おれの街の都市伝説ねぇ、この噂知ってる?
周りの女達が小さく話す。全く、女ってのは噂好きだ。
北高の近くの公園、"出る"らしいよ。
お、ば、け
確か、名前はね…
馬鹿馬鹿しい。大体霊だとか都市伝説だとかは嘘っぱちに決まってる。ルフィやウソップは面白がったり、怖がったりするが、おれは騙されねェ。
北高近くの古い公園はガキの頃からよく遊びに行っていた公園だから、悪く言われんのも、ちょっとムカつくし。
今日もおれは件の公園に行った。
古くて整備もされてない公園だから、そもそも人が来ない。だからあんな噂もたったんだろうな。ただ、人が居なくて静かなところが、おれは好きだった。おれだけの庭みてェで。だが、人が集まらないってことは、不良の溜まり場にもなり得るってことだ。ちょくちょく、行儀の悪い奴らが集まって騒いだりすることがあるらしいんだが、その度に不良達がボコボコにのされている。大概が不良同士のやり合いだが、一部の不良達が酷く怯えきった様子で、"真っ黒の男が"と口を揃えて言うらしい。その男は化け物じみた動きをし、悪さをする奴らを半殺しにするそうだ。そんな出来事からこの公園の悪名は街に轟き、住人の暇潰しの餌になっている。
「お!今日も一人寂しく黄昏てんのか?マリモくんよ」
「…ア?ンだ、またテメェかぐるぐる眉毛」
またこいつだ。おれが一人でいるといつも顔を出す男。名前も知らねェがやたらと絡んでくるし、何かムカつく。
「なに、お前、ここそんなに好きなの?」
二つ並んだブランコの空いている方に腰をかけながら、不思議そうにおれに言った。
「静かで、落ち着くからだ。…テメェが居なけりゃな」
「ンだと?やんのかテメェ…!」
こいつとはいつもこうだ。互いによく知らねェくせに言い合いになる。たまには会話が続くときもあるが、大体はこんな感じだ。
歳は大体同じくらい。身長も。身体はおれよりひょろくって、手脚が長い感じだ。長い前髪が顔の半分を隠していて、出ている眉毛は巻いてる。変なやつだ。
こいつも、きっと噂を信じないタイプの男だろう。いつも、薄暗くなった公園で会うから。
言い合いをしていると、公園に人影が入ってきた。あたりはすっかり暗い。目を凝らして見ると、タッパのある細身の男らしい。黒いコートを着ている。まさかな。
男はゆっくりと近づいてくる。なぜか、手のひらにじんわりと汗が滲んだ。
「お前、ここで何をしている」
「あ?」
男は警察官だった。この辺りで不審な人物の目撃や、騒ぎが良く起こるから、見回りをしているとのことだった。
目の下にくまがあり、警察官の男の方がよっぽど怪しく見えるな、と思ったが言わなかった。
「高校生の男とはいえ、ガキがこんな時間まで出歩くな。危ねぇぞ。補導されてェのか」
「ンな心配される筋合いはねェよ、おまわりさん」
男は眉間のあたりを揉んだ。
「男でもだ、一人でウロウロしていると、よからぬ奴がいるから、だな」
「…何言って」
手のひらが冷たい。
「何って、こっちのセリフだ。何故こんな時間までずっと一人で公園にいる」
ねぇ、公園のおばけの名前知ってる?え、知らないの?遅れてるなぁ。真っ黒な男の人だよ、そう、真っ黒で手脚が長いの。名前はね、黒足の