プロポーズの日① 乱凪砂 リビングで本を読んでいると、近くに来た彼がくっついてくる。日常茶飯事なので「くすぐったいよ」と言いながらも受け入れる。
彼はいつも私が本を読み終わるのを待ってくれる。待っている間、静かに私の髪を触ったり肩に頭を乗せたり、抱きしめたりしてるが、それが楽しいらしい。
待てをされている子犬のようで可愛い。しっぽが見えるなあ。なんてことを考えていると、丁度キリのいいページに来たのでパタンと本を閉じる。
「お待たせ。終わったよ」
「……今日、何の日か知ってる?」
「え、今日? 六月六日って何かあったかな」
思いつかずにいると、彼は口角を上げ、目に見えないはずのしっぽが先程よりも動いていることが分かる。
「君も知らないみたいだね」
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