「なぁフリスク。アンタ、夢は見てるのかい?」
汗で張り付いた髪の毛を払ってやり、額を撫でる。こうしてフリスクに触れるのは本当に久しぶりだと感じた。
丸く形の良い額、細い眉、閉じられた目の長いまつ毛。
サンズの胸に重苦しい後悔の念がのしかかる。
このままか。本当にこれで終わるのか。
なぜロードが起きない。
もう十分だ。苦しいはずだ。そうだろう?
セーブ・ロードはフリスクの意思で行われていたと考えていたが、発動に条件があるのだろうか。
意識がない状態では発動させられない可能性も考えた。失血でショックを起こして昏倒し、毒が回ってそこからずっと意識を保てなかったのだとしたら、フリスクが自身の状態に気が付かないまま身体が死んでいくこともあり得るのではないか。
リセットが起きなければフリスクは死に、永遠にこの世界から消える。もう二度と声を聞くことも触れることも叶わない。居なくなるのだ。
『ぼくが死んでもこの世界が続いたら、その時はぼくのことを信用してくれる?』
かつて幼い声にそう問われた。
フリスクが死んでリセットが起きなければ、きっと世界は一時の混乱と悲しみの後、時間とともに正常な流れを止めずに続いていくだろう。
リセットの執行者が消えた世界、サンズが望んだ、途切れややり直しのない世界だ。想像すると足元に暗く深い穴が空いたような気分になった。
フリスクが居なくなってもこの世界は、このタイムラインは、続く?
「……クソッ」
そんなものはお断りだった。