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    ミプ 手への劣情

     しまった、と思った時にはもう遅い。
     ここ暫く自分の機嫌が取れない位に忙しかったというのは、もはやここまで来たら何の言い訳にもならないのだろう。
     俺の恋人であるミラージュという男は、どうしても限界ギリギリまで笑う癖がある。
     そのせいで、本来ならばかなり広めに取られている筈の限界許容範囲を、こちらが見誤るのは度々ある出来事だった。

     冷たい壁際に隙間なく追い詰められた身体が、さらに追い討ちのようにかけられる体重によって微かに痺れる。
     壁を押してその場から離れようとしたのを逃がさないとばかりに上から重ねられ、指を一本ずつ絡めとる太い武骨な指先。すっぽりとこちらの手を包む広い掌は熱い。
     そうして、纏っているデニムの固い布地すらも通り越して、尻に当たるミラージュの股間がグリグリと押し当てられるのに意識が割かれる。
     性的な事を想像させてくる露骨なその動きは、後ろの男がわざとやっているのだと伝わってきて、軽く息を詰めた。
     『お前を支配したい』という動物的な欲求をコイツが隠さないでいる時、普段は柔らかな笑顔に隠された"ウィット"という男の野性味が牙を剥く。
     俺とコイツの付き合いはそこそこ長くはなっていたが、こうなった場合の対処法を俺は二つだけ知っていた。どちらを選ぶかは、その時の気分次第だが。

     不意に壁に押し付けていた手の片方を離したミラージュが、そのまま着ているシャツをデニムからスルスルと引き出して、腰骨辺りを服の内側に滑り込ませた手で直接なぞってくる。
     太い指先に似合わず、ホログラム技師やバーテンダーとして生計を立てているこの男の手付きの繊細さは、それこそ骨の髄まで叩き込まれていた。
     肌の表層を撫でる手が上下しては、時々、肋骨の方までイタズラに伸び、浮き出た箇所の形を確かめるように擦っていく。
     はぁ、と僅かに熱い吐息が洩れた。その瞬間、腰を掴んでいた手が素早く移動してデニムごと臀部を鷲掴まれる。
     「っ……ひ、……!」
     そのまま乱雑に掴んでは離しを繰り返すその動きで、尻だけではなく太ももの境や、割れ目までも全体的に揉みこまれていく。
     加えて、デニムの厚い布地によって直接届きはしないというのに、親指で拓かれ慣れた場所を容赦なく押し潰される。
     それだけで、俺の意思とは無関係にミラージュの事を受け入れる為の器官へ、勝手に肉体が移行しようとして熱を帯び始めていた。
     「おい、お前っ……それは……、っんぶ……!?」
     準備も何もしていないのに、と非難の声をあげかけた唇の中に、もう片手を押さえ込んできていた指先がねじ込まれて濁った声が洩れた。
     そんな俺の事など意にも介さず、二本の指が無遠慮に開かれた口の奥をさらに目指そうと動き回っては、舌の上や歯を擽るように触れていく。
     その間にも尻に押し付けられた股間から伝わる熱に、背後の男は本気なのだと察した。
     「んっ……ぐ……ぅ……」
     「噛むなよ? お互いに痛い思いをするのは、……イヤだろ?」
     耳元に寄せられた唇が普段よりも掠れてざらついた声で囁きを落とす。俺に触れたいという欲に満ちているクセに、微かに笑いを含めたその声音で、ついに我慢していた肉欲に火が着いた。
     そうなってしまえば最後、デニムの上から突き上げるように指と腰で触られている場所の奥の奥までもっと触って欲しくなる。
     今日はこっちの方法でコイツの怒りを静めるのが正解なのだろう。
     けして、俺がコイツのこういう時にしてくるいつもより乱暴なセックスも嫌いでは無いからではない。……断じて。
     ミラージュの問いかけに答える代わりに、グチグチと濡れた音を立てて口腔内を暴き立てるようにしながらも細やかに動く少し塩辛い指先に、今度はわざと吸い付いてみせた。
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