バーテンやってる国広の店に来た二人のサラリーマン。二人にカクテルを振る舞いつつ、銀髪の男が気になった。じっと見ていると、どうやら酒に強くないようで、カクテル一杯で顔を赤らめてうつらうつらと舟をこいでいる。頼まれたカクテルは少しアルコールが強いものだったため、もしかして…と国広は邪推した。しばらくしてすべて飲む前に銀髪の彼は酔いつぶれてしまい眠ってしまった。それを確認したもう一人の男は「仕方ないから」と眠る彼を無理矢理立たせて連れて行こうとする。
「待て」
そこで国広は声を上げた。
「あんた、わざと飲ませたな」
「何を言ってるんだ」
「アルコールに弱いんだろ、なのに無理に飲ませて酔い潰して、何をしようとしてるんだ」
声色を強めると、男は舌打ちをして銀髪の彼を置いて店を後にした。ふうと息をついた後「おい、起きられるか」と彼の肩を揺するも返事はない。「仕方ないな」と店のドアに釣るしている看板をひっくり返しクローズにした国広は店じまいをしつつ、すやすやと眠っている彼の寝顔を見つめた。
(…綺麗な男だな)
起こさないように抱え上げ、ソファーに寝かせタオルケットをかけてやる。入店したときとは違う少し幼い寝顔を見ながら、ひとり酒を飲むことに。
明け方に目を覚ました彼は、一人になっていること、店で泊ってしまったことに驚いて国広に謝罪する。国広は「構わない」と言い、少し考えた後。
「名前、教えてくれないか」
銀髪の彼は長義と名乗った。以降、長義は酒に強いわけではないのに度々国広の店を訪れることになる。