。その指を振り払うでもなくただ受け入れて、同じだけの力でそっと握り返す。
どんな理由であれ側に居られる事実を嬉しく思ってしまう。気を抜けば緩みそうになる顔を、フードの中に隠し口を引き結んで耐える。
その仕草に気づいたのであろうパーシヴァルが柔らかく笑った気がした。
「とりあえず明日までは待機になるけど」
前を行くグランが何かを察して振り向く。
慌てて繋いだ指を離そうとしても、しっかりと握られたそれはびくともしなかった。
「ほどほどにしてね?パーシヴァル」
こてりと首を傾げて幼さの残る仕草でしっかりと釘を刺す団長に
「善処しよう」
悠然とした態度でそう返す赤い騎士をじとりと横目で睨めば、緩く燃える紅色が微笑む。
久しぶりに見る見慣れた笑顔に少し諦めを込めてため息を吐いてから、明日までの僅かな暇を想いエルモートは赤い耳をふよふよと揺らすのだった。