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    solt_gt0141

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    ※モブが少しだけでます
    会社員七海と花屋の伊地知。

    花屋の君②『七海、また前の花屋さん行ってくれないか?仕事の商談が入ってしまって行けなくてな』

    またもや予約していた花束を受け取りに店に入ると彼が真剣な面持ちで作業をしていた。
    私が入ってきた事にさえ気付かず、小さな袋の中に一枚ずつピンセットで何かを詰めている。
    そして詰め終わったのか布の口をきゅっと紐で縛った。
    そのタイミングで「こんにちは」と声をかけると、彼がこちらを見た。
    「七海さん、こんにちは…もしかして、入ってきてしばらく経ちますか…?」
    しばらくではないが、わざと「そうですね」と答えると彼の顔がみるみる赤くなっていく。赤面を隠す為か両手で顔を抑えるも、残念ながらバレバレだった。
    「すみません、気付かなくて。本当に申し訳ないです…」
    「お気になさらず。注文の花束をお願いします」
    「はい!お持ちします!」
    花束を持ってくる間、店内を見ていると先程彼が作業していた机の上が気になった。
    赤やピンク、黄色の花びらが机に置いてあり傍にはピンセットと小さな袋がいくつか置かれていた。近づくと良い香りがした。

    「ポプリを作ってたんです」
    顔を上げると花束を手にした伊地知がそこに居た。
    「ポプリ?」
    「花びらを乾燥させて瓶や袋の中に入れて香りを楽しむものです」
    花束に付けるリボンを作りながら話し始める。
    ちらとレジ横を見ると、様々な容器や袋に入ったポプリが売られていた。
    「これを、貴方が?」
    「趣味みたいなものです。ただ、一度やり始めると熱中しすぎてしまうようで先程の様な事もしばしば…」
    集中すると周りが見えなくなってしまうのか。そして「しばしば」という事は何回か同じような事があり、客を待たせた事もあるのだろうと推測する。
    恥ずかしさからか彼の耳が赤い。なんだかとても可愛らしく見える。
    「可愛いですね…」
    思わず口にしてしまった。はっとした時には遅く、彼の耳に今の言葉が届いたようでこちらを見ていた。
    「ポプリ…」と取ってつけたように言うと「ふふっ」と彼は嬉しそうに笑った。良かった、上手く誤魔化せた。
    「ただただ、枯らしていくのは勿体ないと思っていて作ったので…そう言ってもらって嬉しいです」
    以前に同僚の恋人の前で同僚を褒めた事がある。その時、その恋人は誇らしい表情をしていた。それと同じ気持ちを今の彼から感じる。
    『この人は本当に花が好きなんだな』
    まるで、花が恋人みたいだと思った。

    「お待たせしました。領収書出しますね」
    「お願いします」
    領収書と一緒に「良ければこれどうぞ」と先程まで机の上にあったポプリが置かれている。
    「お代を」と財布を出そうとすると手で制された。
    「褒めて下さったお礼なので…もし良かったら受け取って下さい」
    笑ってポプリを私の手に乗せる。その笑顔をみると断る言葉が出てこない。
    「分かりました…ありがとうございます、伊地知さん」
    ポプリを受け取り、ポケットに入れると何故か彼が気まずそうな顔をしている。
    「どうかしましたか?」
    「七海さん…私あなたより歳下だと思うので…さん付けは…ちょっと、緊張します…」
    よくよく聞いてみると彼は私より、ひとつ歳下だった。
    であれば「さん」付けは不自然か。
    「ふむ…では、伊地知くんはどうでしょう」
    伊地知くん、と呼ぶと「はい」と彼がにっこりとして返事をする。どうやら「伊地知くん」が良いらしい。
    「では、戻ります。今回もありがとうございました」
    「またお待ちしてます」

    店を出て少し歩き、信号待ちの時にポプリを取り出すと辺りに花の香りが広がった。ポプリを手に乗せてくれたあの笑顔を思い出すと胸が熱い。
    『本当に、可愛い人だ』
    信号が青になったのでポケットに再度ポプリを入れて会社へ戻った。

    会社に戻ると「お前からめちゃくちゃ良い匂いがする」「号外!七海さんからいつにも増して良い匂いがする!」と先輩や女性スタッフの注目の的になったのだった。

    〜伊地知視点〜

    『可愛いですね…』
    その言葉にびっくりして思わず七海さんの方を向いてしまった。
    彼が言っているのはポプリの事だった。なんで、私振り向いてしまったんでしょう。あぁ、恥ずかしい。
    注文された花束を作りながら七海さんとのやり取りを振り返る。
    七海さんが来るのは二度目。二度目なのに、もうお互いの名前を呼ぶようになった。
    「普段のお客様ならそんな事ないんですけどねぇ…」
    その証拠に七海さんの前に来られていた先輩の名前は存じ上げない。まぁ、お花を頼み作る関係なので本来なら存じ上げなくて良いのかもしれませんが。

    『伊地知くん』

    低音の優しい声で自分の名前を呼んでくれた彼を思い出し、顔がにやけそうになるので両手で頬を叩いて自制する。
    「冷静になりなさい、私」
    喝を入れ、花束作りに勤しむが七海さんにポプリを渡した時の事を思い出して顔が熱くなる。
    らしくない事をしてしまったけど、迷惑じゃなかっただろうか。
    「七海さん…迷惑だったらごめんなさい…はぁ〜…なんて恥ずかしい…!」
    自分しかいない店の中、この場に居ない七海さんへ空に向かって謝罪した。
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