守護をきみに「やあ、賢者様。僕にちょっと付き合ってくれない」
優しくて、甘ったるくて、惹かれてしまうその甘美な声に晶はぶるりと身を震わせる。人好きのしそうなニッコリとした顔でオーエンは笑っていた。
オーエンの言うことは真に受けるな。
それは、賢者の魔法使い達から言われていた言葉であった。
オーエンは甘いものが大好きで、厄災の傷で心が幼くなってしまう。そして人の嫌がる顔が好きという悪趣味で、美しく気高くて強い北の魔法使いであること。
空気に緊張が走る。
「それ、拒否権はないですよね……?」
「クーレ・メミニ」
「ッーー!?」
ぎゅうんと引っ張られるような感覚。耳元で音が鳴って、右や左に引っ張られるような感覚。揉まれて、摩耗していくような気持ち。そして何時かが経って、辺りは静けさを取り戻す。目を開けるとそこは美しい夢の森だった。
1930