今は、これで 夢ノ咲学院の平和的支配において、情報は非常に重い価値を持つ。学院内に協力者を増やし、ネットワークを張り、隅々まで何が起きているのか逐一把握している。だからボクはそれなりに知っている。自分の目の届かない場所となった、新設された学科のことも。その第1号である、今はもう教室が離れてしまったあの子のことも。
学院内に張り巡らした抜け道を使い、プロデュース科の校舎へと足を踏み入れる。よくもまあ、この1年で学び舎として整備したものだ、とやや揶揄を込めた感想を浮かべながら目的地へ向かう。
どれほど整えられ、その場で学ぶ者が増えても隙間は存在する。きっと今のあの子ならその場所を選ぶだろう。この人目のない空き教室を。
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