いっぱい食べる君が好き今日五個目となるパンの袋を開けてひと口食べる。
四個目まではお昼ご飯として一時間半前に平らげたが、伊地知潔高は先程コンビニでパンを三つ追加で購入した。
昔から消化速度が早いのか食べても食べても満たされず、食べられる時間があれば朝昼夕以外に余分に食べるようにしていた。
「伊地知さん、お待たせー」
虎杖とそれに続いて釘崎、伏黒、が任務地に行くため後部座席に座る。
「おや、予定より早かったですね。授業が早めに終わったんですか」
「そうそう!五条先生がぱぱぱっと終わらせちゃってさ」
「では、すみませんが出発まで少しお待ちください」
「伊地知さんは…今、昼なんですか」
伏黒が袋に入ったパンを見て尋ねる。
「はは、お恥ずかしい。お昼というより間食ですね」
「え、間食なのそれ?パン三つって食べ過ぎじゃない?」
「昔からそうなので、気にした事はないです」
「そういや伊地知さん、会う度に何か食べてるよな」
そうだったかな、と思い返してみると虎杖と会う時たしかに物を食べている時に最近会っているような気がした。
「伊地知さんってもしかして結構食べる?」
「結構と聞かれると度合いが分かりませんが、朝におにぎりを三つ、お昼にパンを四つ食べて今三つ食べていると言ったら結構に入りますか?」
「「めっちゃ食うじゃん!!」」
「その体のどこに…?」
虎杖と釘崎が声を合わせて驚き、伏黒は伊地知の体を凝視する。その間も伊地知は食べる手を止めない。
「ちょっと、伊地知さん。服の上からお腹触っていい?セクハラとかならしないけど」
「構いません」
虎杖が後部座席から腕を伸ばし腰回りとお腹を触る。
「…ほっっっっそい」
「なんで体型変わんないの!?羨ましすぎるんだけど!!」
最後のパンの袋を開けて、もぐもぐと食べてゆく。
「嫌いな物とかあるんですか」
「度を超えた…辛すぎる、甘すぎるとか以外なら多分何でも食べれますね」
「伊地知さん、今度俺達と鍋食べよ!」
「待ちなさいよ!私とスイパラに着いて来てください!」
「スイパラは…すみませんが、五条さんで間に合っています。お待たせしました、行きましょう」
最後のパンを食べ終わり、ゴミをビニール袋に入れ車を発進させた。
『…買いすぎましたね』
七海建人は夕方の任務終わりにパン屋に寄った。その時、空腹を感じていたため普段は四個買うところのパンを七個買った。
だが、帰り道に飲食街を通ったところ様々な食べ物の匂いが鼻腔をくすぐりそれで多少空腹感が抑えられてしまったのでパンをいつもより多く買った事を後悔しているところだった。
『高専に寄って虎杖くん達が居たら分けましょう』と考え、帰宅する前に高専に寄る。
夕方の高専を歩いていると一人、椅子に座って携帯を見ながらコンビニ弁当を食べている伊地知を見つけた。
「伊地知くん、お疲れ様です」
声をかけるとこちらを向き、食べている物を飲み込んでから「七海さん、お疲れ様です」と言葉を発した。
「今、夕飯ですか?」
「そうですね。後ひとつ報告物の作成が終われば帰れるのでその前に腹ごしらえを」
「私も夕飯なので同席しても?」
「どうぞ」
向かいの席に座り、パンをひとつ取り出し食べる。
目の前の伊地知は箸を綺麗に持ち主食、ご飯、副菜を丁寧に三角食べを実践しながら食べていた。
考えてみると伊地知と昼を同席する事は初めてだった。ひとつ下の後輩といえど昼を同席する事なんて無かったし、任務で会う時は食事を済ませている後だからだ。
弁当を食べ終えた伊地知はビニール袋に入れる。あぁ、これで仕事に戻るのかと思った矢先に二個目の弁当を机に置き、それの蓋を開ける。
「伊地知くん…それは二つ目ですか?」
思わず聞いてしまう。痩身の彼のどこに二つの弁当の中身が入るのか。
「いえ…恥ずかしながら三つ目です」
「三つ目」
思わず復唱してしまう。彼はそんなに食べる男のイメージはなかったが、今まで同席した事が無かった為初めて知った。
箸を進める手は急ぐ物ではなく、一品一品丁寧に食べ進めていく。その食べっぷりの良さをパンを食べながらずっと見てしまう。
「君の食べっぷりは気持ちいいですね」
「そうですか?初めて言われました」
もぐもぐと食べ進め、三つ目の弁当を彼は食べ終えた。七海はというとパンを四つまで食べたところで満腹感を覚えた。
「いつもそのくらい食べるんですか?」
「そうですね…今日虎杖くん達と話していて知ったんですが結構食べるみたいです、私」
話してみると夕飯の後も間食を取るようだったので、良ければと思い提案してみる。
「もし良ければ…パンを買いすぎたので貰ってくれませんか?」
すると彼の目が輝いた。
「良いんですか?!」
「良いですが…君、まだ入るんですか?」
「実は…まだ物足りなくて…嬉しいです…!」
パンの袋を渡すときらきらとした目で「三つも良いんですか…美味しそうですね!」とひとつ取り出し、その場で食べ始める。
本当に美味しそうに食べるのでこれから任務で会った時は少し余分に買おうと七海は思った。
後日
「伊地知さん、お昼食べた?!これ、任務先の人からもらったお菓子!」
「伊地知くん、お昼はまだ入りますか?パンを余分に買ってしまいまして」
次々と与えられる食物に困惑しながら、今日も伊地知潔高は美味しそうに食べるのだった。