俺は、父さんが好きだった。
過去の罪に囚われ続ける父さんを、救いたかった。
夢の中で聞こえるのは、父さんを罵倒する自分の声ばかり。だけど、その叫びさえも、救いたかった。
『立、立! 目を覚ますんだ』
『うるせーよ! お前のせいで俺は、こーなったんだろ。俺の前から消えろ! 俺は……歩だッッ!』
『違う。お前は歩じゃ、歩なんかじゃない。お願いだ立、正気に戻るんだ』
『なんで……! なんでわかってくれねーんだよ! 俺は……俺は……』
『立! お前は立なんだ! 俺には……立しか、居ないんだ』
目が覚めると、青ざめた顔で俺を見つめる父さんがいつもそこにいた。
それまでに何があったか、うっすらと記憶に残っていたものは、徐々に消えていく。今の俺はただ、父さんのことだけを考える。
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