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    たけち

    @tk_3cr

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    たけち

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    先天的にょぱんださんでルチスパ!って思って書きかけて何年放置しとるんやお前……ってのを思い出したので着地点が決まったら続き書くつもり……あくまでもつもり……書けたら良いなぁ

    サラダな長官と猫の部下の話 ラッキースケベ。
     諸氏もよくご存じであろうこの言葉。偶然にも、不可抗力で、どうしようもなく、予想外に、図らずも、たまたま起こってしまった、セクシャルなハプニングがラッキースケベだ。ある意味当事者ではない別世界のどこかに居るか居ないかわからない誰かから見たら何ともメタ的でご都合主義なそれが、なんと今起こっている!
     いや、俺じゃなくて相手……いやいや、相手にとってこれがラッキーなのかどうかはわからねぇが、いわゆるそういう状況が起こっているのは事実だ。
     俺と、部下に。
     この、狭い浴室で。

     俺が私室で風呂場に入った頃、こいつが、ロブ・ルッチが部屋にきやがった……らしい。
     何の用かは知らねぇが、今もその手にファイルを持っていることから仕事関係だ、しかも急ぎの。それ以外でこいつがここを訪れることなんてあるわけないので絶対そうだ。
     多分ルッチは部屋の扉をノックしたんだろう、浴室に居た俺には聞こえなかったが必ずノックして声をかけたはずだ。許可無く入ることはしない男だということは分かっているからな。それは礼儀正しいとかじゃなくて、俺からの返事がなければそれを大義名分にして面倒臭いことをやらずに済まそうという魂胆からだ、こいつはそう言うヤツだ。
     んで、ちょうどそのとき俺が下に転がっていた石鹸を踏みつけ足を滑らせ、シャワーヘッドやボディブラシ、シャンプーのボトルやなんやかやを薙ぎ倒した過分に派手な音、プラス床のタイルで腰を打ち付けた際の盛大な悲鳴が返事の代わりに聞こえたはずだ。
     基本ウチの部下達は耳が良い。特にこいつとジャブラはゾオン系の能力者で獣以上の聴力──ついでに視力・嗅覚も──を持っていて、部屋に防音が施されていようが内部の音を微かなりとも拾う事が出来る。そんな良い耳なら浴室の派手な音と俺の悲鳴もよく聞こえたことだろう。
     目の届かぬ位置で上官の悲鳴を耳にしたとすれば、幼い頃からよく訓練された部下達だ。心の奥底でどう思っていようとも、一応上役の危機には反応するように出来ている。鍵のかかった扉など紙のように蹴破って、何となく原因の察しが付いていても、安否を確かめるために音の出所である浴室に飛び込むのは当然のことで、その素早い行動は褒められこそすれ非難されることはないだろう。
     ただし、その相手が浴室で真っ裸ですっ転がっている俺でなければ、の話だ。
     そんなこんなでさほど慌てた風もなく冷静に浴室のドアを開け、一糸まとわぬ上官が大股を開いてずっこけている姿を見て「長官ご無事で」と形式的に言いかけただろう無表情なルッチの口が「ちょ」と言ったところで止まる。
    「……」
    「……」
     床に落ちたシャワーヘッドから湯が勢い良く流れ続けて水音を立てている。
     うっすらと湯気の籠もる浴室内でお互い固まる上官と部下。俺とルッチ。
     自分の立場からすれば、例え安否を確かめに来たとしても無作法な部下にここで怒鳴り声のひとつでも上げるべきなんだろうが、その時俺の頭に浮かんだのは「バレたな」それだけだった。
     物心がついてから約30年、この世界に入って10余年、ひた隠しに隠してきた秘密がバレた。こんなしょうもないことで……
     風呂場でずっこけた俺は当然真っ裸で、無作法なのはこちらの方とも言うべきあられもない大股開きの俺と真正面から対峙したルッチには全てが見えているはずだ。
     通常男という性別にあるはずのものがきれいさっぱり無いということが、隠しようもなくばっちりはっきりその良すぎる目には映っていることだろう。
     世界政府の司法長官兼CP9司令長官という立場の男が、実は女であると言う事実が。

     いくらこの大海賊時代という能力次第の世の中だと言っても、男と女では明らかに差がある。女は男に仕え産み育てるものというのが一般的に当たり前の中、のし上がろうとするなら女であるというだけで状況は圧倒的に不利だ。
     完全実力主義の海軍ならまだしも、封建的な超保守主義が罷り通る文官には性差は致命的とさえ言える。男女の比率的にそこそこの地位に就いている女もそれなりにはいるが、あくまでもそこそこでそれなりでしかない。それ以上の重要なポストに女が据えらることは無いに等しいというのが現実だ。
     そんな中でも自身の「女」という性を利用するという奥の手もあるにはあるが、利用した相手より上に行くのは土台無理な話で結局そこそこ止まりでキャリアは終わる。ついでに後々ややこしい事になるかもしれないリスクもあるので、それは悪手でしかない。
     どうしたってこの世界で女として功成り名を遂げるのが不利であるならば、そこそこでそれなりの位で我慢するか、あきらめて将来有望な誰かに嫁いで女としての栄達を目指すのが現実的だ。普通はそうだ。
     だが、娘を授かったウチの親父殿の考えはそうじゃなかった。
     女が駄目なら女を男として育ててしまえばいい、バレなきゃいいだけで跡継ぎだって優良な種さえあれば良いだけで時期を見て一年ほど病気療養とか何とかで雲隠れさせれば切り抜けられるし何の問題も無いだろう、孫も見られて家は安泰万々歳! という問題だらけの案を思いついて実行に移したわけだ。
     そもそも俺に兄か弟でもいりゃそんなことをする必要性もなかったんだろうが、生憎俺は家の長子として生まれ、母親は元々身体が弱かったこともあり産後の肥立ちが悪く初めての子である俺を生んでから数日後に亡くなった。妻に心底惚れていた親父殿は後添いを娶る気など端からなく、跡継ぎの男子を儲ける事は絶望となった……故の、女児を男児として偽った出生届である。
     結果、男として世界政府に入った俺は何の疑いを持たれることも無く、見事想定以上に早く司法の長とCP9司令長官の役職を手に入れられたというわけだ。世界政府ってのもザルというか節穴というか、まず間違わないだろうという当たり前の前提としての箇所についての不正には意外にも気付かないもんなんだよなぁ……もちろんバレりゃ公文書変造行為で俺も親父も罪に問われて全てを失うのは当然だ。それくらいで……と思われるかも知れないが、権謀術数渦巻く政局争いの中では針穴以下の小さなほころびでも十分な命取りになるのだ。
     そうして男児として届けを出され育てられた俺は、幸か不幸か二次成長を過ぎても然程女を強調した体付きにはならなかったので男としての生活にもなんら問題はなく今までそれがバレることもなかった。もちろん脱げばすぐに分かるだろうが、そういう状況になりそうな場面でも上手くかわしてようやくここまでこれたはず、だったのに。
     こんなしょーないもことで、しかもよりにもよってバレたのが上官である俺に対して何の遠慮もなく口答えしてくるいちいち煩せぇヤツで、こりゃ上に報告されて終わりだなと、俺は一周回って冷静な頭で思っていた。湯煙の立つ浴室で、素っ裸で股をおっ広げたままで。
    「……長官、ご無事で?」
    「……おう」
     お互い固まったままたっぷり30秒ほどの沈黙の後、特徴のある眉をピクリとも動かさないルッチがいつものように無感情な声で問い、それにつられるように俺も平素の通り鷹揚に言葉を返した。
     それでも……それでもちょっとずつ広げたままの脚を僅かながらでも閉じようとしていたのは、どこかに落として無くしたと思っていた女としての羞恥心ってやつが残っていたのかもしれない。
    「立ち上がれますか?」
    「腰打った、いてぇ」
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